日笠陽子&戸松遥、怒りの感情はどうやって出すタイプ?『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』
2025.3.11(火)

2007年に放送されたTVアニメ『モノノ怪』シリーズ待望の新作『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』が3月14日(金)に公開される。
公開間近の本作の舞台は、再び大奥。総取締役だった歌山の後任となった名家の出身・大友ボタン(戸松遥)は、規律と均衡を重んじて厳格な采配を振るった結果、天子の寵愛を一身に受ける叩き上げの御中臈・フキ(日笠陽子)との間に亀裂が生じ、両者の溝は深まるばかり...といった内容だ。
そんな本作に出演した日笠と戸松にインタビュー。今、改めて考える作品の魅力を聞いた。
――それぞれの役どころを教えてください
日笠「フキは天子の寵愛を一身に受けている キャラクターです。自分の子どもの命すら武器になるっていう大奥の世界の中で、実際に子を宿したときに、その子を愛する子供と思うのか、武器だと思うのか、そこでずっと揺れているキャラクターだなと思います。それから規律を重んじるボタンとは、いろいろな場面でバチバチで。大奥という環境の中で変化していく姿は、見どころの一つとして注目してほしいなと思っています」
戸松「ボタンはとにかく正義の人。正論と正義を貫く人です。大奥の世界にいる女性たちって、みんなちょっと腹黒さだったり、したたかさだったりを持っているんですね。1人の男を取り合うバトルもあるので。だけど、ボタンの場合は、立場的にはその中の1人なものの、客観的に自分を見ている、大奥全体が良くなるために自分がどう立ち回ればいいのかっていうことを考えているキャラクターかなと思います。発言1つとっても達観しているので」
――注目してほしいポイントは?
戸松「ボタンの正論は、人間っぽいフキと対立するきっかけにもなるんですけど、そのまっすぐさみたいなところが彼女の魅力の1つかなと思っています。強さと折れない心を持っていないとやっていけない世界なので、フキとバトルするときも感情的にはなりすぎないっていうところを意識していて。その2人の対立がまたおもしろかったりするんです」
日笠「そうですね。やっぱりボタンとやり合うシーンは注目です。 」

――演じる上で苦戦したポイントはありますか?
日笠「第一章の際は情報が少なかったということもあり、フキのキャラクター作り、すり合わせに苦戦しました。でも、二章になったら感情がバーっと出てきて、明かされることも多かったのでスッと役に入れました。ただ、逆に戸松は一章の時はさらっと決まったよね?」
戸松「そうだね。第二章になってからキャラクターを結構熱心に作った気がします。昇進してから責任感が生まれたというか「私が引っ張っていかねば」みたいな意識に変わることがあって、本作はまさに"劇場版モノノ怪 第二章"でありながら、大友ボタン第二章でもあるなと。その後で結局裏切られて絶望するというか、自分がやってきたことは何だったんだ、と思ってしまう場面もあるんですけど、そこでも落ち込んでる場合ではないし時間もないから、心を強く持ち続けねばと振り切って凛としている部分は彼女の魅力だなと思いました」

――おふたりのお話を聞いて、人間っぽいフキと、正義の人ボタンという印象を受けました。おふたりはどちらのキャラクターに近いですか?
日笠「私、完全にフキだ」
戸松「私もフキ」
日笠「感情に素直というか、楽しいものは楽しいし、怒るときは怒るみたいな」
戸松「日笠って怒るの?想像できないかも」
日笠「他人にぶつけてもしょうがないなと思ってるから、相手に怒りをぶつけないというか、とりあえず1回寝かせちゃうかも。ただ、1回寝て、まだ怒ってたら"あ、これは本当に怒っているんだな"と思うようにして、感情的にならないように工夫しながら伝えるかな。どちらかというとコンコンと詰めちゃうタイプ。そうやって考えると、怒りに関してはボタンのほうが近いかもしれない」
戸松「私は完全に怒りの出し方もフキだよ(笑)」
日笠「最近怒ったことはある?」
戸松「旦那さんが、悪い意味でも良い意味でも影響されやすい人なんだけど、私が"ちょっと頭痛いかも"って言ったら"俺も頭痛い"ってマネしてきて。本当にしんどかったから"マネすんなー!"って怒っちゃった。あまりにも私が体調悪い時に、向こうも体調悪くなるという状況が続きすぎたから」
日笠「もう、そんなに怒れるってことは、もはや戸松は元気だよね(笑)」、
戸松「そうね。頭が痛くても、それだけ怒れるエネルギーがあるっていうのはね。そういう意味では、今回ボタンを演じていて、"このぐらいの冷静さが欲しいな"って思っちゃいました」

――非常に長きに渡り愛されてきた『モノノ怪』シリーズ。作品に携わって気づいた、その魅力を教えてください
日笠「今回のお話をいただくまで、『モノノ怪』を見たことがありませんでした。ただ、独特な色使いと雰囲気はビジュアルからだけでも伝わってきていたので、もしもハマったら抜け出せなくなりそうなちょっとした畏怖のようなものを感じていましたね。今回、自分が作品の中に入っても、本当にその通りで、その感覚は間違ってなかったなって思いました。それに、恐るべきパワー、引力を持った作品だな、と。主題はありつつも、そこにプラスしていろんな描きたいものがいっぱい周りにくっついている感じも奥深いなと思いましたし、監督の脳内ってどうなってるんだろう、人がこれを描けるんだって思いました」
戸松「私もアニメをやっていた頃から、存在は知っていました。なので、日笠と同じように、お話をいただいた時にまず色使いやビジュアルが浮かんできましたね。実際、関わらせていただくようになってからは、本当に深い世界すぎて、おそらく掘り下げようと思ったら、いくらでも掘り下げられるんだろうなと感心しました。実際、今回第二章まで来て、まだまだ気になるポイントがたくさんある内容になっていますし、色鮮やかな世界観の裏に描かれている人間の心理、心のちょっとダークな部分がすごくリアルで。見た目とのギャップのすごさに改めておもしろさを感じました。1人1人の登場人物にフォーカスしてみても、掘り下げきれないと思いますし、たぶん何回見ても、新しいおもしろさがある作品になっていると思います。ぜひ細部にまで注目して観てほしいです」
取材・文・写真=於ありさ
日笠陽子 衣装:CASANE