芸達者な香取慎吾が犬の「まさお」と共演した感涙の傑作ロードムービー

2025.2.2(日)

2000年～2010年まで放送されたテレビ東京系の長寿番組が「ペット大集合！ポチたま」。その人気コーナー「まさお君が行く!!ポチたまペットの旅」を原案として映画化された「LOVE まさお君が行く！」は、当時SMAPの香取慎吾が主演し、2012年に公開された。

食いしん坊で天然なラブラドールレトリーバーのまさおと、苦悩する若手芸人・松本秀樹が全国を行脚しながら絆を深めていく姿を描いている。監督は「NANA」や「ランウェイ☆ビート」の大谷健太郎が務め、脚本は「東京リベンジャーズ」の高橋泉が手掛けた。

まったく売れない若手芸人の松本秀樹(香取慎吾)は、暇だからという理由でテレビ番組への出演が決まる。その番組はラブラドールレトリーバーの「まさお」を連れて、全国を旅するというもの。芸人として爪痕を残そうと、懸命に笑いを取ろうと必死の松本だったが、自由過ぎる天然キャラのおバカ犬・まさおのせいで、何をやっても空回り。やがてコンビの相方と決別し、同棲していた恋人の須永里美(広末涼子)にも去られてしまう。それでも松本は笑顔を絶やさずにまさお君を連れて全国各地への旅を続ける。当初はクレームばかりだったが、やがて声援に変わって皆からも愛され始める松本＆まさお君。そんな中、まさお君に関する重大な秘密を知った松本君は、一大決心をするのだった...。

本作は実話をもとにしたフィクションで、動物と人の触れ合いを核としたハートフルなロードムービーだ。主演を務めた香取は、公開時に「イヌと人との関係を改めて知ってもらい、もっともっとイヌのことを好きだなと思ってもらえればうれしい。笑えて泣ける作品なので、ほっこり温かい気持ちを感じてほしい」と語っていた。お気に入りのシーンとして、「最後に皆でプールに落ちて、ごちゃごちゃになる場面」を挙げた。「今どきの映画にはない"ベタ"な感じで、見ていて楽しくハッピーになれる」のが理由とか。恋人役を演じた広末も「私もあのシーンは好き。厳冬の中でプールに落ちるので大変でしたが、香取さんは『寒い』なんて一言も言わないのですごかった」と述懐。他の共演者も「めちゃめちゃ寒かった」と口を揃えていたが、香取だけは寒さの記憶がまったくない様子で、大物ぶりを発揮。共演者たちも口をあんぐりとしていた。

本作には里美の兄・真一役で、TKOの木下隆行も共演。「アウェー感満載」(本人談)の現場の空気だったらしいが、妻役の大久保佳代子と芸人同士の絆を深めるなど好演。堂々とした演技で「人生で積み重ねてきた苦労が姿や存在に表れていて、オーラがあった」と、大谷監督も木下の演技を高く評価していた。ほかには、成海璃子、光石研、浅野和之、左時枝、寺島進、小野武彦らが共演。

香取は、1995年のフジテレビ系ドラマ「沙粧妙子-最後の事件-」では狂気を秘めた殺人犯、TBS系ドラマ「未成年」で知的障害を持つ少年・デクを演じてザテレビジョンドラマアカデミー賞・助演男優賞を受賞するなど10代の頃から演技力を評価されていたが、シリアスな役に加えて、2009年公開の映画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」で主人公の両津勘吉を演じるなど、コメディとの相性の良さも証明した。本作では、犬のまさお君相手にドタバタな笑える場面を巧みに演じる一方、泣かせどころも的確な芝居で抑えて、芸達者ぶりを惜しげもなく発揮している。本作においては、犬との共演ということで苦労も多かったはずだが、まさおの奮闘もあって名場面の連続だ。大谷監督は、まさお君との撮影を振り返り、「言葉が通じない俳優さんとの撮影は初めてだったのでヒヤヒヤしながら撮っていたけど、不思議なパワーで、良い芝居、良い表情をたくさん見せてくれた」と、感謝しきりだった。俳優としての実績が十分な香取に負けず劣らず、まさおにも注目してほしい。

文＝渡辺敏樹

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