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杏が迫真の演技で「母性の暴走」を体現!偽りの母親を演じた映画「かくしごと」

2024.12.14(土)

杏が"偽りの母親"を演じたのが、ヒューマンミステリー映画「かくしごと」(2024年)だ。原作はミステリー作家・北國浩二による小説「噓」で、国内外で多くの広告映像を手がけ、映画「生きてるだけで、愛」で長編監督デビューを飾った映像クリエイター・関根光才がメガホンをとった。

杏が迫真の演技で「母性の暴走」を体現
杏が迫真の演技で「母性の暴走」を体現

(C)2024「かくしごと」製作委員会

俳優としてキャリアを積んできた杏が本作で演じているのは、認知症を患った父・孝蔵(奥田瑛二)の面倒を見るために7年ぶりに故郷に帰ってきた絵本作家・千紗子。父との確執があり、故郷で過ごすのは父が施設に入るまでの短期間と考えていたが、そこで思いもよらない事件に遭遇し、記憶喪失の見知らぬ少年(中須翔真)の母になる決意を固める。千紗子が自分の娘だということすらわからなくなっている父親と、自分の名前もわからない記憶喪失の少年。想像もしていなかった激動の日々に突然、放り込まれる女性という難役に挑んだ杏は、「今の自分だったらできるかもしれない」と思い、映画出演を引き受けたという。

親の介護問題や、子供の虐待問題、犯罪など、リアルな社会的テーマも孕んでいる本作。大きな渦の中に巻き込まれていくヒロインになりきった杏は、これまで見たことがない表情と演技を見せた。田舎町の素朴な夏の風景と、何が起きるかわからない緊迫した日常とのコントラストが、観る者をハラハラドキドキさせる。

■少年を守るために嘘を重ねていく千紗子

(C)2024「かくしごと」製作委員会

絶縁状態にあったひとり暮らしの父と再会するも、認知症から「どこかでお会いしましたかね?」と千紗子に尋ね、木彫りに没頭している父の姿を見て、呆然とする千紗子。さらに役所の福祉課に勤務している友人・久江(佐津川愛美)から、「介護認定が出たとしても公共の施設に入るのは簡単なことではない」と聞き、遠い目でため息をつく。

気分転換がしたいと思い千紗子が久江を誘ったある夜、2人は事故に遭遇。少年の身体に虐待の痕跡を見つけた千紗子は、久江が止めるのも聞かず、家でしばらく面倒を見ることにする。名前を聞いても「わからない」と答える少年が事件にあったことを知った千紗子は、身分を偽り、少年の両親の住むアパートを訪ね、虐待を確信。少年の手を握り、記憶喪失の少年に「自分が母だ」と嘘をつく。認知症で目が離せない父親に苛立ちながらも、少年の笑顔を見て母親の顔になっていく千紗子。そんな彼女の"バランスを崩した心理"を没入感たっぷりに演じた杏に惹きつけられる。

■徐々に明らかになる秘密!衝撃のラストが余韻を残す

"かくしごと"をしているのは果たして千紗子だけなのか?そのミステリー要素も本作の醍醐味である。

癒しの存在となるのは、父のかかりつけ医で古くからの付き合いの亀田(酒向芳)だ。父の言動に耐えきれなくなった千紗子は亀田を訪ね、父に抱いていた想いを告白。そこで千紗子のバックグラウンドが明らかになる。
記憶喪失の少年は、まるで父の苦悩を見抜いているかのように作業場で粘土のコネ方を教えてもらうようになり、介護と子育てに明け暮れる千紗子はやがて厳格だった父が見せた顔に涙する。

名優・奥田瑛二はもちろん、時に途方に暮れ、時に怒りを剥き出しにし、嗚咽する杏も迫真の演技。誘拐の罪に問われるかもしれないと知りながら、少年を守りたい一心でその母性が暴走する瞬間の表情は凄まじく、衝撃のラストシーンまでゾクゾクさせられる。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

かくしごと
放送日時:2024年12月14日(土)22:15~、2024年12月23日(月)16:45~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2024年12月17日(火)19:45~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます