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一人二役を演じる前田敦子の演技力に感服!「連続ドラマW-30 ウツボラ」

2024.10.20(日)

■作家と謎めいた女を巡る話「ウツボラ」

昨今配信サイトが製作するそこでしか見られないオリジナルドラマは視聴者にとってチェックが欠かせない作品の一つとなりつつある。今回はWOWOWオリジナル連続ドラマより「ウツボラ」を紹介する。

儚げな雰囲気の前田敦子
儚げな雰囲気の前田敦子

「ウツボラ」は中村明日美子の漫画を原作としたドラマで全8話からなる。物語は藤乃朱(前田敦子)がビルから飛び降りたと連絡を受けた溝呂木舜(北村有起哉)が死体の身元確認に訪れることからはじまる。霊安室には刑事と三木桜(前田敦子)と名乗る藤乃の双子を自称する藤乃に瓜二つの女が来ていた。興味を引かれた溝呂木は三木と交流を持つようになるが、警察から遺体の顔が潰れていたため藤乃の存在そのものが断定出来ないと告げられる。そんな謎めいた藤乃とそっくりの顔の三木にも疑念を募らせる溝呂木であったが、2人の間には大きすぎる秘密が存在した...。

■同じ顔でも他人の2人を演じ切った前田敦子が魅せる世界観

このドラマは登場人物が多くはない。25分8話のドラマで悪戯に風呂敷を広げることがリスキーなのもそうだが、それを抜きにしても少なめといえる。だからこそ各キャラクターに照準があたる場面も多く、個の俳優の力が試されていた。中でも藤乃と三木の2人を演じなければならない前田は相当の技量が求められたはずだ。特に藤乃と三木が2人だけで会話をするシーンは当然自分の芝居をリアルタイムで2つ同時進行することは出来ないため、想像力で補うしかない。藤乃と三木、それぞれの芝居を繋げた会話のシーンが全く違和感なく繋がる前田の演技は感嘆する他ないだろう。

藤乃と三木の場面を除くと、前田は物語の大半の時間を溝呂木と過ごすことになる。藤乃は「妖艶」な文章を書く中村明日美子の作品からそのまま抜け出たような人物だ。前田はその妖艶さ、ミステリアスさを言葉遣いや所作から醸し出す。しかし三木という人物は溝呂木と相対している時は精神的にかなり不安定だ。前田は大人びた雰囲気の対局に位置する精神の脆さを表現する際の慟哭や嘆きにも、三木と同一の藤乃というキャラクターが作品から出てきたことを忘れずに泣いているように感じた。鏡の中の鏡のような役柄を演じ切った前田の芝居は鬼気迫るものがあり、ベットシーンが何度かある役柄であるということも元アイドルの前田が役者として並々ならぬ覚悟で挑んだということだろう。

そんな前田の演技が見られる本作を、一度ご覧になってはいかがだろうか。

文=田中諒

放送情報【スカパー!】

連続ドラマW-30 ウツボラ
放送日時:11月1日(金)15:35~
放送チャンネル:WOWOW 4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります