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実力派女優・堀田真由が繊細な演技で魅せる引っ込み思案な主人公のリアリティー

2024.9.27(金)

2015年に連続ドラマW「テミスの求刑」(WOWOW)でデビュー後、NHK連続テレビ小説「わろてんか」(2017年、NHK総合ほか)や、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019年、日本テレビ系)、映画「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」シリーズ(2019、2021年)、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年、NHK総合ほか)といった数々の話題作に出演するほか、女性ファッション誌「non-no」で専属モデルを務めるなど、多方面にわたって活躍している女優・堀田真由。

堀田といえば、上品で奥ゆかしく控えめな役どころの演技が抜群で、主演だけでなく助演としても引っ張りだこの若手実力派の雄。そんな堀田の演技力が存分に堪能できる作品が、2023年の映画「バカ塗りの娘」だ。

同作品は、高森美由紀(※「高」は正しくは「はしご高」)の同名小説を映画化したもので、青森の伝統工芸・津軽塗を題材に、不器用な女性が津軽塗職人の父との暮らしの中で自身の進む道を見出していく姿を描いたヒューマンドラマ。堀田は主人公の青木美也子を演じる。加えて、宮田俊哉演じる鈴木尚人が抱えるセクシャルマイノリティーの問題にも触れており、伝統工芸の現状というテーマに留まらないところも制作陣のチャレンジ精神が垣間見えて、いろいろなことを考えさせられる良作となっている。

「バカ塗りの娘」に出演する堀田真由
「バカ塗りの娘」に出演する堀田真由

(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

高校卒業後もやりたいことが見つからず、家計を助けるためにスーパーで働いている美也子(堀田)は、何をやっても不器用でうまくいかず、自分に自信が持てなかったが、津軽塗職人である父・清史郎(小林薫)の手伝いだけは夢中になれた。しかし、清史郎は先細りする業界に未来を見いだせず気力を失い、いつしか家族もバラバラになっていた。貧しい暮らしと身勝手な父に愛想を尽かして出て行った母と、家を継がず美容師になった兄。そんな家族の中で、美也子は津軽塗の道に進みたいとなかなか言い出せずにいる...。

美也子は基本的に不器用で鈍臭く、それゆえに自己肯定感も低いため、なかなか自身の意見を言えず、つい周りに流されてしまうという役柄。そんな美也子を、堀田は繊細な演技で演じ切り、彼女の成長を詳らかに描き出している。

(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

何より特筆すべきは、"決して豊かではない感情"の表現の仕方だ。美也子のキャラクター上、セリフが少ないため、表情や視線、動きなどで感情を表現していかないといけないのだが、堀田はオーバーではなく"相手に感情を読み取られないように反応する"という繊細な表現を駆使してリアルな"引っ込み思案"感を表出している。
演技において、"感情を見せないように見せる"というのは、表現のアクセルとブレーキの力加減の難易度が高く、なかなかリアルさを出すのは難しいのだが、堀田の力加減は素晴らしく、観ていて美也子の本音が読み解き辛く、それが作品の中に引き込む誘引力を発生させている。

また、作品内では、津軽塗の作業風景を軸に職人の日常を淡々と描いており、業界の斜陽と共に収入の減少、後継者不足、家族間の不仲など、業界が抱えるさまざまな問題をドキュメンタリーのように見せているのだが、そんな作品の雰囲気に堀田の演技がマッチしており、作品を通して発せられる"伝統工芸衰退の警鐘"を際立たせるのに一役買っている。

堀田の繊細な芝居で表現される美也子のパーソナリティーに注目しながら、津軽塗へのリスペクトを礎に描かれる美也子の成長物語を堪能していただきたい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

バカ塗りの娘
放送日時:2024年10月4日(金)18:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます