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山田裕貴が赤楚衛二、上白石萌歌らと繰り広げる芝居のケミストリーが深い人間ドラマに昇華していくサバイバルストーリー「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」

2024.7.27(土)

「ペンディングトレイン―8時23分、明日  君と」(TBSチャンネル1)
「ペンディングトレイン―8時23分、明日  君と」(TBSチャンネル1)

どのような役でも自由自在に演じ分けられるカメレオン俳優として知られる山田裕貴にとって初のプライム帯連ドラ主演作となったのが2023年に放送された「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBS系)だ。荒廃した未来に突然ワープしてしまった電車の乗客たちがサバイバルを繰り広げる人間ドラマで、先の見えない展開と豪華キャストの競演が注目を集めた。

ある日、都心に向かう電車の1両がかすかな閃光と大きな揺れに襲われる。必死の思いで身を守る乗客たちだが、電車から降りると見たことのない大自然が広がっていた―。自分たちが30年後の未来へ飛ばされたと知った萱島直哉(山田裕貴)、白浜優斗(赤楚衛二)、畑野紗枝(上白石萌歌)は、乗客たちと必死に元のいた世界へ戻るために動き始める。

「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBSチャンネル1)
「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBSチャンネル1)

(C)TBSスパークル/TBS

初めはただ同じ車両に乗り合わせた人たちだったが、時にぶつかりながら一致団結し、次第にチームとなっていく。その中で山田は、口が悪く、お人好しだが厳しいことを言う直哉を演じ、赤楚衛二演じる熱血漢なリーダーである優斗とぶつかっていく。

スタート当初はミステリアスな雰囲気だが、次第に感情豊かになっていく直哉。そんな直哉の変化を山田は見事に体現している。目の動きから仕草ひとつとってもとても繊細。涙するシーンも多いが、同じ涙でもそのときの直哉の感情が手に取るように分かるのはさすがとしか言えない。また回想シーンで若い頃も何度か登場するが、そのときの直哉は表情からたたずまいまで、何もかもが今の直哉と違うことに驚く人も多いだろう。もちろん髪型や服装といった外見の変化もプラスされているが、表情そのものが幼いことに注目をしてもらいたい。

「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBSチャンネル1)
「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBSチャンネル1)

(C)TBSスパークル/TBS

そんな山田の演技を引っ張っているのが豪華共演陣。優斗という対照的なキャラクターを演じた赤楚衛二、サバイバルを経験して強くなっていく紗枝を演じた上白石萌歌ら以外にも、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子といった名バイプレイヤーがそろい、パワフルな群像劇を繰り広げていく。

中でも、直哉と優斗という対照的なキャラクターからは目が離せなくなる。乗客同士が疑心暗鬼になっていた第2話で、「疑わなければ助からない」と言う直哉に対し、優斗は「信じなければ助からない」と完全に反対の考えを主張するなど、ことごとくぶつかり合う。しかしやり直したい過去がある2人は、次第に唯一無二の存在になっていく。特に第3話で、非行に走った弟と向き合うことができなかった自分が許せないと打ち明ける直哉に「そんなに責めるなよ、自分を。やるだけやってきて立派だよ」と優斗が声を掛ける場面は、直哉の心のシャッターが少しずつ開いていく名シーン。その際のどこかぎこちないが吹っ切れたような直哉の表情に注目してもらいたい。直哉はさまざまなことにぶつかる度に喜び傷ついていくが、本作はSF的な要素がありつつも直哉の成長物語になっている。

先が見えない面白さもありつつ、キャラクター造形がしっかりしているので見るものを引き付けてやまない本作。山田裕貴の確かな演技力と豪華共演陣との芝居のケミストリーを楽しんでほしい。

文=玉置晴子

放送情報【スカパー!】

ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と
放送日時: 8月18日(日)10:00~
チャンネル: TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※全10話一挙放送
※放送スケジュールは変更になる場合があります