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大河ドラマ「光る君へ」に出演した佐々木蔵之介が心優しい藩主を演じた映画「超高速!参勤交代 リターンズ」

2024.7.24(水)

NHK大河ドラマ「光る君へ」は紫式部を描いた今年の大河作品。作中、重要な役割を果たす紫式部の夫、藤原宣孝を演ずるのが佐々木蔵之介だ。佐々木の芝居はこれまで積み上げてきた膨大な数の作品を参照するかのように円熟味が増していき、ファンたちの心を掴んで離さない。佐々木の芝居を堪能出来る作品は数多くあるが、今回は主演を務めた作品の一つ「超高速!参勤交代 リターンズ」を紹介する。

藩主を演じる佐々木蔵之介
藩主を演じる佐々木蔵之介

(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

この作品は「超高速!参勤交代」の続編となっているが、前作を観ていなくても物語は理解出来る。佐々木演ずる内藤政醇(ないとうまさあつ)は現在の福島県いわき市に位置する湯長谷藩(ゆながやはん)の藩主。一作目では老中松平信祝の「五日のうちに参勤せよ」という無理難題をやってのけ、一泡吹かせることに成功した。二作目の本作では雪辱を果たすべく信祝は暗躍する。

物語は湯長谷藩の領地で一揆が起きたことからはじまる。信祝はこれを監督不行届きとし、内藤たちを藩から追放してしまう。途方に暮れる内藤たちの元に一揆から逃げてきた家臣が一揆は農民のふりをした武士の集団であると報告をしにくる。実は一揆は信祝が仕組んだ罠だったのだ。怒る内藤たちは領地を奪還しようと奔走するが、その裏には信祝のさらなる計略があり...と江戸時代の背景を取り入れたミステリーのような作品になっている。しかし、ストーリーよりも観客を引き込むのは内藤というキャラクターを体現する佐々木の芝居だ。

■民を想う藩主としての姿と重なる、芝居で引っ張る姿

(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

内藤は村の子供の名前を全員覚えている程、村人との距離が近い。どんな状況でもまず民のことを考えて行動する名君主である。その器の大きさとおおらかな性格に惹かれて家臣たちはついていくわけだが、現代において考えると中々ないことだ。というのも昨今生涯に渡り、人柄に惹かれて同じ人間の下につく社会人はきっと少ない。すると、江戸時代にはみられた生涯をかけ忠義を誓うという行為が観客に響かないこともあるだろう。

しかし、佐々木の芝居は観客に「現代に居たとしても、この人にならついていくな」と思わせる魔力を宿している。平民から老中まで分け隔てなく福島弁で接し屈託のない笑顔を見せたかと思えば、たかが一人の農民のために本気で怒る。その芝居から伝わる「この人は優しい人なのだ」という安心感たるや一朝一夕で出せるものではない。まるで当時の本当の藩主であったかのような存在感は、悪役や刑事役を務めた佐々木とはまるで別物だ。

また、共演の深田恭子も大河ドラマ「平清盛」で平清盛の妻を演じており、佐々木も深田もテーマとなる人物のパートナーとして大河に携わっている。そんな深田は今作でお咲として内藤の側室を演ずる。お先は一作目で口減らしのために売られた旅籠の女であったが、本作では最初から側室として内藤の傍にいる。過去に売られ、いじめられたコンプレックスを抱えながらも、強く有用であるように仕えようとするハリボテの自信を表現する深田を、佐々木が表現する内藤のおおらかさ溢れる人柄で優しく包み込んでおりそこに夫婦の絆を感じる事ができる。大河俳優二人の実力ある芝居は必見だ。

「超高速!参勤交代 リターンズ」は大河ドラマにも繋がるおおらかなかな佐々木の演技が見れる。「光る君へ」で佐々木蔵之介という俳優に興味を持った方は、ぜひ本作を見て新たな佐々木を楽しんでほしい。

文=田中諒

放送情報【スカパー!】

超高速!参勤交代 リターンズ
放送日時:7月31日(水)21:00~
放送チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります