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高橋一生の低音ボイスで没入感が倍増...「ブラック・ジャック」や「岸辺露伴」のクリエイターとのタッグで再現した川端康成原作「雪国」の世界観

2024.7.17(水)

「雪国 -SNOW COUNTRY-」(チャンネル銀河)
「雪国 -SNOW COUNTRY-」(チャンネル銀河)

高橋一生の主演で24年ぶりにドラマ化された手塚治虫の名作漫画「ブラック・ジャック」(6月30日放送)。ドラマオリジナルの設定を加えたことで賛否両論を巻き起こしながらも、高橋が演じた天才外科医ブラック・ジャックは「ピッタリのキャスティング」との声が相次ぎ、世帯平均視聴率も2ケタ台をマークするなど大きな反響を呼んだばかり。

荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」から派生した"岸辺露伴"シリーズ(2020年~)含め、熱狂的なファンを持つ漫画原作のキャラクターを演じ、その"再現性"の高さが毎度評価を集める高橋。2022年には、日本人初のノーベル文学賞を受賞した川端康成の代表作「雪国」を映像化したドラマ「雪国 -SNOW COUNTRY-」に主演。昭和初期の豪雪地帯を舞台に、文筆家と芸者の恋を描く物語で、高橋は親から譲り受けた資産で気ままな生活を送る文筆家・島村を演じた。

高橋一生&奈緒が名作「雪国」の世界観を体現した「雪国 -SNOW COUNTRY-」
高橋一生&奈緒が名作「雪国」の世界観を体現した「雪国 -SNOW COUNTRY-」

あまりにも有名な冒頭の一節「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった」で幕を開ける本作。脚本はNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(2021年)が注目を浴びた藤本有紀が手掛け、「岸辺露伴は動かない」や大河ドラマ「おんな城主 直虎」などでも高橋とタッグを組んできた渡辺一貴が演出を務めている他、「ブラック・ジャック」や「岸辺露伴は動かない」にも参加した柘植伊佐夫が人物デザインを監修したことでも話題となった。

雪国に向かう汽車の中で、島村は病人の男・行男(高良健吾)に寄り添う若い娘・葉子(森田望智)を見かける。宿に着いた島村が半年ぶりに再会した駒子(奈緒)は芸者になっていた。駒子と一晩を過ごした翌日、島村が駒子の部屋を訪れると、そこには葉子と行男もいて、駒子から"行男とは幼なじみである"と告げられる。しかも駒子が芸者に出たのは行男の治療費のためだったというが、では何故、葉子が行男のそばにいるのか?島村の視点から、駒子・行男・葉子の3人を結ぶ糸が次第に明らかになってゆく。

高橋は島村という男を大人の落ち着きと色気をまとうキャラクターに仕上げ、繊細かつ豊かな表現力でドラマの世界へ没入させる。劇中のセリフはもちろん、島村はモノローグも多く、リアリティのある"間(ま)"や彼の大きな魅力である深みのある低音ボイスが本作をより重厚感のある雰囲気に仕立てる。

そして、分厚い雪が町全体を覆う儚く幻想的な映像美の中で、次第に熱情を帯びていくのが島村と駒子の恋模様だ。初めて会った日の回想シーンで、島村は駒子の印象を「不思議なくらい清潔であった」と回顧する。その可憐さを一枚一枚脱ぎ捨てていくように、次第に女の情念と妖艶さを見せていく奈緒の芝居に心揺さぶられる。

駒子と出会い、自身の中にあった諦観のような境地が徐々に変化する島村。その過程を生々しく演じる高橋の圧倒的な存在感が間違いなく本作の軸であり、見終わった後の視聴者に得も言われぬ余韻を残す。さらに、少ないシーン数とセリフでも強い印象を残す名優・高良健吾、健気な葉子を演じる森田望智の"影"もなかなかに味わい深いものがある。

原作の行間に隠された真実を、ミステリー要素も交えながら解きほぐし、どこか異世界のような情景美で描き出す「雪国 -SNOW COUNTRY-」。何より川端康成作品の世界観に独特の奥行きをもたらす、高橋一生の心地良いモノローグに耳を傾けたい。

文=川倉由起子

放送情報【スカパー!】

雪国 -SNOW COUNTRY-
放送日時:2024年8月3日(土)9:30~
チャンネル:チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた
※放送スケジュールは変更になる場合があります