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長澤まさみと錦戸亮が、若者たちが抱える心の問題を体現!心情が滲み出る演技が秀逸なドラマ「ラスト・フレンズ」

2024.7.5(金)

ドクターヘリに乗り込む緊急救命医たちの活躍を描いた「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」や、三浦春馬の連ドラ初主演作「ブラッディ・マンデイ」など、名作ドラマが数多く生まれた2008年。その中にあって、DVや性同一障害といった心の問題を抱える若者たちの姿を描き注目されたのが、ドラマ「ラスト・フレンズ」だ。

長澤まさみと錦戸亮が恋人を演じた「ラスト・フレンズ」
長澤まさみと錦戸亮が恋人を演じた「ラスト・フレンズ」

キャストも豪華で、主人公の藍田美知留を長澤まさみ、その恋人の及川宗佑を錦戸亮が演じる。また上野樹里や瑛太(※現在は永山瑛太)ら、当時若手として活躍中の俳優陣の共演も話題となった。ここでは長澤と錦戸の演技について見ていきたい。

物語当初の美知留と宗佑は、誰が見てもお似合いのカップル。喫茶店で会話するシーンでは、美知留は純で素直、宗佑もとても優しげな印象がある。その日は美知留の誕生日で、プレゼントを渡した後に宗佑が言う。「一緒に、暮らさない?」

共に暮らしている母親が家に男を連れ込んでも、職場でいじめにあっても健気に生きてきた美知留は、その一言をきっかけに、信頼している宗佑との暮らしをスタートさせる。宗佑から鍵を受け取った美知留の充実した笑顔には、幸せが溢れているのがよく分かる。

しかし、すぐにそれは壊れてしまう。ある朝、美知留がリビングに行くと、宗佑が美知留の携帯を見ていた。宗佑は表示された名前を見て「男だろ?」と問いかける。美知留が何を言っても聞かず、ついにはテーブルを蹴飛ばし暴力を振るう。

独占欲と嫉妬をむき出しにした宗佑に対しても、美知留は健気だ。最初は無理に作り笑いをしながら説明するが、宗佑の雰囲気が険悪になるにつれ、その顔色をうかがうようにして必死に誤解を解こうする。さらには殴られた後も、虚ろな目、かすれた声で宗佑に謝る。
実は美知留は幼い頃の家庭環境もあって、「人に愛されている」と感じたことがなかった。故に、自分を愛してくれる宗佑に嫌われたくないという気持ちが、美知留にそうさせてしまうのだろう。物語の序盤から、美知留の心の深い部分を滲ませる長澤の演技はさすがといえる。

その後、美知留は、つい先日再会した元同級生の岸本瑠可(上野樹里)と会い、彼女が暮らすシェアハウスを訪れる。モトクロスの全日本選手権優勝を目指している瑠可、ヘアメイクアーティスト志望の水島タケル(瑛太)、契約制客室乗務員の滝川エリ(水川あさみ)らに歓迎され、美知留はつかの間の平穏を取り戻す。実は瑠可やタケルも人に言えない悩みを抱えていて、彼らとの出会いから本当の物語が始まる。

DVを受けながらも宗佑への想いを断ち切れない美知留は、その後もさまざまな表情を見せる。自分を奴隷のように扱う宗佑を見る時の嫌なものでも見るような眼差し、宗佑の言いなりにはならないと決めた時の芯のある空気、隠れて宗佑に会ったことを瑠可に責められた時のいたたまれない様子など、長澤がその演技力で、揺れ動く美知留の心情を伝えてくれる。

一方の宗佑は、当初の優しい雰囲気は消え、声は低く、常に不穏な空気を漂わせている。異常な言動とDVはエスカレートしていき、冷徹な表情で暴力を振るう時には、異様な空気すら滲み出ている。

しかし宗佑が熱を出した時、看病に来た美知留にすがるように「いかないで」と頼む様子などからは、宗佑の中に報われない何かがあるのが感じ取れる。実は宗佑も、幼い頃の家庭環境が原因で心に問題を抱えている。DVは決して許されるものではないが、その隙間に宗佑の心の奥にあるものを溶け込ませる錦戸の演技も秀逸というほかない。

本作第1話冒頭の、妊娠した美知留が港町で暮らしているシーン、つまり物語本編より未来のこのシーンで、美知留はこう語る。「もしも私に、人の心を知る能力があったら~あの恐ろしい出来事を、あの死を、防ぐことができたんだろうか」。若者たちの想いと苦悩が錯綜する物語は、どんな結末を迎えるのか。長澤まさみ、錦戸亮らの熱演を味わいながら、この名作をじっくり楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

ラスト・フレンズ
放送日時:2024年7月22日(月)12:10~
チャンネル:フジテレビTWO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます