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阿部サダヲと菅野美穂が、リンゴの無農薬栽培に挑戦した夫婦の絆を好演!ノンフィクション書籍を基にした映画「奇跡のリンゴ」

2024.5.31(金)

パワフルかつドラマチックな演技で、観る者に鮮烈な印象を残す阿部サダヲと、10代の頃からどんな役柄にも染まるカメレオン俳優として定評のある菅野美穂。日本エンタメ界に欠かすことのできない実力派の2人が共演を果たした映画が、2013年公開の「奇跡のリンゴ」だ。

2006年にNHK総合テレビ「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介されたことで話題を呼び、その後、出版された石川拓治のノンフィクション書籍を基にした本作。不可能とされていた無農薬栽培に成功したリンゴ農家・木村秋則の足跡を辿る、愛と情熱の物語だ。

「奇跡のリンゴ」より
「奇跡のリンゴ」より

(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

1975年、青森県・弘前。リンゴ農家に婿入りした秋則(阿部)は、年に十数回も散布する農薬の影響で皮膚がかぶれて寝込むこともあった妻・美栄子(菅野)の体を心配していた。妻のため、無農薬によるリンゴ栽培を決意した秋則だったが、それは「神の領域」といわれるほど、絶対不可能とされていた栽培方法だった。数々の失敗を重ね、周囲から孤立し、家族に苦労をかけながらも決して諦めなかった秋則は、命がけの決断をした夜の森の中で、"ある真実"を発見する...。

(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

阿部が演じるのは、不屈の精神で「リンゴの無農薬栽培」という前人未踏の境地へたどり着いた木村秋則。子どもの頃から分解が大好きで、「笑うというのは人間だけが持っている性能」などという、凡人では思いつかない価値観を持っていた秋則を、阿部は瞳の奥に底知れない情熱を宿しながら熱演。セリフがなくとも役柄の心境が手に取るようにわかる豊かな表情で秋則という人物を愛嬌たっぷりに演じ、観る者に主人公への親近感を抱かせることに成功している。

(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

そして、のんびりとした弘前方言で作品のナレーションも務める菅野が演じるのは、秋則と生涯を共にすることとなる、かつての同級生・美栄子。阿部と菅野が初めて顔を合わせるお見合いのシーンでは、トップにボリュームを持たせたクラシカルなヘアスタイルに、桜色のワンピースを身に纏って登場。友人のもっちゃん(池内博之)に突き飛ばされ、障子を突き破るようにお見合いの席に現れた秋則の姿を見て、笑い転げながら「ばかでねぇの」という弘前方言を言い放つ。その際に菅野が見せる笑顔の美しさに心を射抜かれてしまったのは、秋則だけではないはずだ。

その後登場する結婚式の場面では、婚礼衣装に身を包む2人。電力が不安定だった当時では日常茶飯事だった停電が結婚式でも発生したため、秋則はロウソクに火を灯し、美栄子の前に真っ先に持っていくと、美栄子が「これまでも、これから先も、こうしてみんなば照らしてください」と秋則に囁く。その時の菅野の美しい微笑みは、本編で最も印象的な場面として観る者の記憶に刻まれるだろう。

(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

結婚後は共にリンゴ農家として仲睦まじく働く2人だったが、農薬によって美栄子の健康が脅かされていることを知った秋則が、すべてのことを犠牲にして無農薬栽培に取り組むようになってからは、さまざまな困難が彼らを襲う。仲間が去り、収入も途絶え、農地の半分を手放さなければならない窮地に陥るも、「妻のためならば」と、決して信念を曲げない秋則。そんな彼の情熱を阿部は持ち前のパワフルな演技で表現し、菅野は夫を信じ、娘たちを守る美栄子を包容力溢れる佇まいで演じている。

(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

物語の舞台である青森県弘前市でオールロケされ、美しい自然や祭の風景の数々も見どころの本作。愛する人を守るという動機から生まれた夢を諦めない男と、彼を支える家族が努力の末に引き寄せる希望の物語を阿部と菅野の名演に注目しながら見届けてほしい。

文=中村実香

放送情報【スカパー!】

奇跡のリンゴ
放送日時:2024年6月15日(土)8:30~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます