水上恒司が現在の快進撃につながる実力を証明した映画「死刑にいたる病」
2024.1.27(土)
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現在放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」ではヒロインの最愛の人を好演、大ヒットを果たしている映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」では特攻隊員を演じて注目を集めるなど、俳優・水上恒司が快進撃を続けている。ドラマ「中学聖日記」(2018年)で有村架純演じる主人公の相手役・黒岩くんを演じて鮮烈なデビューを果たしてから約5年が過ぎたが、そんな彼が若手実力派として頭角を現した1作として印象に残っているのが、2022年に公開された白石和彌監督作「死刑にいたる病」だ。

(C)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
史上最悪の凶悪事件とその真相を描いた「凶悪」(2013年)で注目を集め、警察とやくざの攻防戦を映し出した「孤狼の血」(2018年)でも数々の賞を獲得した白石監督が、櫛木理宇の同名小説を映画化した本作。当時、岡田健史として出演した水上が演じたのは、鬱屈した毎日を送っていた雅也だ。
ある日雅也のもとに、世間を震撼させた希代の連続殺人事件の犯人・榛村から1通の手紙が届き、ある事件について自分は無実で、犯人が他にいることを証明してほしいと依頼された雅也が、独自に事件を調査していく姿を描く。
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(C)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
雅也は理想とは程遠いランクの大学に通い、父親からは冷たい態度を取られ、何事も自分では決められない母親には、距離を感じている青年だ。水上は、猫背でふらふらと歩き、低い声でボソボソと話すなど、負のオーラを発しながら雅也を演じ、彼の抱えている卑屈さが身体全身からも伝わってくる。普段はさわやかな魅力を持った水上だが、雅也役を演じる彼にキラキラとしたスターのオーラは一切ない。
特に印象的なのが目で、どこに向かって歩いているのかまったく未来が見えない...といったような、暗い瞳をしている。そんな雅也が、榛村からの依頼にどんどんのめり込み、榛村に心を許していく様子を、水上が見事に表現。頑固なまでの一途さで突き進んでいく姿や、怒りを爆発させる様など、ゾクリとするような一面があらわになる場面もあり、水上が熱演した、いわば本作の柱とも言える"雅也の変化"に釘付けになる。
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(C)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
連続殺人事件の犯人・榛村に扮した阿部サダヲの怪演もお見事。優しい微笑みと人当たりのよい雰囲気をたっぷりと漂わせる榛村は、"いい人"に見えるのがとてつもなく恐ろしい。またこちらも目の演技にインパクトがあり、空っぽに見える目がまたコワイ...。人の心を操るテクニックで、被害者だけでなく雅也も虜にしていく榛村の底知れない恐ろしさを、阿部が素晴らしく体現している。
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(C)2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会
観客は雅也の立場になって、榛村の闇に絡め取られ、翻弄されていく。その先に訪れる榛村と雅也の面会室での対峙シーンは、シビれること必至。ラストで明らかになる真相に、震えるはずだ。
文=成田おり枝
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