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沢村一樹の硬軟自在な芝居から生まれるリズムを感じられるドラマ「ブラック・プレジデント」

2023.2.24(金)

4月公開のアニメ映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影」に出演するなど、俳優業だけでなく声の出演やバラエティーのMC、ナレーション、モデル業といったさまざまな分野で活躍する沢村一樹。端正なマスクから繰り出される"ちょいエロ"トークなど、爽快で明るいキャラクターが愛される稀有な俳優だ。そんな一面が見られるのはバラエティーが多いが、彼の一番の魅力ともいえる演技力は映像作品でしか楽しめない。

病床に伏せる沢村一樹
病床に伏せる沢村一樹

(C)カンテレ/MMJ

主演から助演、シリアスからコメディー、時代劇から恋愛物、医療物、ミステリーまで、作品のジャンルを選ばない活躍ぶりからも、彼がどんな作品、立場、役においてもフィットできる柔軟な演技力を有していることが分かるが、特にその素晴らしさが見られる作品が主演作のドラマ「ブラック・プレジデント」(2014年)だ。

同ドラマは、経営学を一から学び直そうと大学に入学したアパレル会社のワンマン社長・三田村(沢村)が新米講師や映画サークルの学生たちと関わりを持っていく中で、さまざまなトラブルや心の葛藤と向き合っていくコメディータッチの社会派ドラマ。

(C)カンテレ/MMJ

沢村演じる三田村は、1代でアパレル企業を上場企業に成長させた社長で、会社の利益を第一に考え、社員を酷使してもそれが当たり前だと思っているワンマン経営者なのだが、側近である秘書や専務、大学のサークル仲間や講師に対しては少年のような態度を見せることもあり、二枚目と三枚目の要素がどちらもあるキャラクター。いい意味でも悪い意味でも周りを振り回していく存在なのだが、沢村は硬軟交えた芝居で演じ、作品の流れにメリハリをもたらしている。

突然「大学に行くから」と言い出したり、悪びれることなく歯に衣着せぬ発言をしたり、秘書にセクハラまがいの態度をとったりする一方で、会議で厳しく部下の尻を叩いたり、ゆとり世代のサークル仲間に説教したり、講師と言い合ったりと、おちゃらけた面とシリアスな面が混合しているのだが、沢村はあくまで三田村という人物像の中で幅広く演じ分けている。別人のようで別人ではない絶秒な振り幅で表現しており、作品をリズミカルにしている。

学食の安さに驚いたり、見た目からサークル勧誘のチラシをもらえなかったりといった場面では視聴者をクスリと笑わせる芝居を見せたかと思えば、学生たちを叱る場面では真っ直ぐに目を見つめて血の通った熱い言葉で語るなど、その硬軟交えた芝居につい引き込まれてしまう。そして、それらが生み出す軽快さが、対極にある"コメディータッチ"と"社会派"を両立させているのだ。

(C)カンテレ/MMJ

ワンマン社長とゆとり世代の学生というミスマッチな設定の中で躍動する沢村の硬軟自在の芝居から生まれる作品のリズムを堪能してみてはいかがだろうか。

文=原田健

放送情報

ブラック・プレジデント
放送日時:2023年3月22日(水)スタート!毎週(水)(木)深夜3:00~他
チャンネル:ホームドラマチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります