西島秀俊の名演が光る！家族失踪事件に突き落とされながらも家族への愛を貫く父親を演じたドラマ「真犯人フラグ」

2023.7.25(火)

人物の心情や過去まで垣間見えるような深みのある演技で、観る者を惹きつけてやまない名優・西島秀俊。最近の作品でも、2022年の主演映画「グッバイ・クルエル・ワールド」で家族との平穏な時間を求める元ヤクザを、2023年放送の主演ドラマ「警視庁アウトサイダー」では人情に厚い元マル暴の刑事と、複雑な事情を抱える人物を見事に演じきっている。

そんな西島が演じるどこまでも人の良い父親が、次々に過酷な状況に追い込まれていくドラマが2021年～2022年に放送された「真犯人フラグ」だ。"ノンストップ考察ミステリー"と銘打たれた本作は、意外な展開が連続するストーリーから犯人を予想するミステリーの楽しみに溢れ、公式サイトでは真犯人を推理する投票なども行われていた。

西島が扮するのは、運送会社・亀田運輸に勤めるごく普通のサラリーマン・相良凌介。性格は温厚かつお人好しで、妻の真帆(宮沢りえ)、高校生の娘・光莉(原菜乃華)、小学生の息子・篤斗(小林優仁)の4人家族。平凡だが幸せな家庭で、凌介は家族のために一軒家の購入も決めていた。

物語の冒頭、家族で一軒家の建築予定地を訪れる時には、絵に描いたようなほのぼの家族ぶりを見せてくれる。まだ更地の予定地ではしゃぐ光莉や篤斗。凌介の手を握り、「おじいちゃんとおばあちゃんになったら、縁側で、2人でのんびりしようね」と言う真帆。そんな家族に包まれた凌介は、「いやー、楽しみしかないね！」と、セリフ通りの幸せそうな微笑みを見せる。

家で食事しながら楽しげに言葉を交わしたり、子供と行く映画の予習のために見たアニメに大ハマリしたり。家族に溶け込む凌介の姿からは、ごくごく自然な温かさと幸せが伝わってくる。しかし、そんな幸せを打ち砕く出来事が起こる。真帆、光莉、篤斗の3人が、ある夜突然行方不明になってしまうのだ。

携帯電話は繋がらず、真帆の実家にも行っていない。翌朝、警察に電話して早口でやり取りする様子は、心に渦巻く不安を必死で抑えているかのようだ。また、警察で捜索を頼む時に懸命に状況を説明する姿からは、心から家族を心配しているのがわかる。

その後、物語は意外な方向へと発展してゆく。凌介が学生時代の友人であり、週刊誌の編集長・河村俊夫（田中哲司）の協力を仰いだことから、事件はSNS等でも話題となり、関係のない人々まで呼び込んでしまう。売れることだけが目的のYouTuberの考察動画により凌介が犯人ではないかと疑われ、職場も特定されたことでクレームが殺到。凌介自身への嫌がらせも多発する。しかし、どんな目にあっても、凌介の言動からは揺るぎない家族への愛が伝わってくる。それはしっかりと"相良凌介"という人物を演じきっている西島の演技力があるからこそといえるだろう。

事件を聞きつけた取材陣に囲まれ、言葉を詰まらせながらも語るシーンでは、家族への思いが伝わってきて思わずホロリとさせられる。また、同じ団地に住む真帆の友人・菱田朋子に真帆の話をしながら"がめ煮"を食べ、涙するシーンでは、家族への愛が胸に溢れているのが手に取るようにわかる。

お人好しで言動が裏目に出ることもあるが、そんな凌介だからこそ協力者も現れる。河村をはじめ、会社の部下の二宮瑞穂（芳根京子）、光莉と付き合っているITベンチャー企業の経営者・橘一星（佐野勇斗）らも、捜索のために動き出すが...そこは"ノンストップ考察ミステリー"。彼らが犯人ではないと言い切れないところに、本作が持つスリルがある。

真帆、光莉、篤斗ら家族の行方は？事件ならば犯人は誰なのか、家族との再会は叶うのか。二転三転するストーリーに揉まれながら、真犯人を突き止める"考察"を、西島の名演と共に楽しめる作品になっている。

文＝堀慎二郎

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