中森明菜のステージ上で光る、圧倒的な存在感と魅力
2023.7.4(火)

「歌姫」と聞き、一番に思い浮かぶアーティストは誰であろうか。安室奈美恵、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ...、挙げられる人物は決して多くはないが、それぞれの"歌姫"が2つとない圧倒的な魅力を有して社会現象を起こしている者ばかりだ。個々に比類なき魅力があるため順位をつけるのはナンセンスな話であるため"一番に思い浮かぶ"となれば世代によるところが大きいのだが、そんな中で40代前半から60代の世代で圧倒的な人気を誇る"歌姫"が中森明菜だ。
中森は、伝説の視聴者参加型オーディション番組「スター誕生!」(1971~1983年、日本テレビ系)をきっかけに芸能界入りし、1982年にアイドルとして「スローモーション」でデビュー。同時期にデビューした小泉今日子、早見優、堀ちえみら「花の82年組」らと共にしのぎを削りながら活躍した。中森は粒ぞろいの「花の82年組」の中でも、クールな美人顔というルックスとどこか陰のある雰囲気、さらに他のアイドルとは一線を画す卓抜した歌唱力と表現力で、圧倒的な支持を得る。そして1984年、井上陽水から楽曲提供を受けた「飾りじゃないのよ涙は」を転機にアイドルからシンガーへと進化し、人気はうなぎのぼりに。"アイドル歌手"のトップランナーである松田聖子と、「聖子派」「明菜派」といったかたちで人気を二分するほどに。その後、映画やドラマに出演し女優としても大きな存在感を見せた。

だが、中森の魅力が十二分に堪能できるのはやはりライブで、現在でもライブの復活を心待ちにしているファンは少なくない。では、彼女のライブでの魅力とはどのようなものなのだろうか。それを味わうには今のところライブ映像で振り返るより他ない。そんな中でお薦めなのが、1995年に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで行われたスペシャルライブ「中森明菜 TRUE LIVE」だ。というのも、同ライブはベスト・アルバム「true album akina 95 best」を引っ提げて行われたもので、誰もが知る代表曲を通して彼女の魅力に触れることができるからだ。
同ライブでは、生バンドを背に「Tokyo Rose」からスタート。1曲目から低音が美しく響くパワフルな歌唱で観客を盛り上げた中森は、2曲目に「飾りじゃないのよ涙は」を歌唱。ウェットに歌い上げつつ、クールなステージングを披露する。
ジャケットを脱ぎ捨てて歌い始めた3曲目の「TATOO」では、バンドの奏でる音楽に身を任せながら情感たっぷりに曲のメッセージを伝える。MCでは、「横浜というとロカビリーかなって思うのは私だけでしょうか。なんかすごくぴったりしっくりくるような気がします。これからもどうぞよろしくお願いいたします」とあいさつ。
その後、銀髪のウィッグにアーティスティックな衣装に着替えて「GAIA ~地球のささやき~」を歌唱した後、さらにマイクロミニに網タイツというセクシーな出で立ちに変身して「愛撫」を熱唱。「ミ・アモーレ[Meu amor e...]」では、中世のヨーロッパ貴族を思わせる衣装で登場し、曲の世界観を存分に表現した。そんな中、「痛い恋をした」では、感極まり歌唱中に一筋の涙を流す場面も。
全18曲を披露する中で、たくさんの衣装チェンジに合わせてさまざまな表情を見せる中森。一見クールでおとなしい彼女が、ステージ上では表現者としてパワフルに全身で感情をさらけ出してくれる姿に、色褪せない輝きを感じることができる。あの日あの時の中森にしか出せない貴重な表現に触れながら、ステージ上で輝く彼女の魅力に溺れてみてはいかがだろうか。
このライブの模様は歌謡ポップスチャンネルにて「3カ月連続!中森明菜ライブ特集」内で7月13日(木)に放送される。7月は1997年の「中森明菜 Felicidad AKINA NAKAMORI LIVE '97」と2006年の「中森明菜 AKINA NAKAMORI LIVE TOUR 2006 The Last Destination」も放送。8月9月と合わせて計7本のライブが編成されるこの機会に是非チェックしてみてほしい。
文=原田健
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