松山ケンイチ、『大名倒産』松平新次郎は「楽しんで演じられた」 主演の神木隆之介とのエピソードも
2023.6.16(金)
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松山ケンイチが出演する映画『大名倒産』が6月23日(金)に公開される。同作は浅田次郎の時代小説を実写映画化した"人生逆転エンターテインメント"。父親から徳川家康の血を引く大名の跡継ぎだと知らされ、越後丹生山藩・第十三代藩主となる青年・松平小四郎(神木隆之介)が借金を返済するために、リサイクルやSDGsなどの節約を駆使して藩を救う姿を描いている。
松山が演じているのは、神木隆之介演じる小四郎の兄・松平新次郎。周囲からはうつけ者と蔑まれているが、庭造りに関しては才能を持ち合わせたキャラクターだ。そんな特徴的な役を松山はどのように演じたのか。今回は松山にインタビューを行い、役への向き合い方から普段から仲が良いという主演の神木との関係性まで語ってもらった。
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――時代劇でありながらも節約をみんなで頑張るという設定が新鮮ですよね。まずは作品のテーマをどのように受け止めていますか?
「節約って1人で取り組むことはできると思うんですけど、ここまで大きなコミュニティになってしまうとすごく難しいなと思いますし、そこで『戦』という表現を使っているのも確かにそうだなと納得しました。結局大きなコミュニティの中で節約するというのは、自分を守るための手段でもあると思うんですよ。やっぱりいろんな人との繋がりを持たなければいけないし、繋がりを作る努力をしなきゃいけない。それは自分が幸せになるための節約ではあるんですけど、最終的には自分と繋がった人も幸せにならなければ、自分が幸せになれないじゃないですか。小四郎がやろうとしてるビジネスは、いろんな人と関係を持ちながら救済もしているというのが、ものすごく理想的なビジネスの体制だなと思いましたね」
――松平新次郎を演じる上でどのようなことを意識されましたか?
「新次郎は今で言うと何かしら特性を持った人なんです。でも、この当時は普通の環境の中で普通の人として暮らしていて、それが特別なものではないという認識があると思うんです。そんな新次郎の無垢さをどうにか表現したいなと思って、近くにいた監督を真っ先に参考にさせていただきました。というのも、前田哲という監督がすごく純粋無垢な人なので、新次郎のピュアでまっすぐな部分を表現するためにはお手本にすべき人物だと感じたんです。監督とは僕が20代前半からのお付き合いなんですけど、その中で感じてきたことをそのまま監督の前でやって出来上がったのが新次郎です。あとは、無垢で居続けることって、子供のときは可愛いとかってなりますけど、大人になるとそれが通用しなくなるというか、受け入れられなくなってしまうようなところがあるじゃないですか。その無垢さをどうしたら上手く表現できるかというところを意識しました」
――具体的に監督のどういうところが無垢だなと感じられたんですか?
「あまり表には出てこないと思うんですけど、色々な監督の作品を見ていると、音楽の使い方が少し変わっていて、そこに監督の無垢な部分が現れていると思っているんです。他にも、どんな映画が好きという話を監督が振られたときに、他の監督さんはその人にしかわからないようなマニアックな作品を上げていく中で、前田監督は『ジョーズ』って答えたらしいんですよ。ジョーズというとみんなが恐怖の対象とする存在じゃないですか。観客の目線を持ち合わせているという意味で無垢だなと感じますね」
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――無垢さを演技に落とし込む際に意識しすぎると不自然になってくるものなのだと思うのですが、それを自然体に演じる上で意識したことはありますか?
「やっぱり目の前に純粋無垢な方がいるというのは1番大きいですよね。あとは、意外と周りを見渡すと無垢な人って意外といるんですよ。僕はたまたまそういう人たちとの出会いが多かったので、自分で作るというよりは自然と作り上げていきました」
――普段から松山さんは他人を参考に役を作り上げていくことが多いのでしょうか?
「それがほとんどですね。だからこそ、いろんな人と出会っていろんな発見をすることが大事なんですよ。自分の中だけで理論を組み立てて作り上げるというのはあまりにも思考が狭いと思うんです。なので、色々な人と出会って自分の世界を広げていくことで知見を広げていくことは意識しています」
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――松山さんはこれまでも様々な映画やドラマに出演されてきて、それこそ前田監督が手掛けた『ロストケア』ではシリアスな世界観にも挑戦しています。シリアスな作品とコメディ作品とでは役作りに対する向き合い方も変わってくるものなのでしょうか?
「そこはあまりないですね。やっぱり台本があって、セットがあって、衣装やメイクがあって、共演者がいて、その場所によって空気って全然違うじゃないですか。僕はただそれに乗っかっているだけなんですよね。というのも、自分からシリアスな空気感やコメディの空気感みたいなものを出すとすごくエネルギーを使って疲れるので嫌なんです(笑)。ということもあって、みなさんが作ってくれた道を僕は歩いているような感じですね」
――主演を務めた神木隆之介さんとは『ノイズ』でも共演されていますよね。神木さんについてはどのような印象を持っていますか?
「誰とでも会話ができる人。コミュニケーション能力が高いし、何よりも一緒にいると安心しますね。神木くんと話していると、年上だとか、年下だとか、女性だとか、男性だとか、そういうことは関係なく、人をまっすぐ見てくれているなと感じます。具体的な話でいうと、僕は神木くんとはよくアニメの話をするんですよ。「なんか面白いアニメあった?」って神木くんに聞くと必ず教えてくれるんです(笑)。主演としての気遣いや緊張、気負いみたいなものは絶対に感じていたと思うんですけど、彼はあんまりそういうものも表に出さないですし、本当にリラックスしている感じがあったので、すごく安心しました」
――神木さんは役作りに関して相談などはありましたか?
「最初に『どんな感じでやってるの?』と聞いたときに、『時代劇っぽくはやってないです』という会話があったくらいですね。僕はそんなに出番が多くなかったので、遊びに来たような感覚で楽しんで演じました」
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――本作には今でいうSDGsやリサイクルといったテーマが内在していますが、お金やモノがないからこそみんなで知恵を出して工夫する先人たちの考え方に関して、松山さんはどう感じられますか?
「本来は製品の寿命みたいなものってほとんどないんですよね。でも、普通は服が破けたら買い替えたりとか、匂いが取れないから捨てたりしますよね。生地としてはまだまだ使えるのにも関わらず。当時って今とは違って何十年も使い続けるというのが当たり前な感覚で、使えなくなっても直して使い続けることも多いんです。僕もこの作品を見ていて、昔には存在していたものが新しい価値観のせいで忘れ去られてしまうことへの危機感を感じましたし、そこは自分の中で取り戻したいなと思っています。そういう意味でも色々と思い出させてくれたり、ハッと気づかせてくれたりした作品になりましたね」
――本作では小四郎が廃れていた塩引き鮭を復活させるというシーンもありましたよね。
「塩引き鮭を復活させるというのはすごいなと思いました。やっぱり今の日本では伝統工芸や伝統美術というのは失われつつあって。それを小四郎は色々な付加価値をつけたり、いろんな仕組みを作って、みんながきちんと働ける場所を作りつつ復活させていく。さらにブランディングもできているわけですからね。今の日本ではそうした技術が海外からの輸入で賄われてたりとかもするじゃないですか。そうやってどんどん日本の伝統が失われてく部分もあるので、日本で元々職人をやっていた人たちをどういう風に復活させるのか、また伝統文化をどうやって成立させていくのかということはこれから考えたいなと思うし、日本の課題なんじゃないかなと思います」
取材・文=川崎龍也
Styling=五十嵐 堂寿
HAIR&MAKE-UP=勇見 勝彦(THYMON Inc.)
パンツ ¥49,500(イーストハーバーサープラス/エスディーアイ)、
モミジ アーティストTシャツ with ささきしの ¥22,000(momiji/オーロラ)
他私物
公開情報
映画『大名倒産』
2023年6月23日(金)公開
監督:前田哲
脚本:丑尾健太郎 稲葉一広
出演:神木隆之介 杉咲花 松山ケンイチ 小日向文世 小手伸也 桜田通 宮﨑あおい 浅野忠信 佐藤浩市
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/daimyo-tosan/
© 2023映画「大名倒産」製作委員会
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