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『ユア・フォルマ』尾崎隆晴監督、作品に散りばめたこだわりの数々 キャスト陣とのやり取りも明かす

2025.3.31(月)

『ユア・フォルマ』
『ユア・フォルマ』

第27回電撃小説大賞大賞を受賞した、電撃文庫の大人気小説『ユア・フォルマ』が4月2日(水)よりテレビ朝日にて放送される。人々の記憶が脳内に埋め込まれた情報端末"ユア・フォルマ"に記録される世界で、天才少女のエチカと相棒であるヒト型ロボットのハロルドのバディが重大犯罪事件の捜査に挑むSFクライムサスペンス。

HOMINISでは監督の尾崎隆晴にインタビューを行い、アニメ化に至るまでの経緯やアニメ化にあたってのこだわり、エチカ役の花澤香菜やハロルド役の小野賢章の印象について語ってもらった。

『ユア・フォルマ』尾崎隆晴監督
『ユア・フォルマ』尾崎隆晴監督

――尾崎監督が『ユア・フォルマ』に携わった経緯を教えてください

「元々、原作は知らなかったんです。でも、以前『少女終末旅行』という作品に参加したときにご一緒した制作スタッフの方からお誘いがあって、『こういう面白い作品があるよ』と教えてもらったのがきっかけです。そのときに初めて原作を手に取って読んでみたのですが、まだ1巻しか出ておらず。ただ、1巻を読んでみて、この内容ならきっと面白いだろうと感じましたし、自分の好きなジャンルでもあったので、『ぜひやらせていただきたい』とお返事しました。そんな経緯で関わることになったんですが、それがもう3年前くらいになりますかね」

――最初に原作をお読みになった時って、どのような印象を持ちましたか?

「最初は『ゴースト・イン・ザ・シェル』や『ブレードランナー』、『マトリックス』みたいな、80年代や90年代のSF作品っぽいイメージかなと思って読み始めたんです。でも実際に読んでいくと、確かにSF要素はあるんですけど、ドラマの部分に関してはむしろ『ウエストワールド』みたいな、ロボットを通じて人間性を描くテレビシリーズの方が近いなと感じました。どちらかというと、人間を扱った部分の割合が多いことに気づいて、そこにすごく興味を惹かれましたね」

――尾崎監督はSFにも以前から興味があったんですよね

「以前から、SF作品ってよくありますよね。ロボットを題材にして、人間とは何かを問いかけるようなテーマだったり、ロボットの視点を通して人の心の中を探るような部分が描かれたりとか。今回、そういったテーマに触れられるんだなと思って、それがちょっと楽しみでもありました」

――原作をアニメに落とし込む過程でどのようなことを意識されたのでしょうか?

「SFの世界観を作る前に、まずこの作品のテーマについて考えて、今回はエチカとハロルドというキャラクターを通して、人と人の信頼や結びつき、心と心の繋がりをどう描写するかに注目することにしました。世界観を構築する前に、人間ドラマの中で何を描きたいのかを明確にすることが重要だと考えていたので、まずはそこからスタートするべきだと。ただ、原作の物量が非常に多かったこともあり、SF的な説明部分は結構削った部分もあります。人間ドラマを主軸に置いたことで、取捨選択しながら、全体のバランスを調整していきました」

『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じたエチカ、小野賢章が演じたハロルド
『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じたエチカ、小野賢章が演じたハロルド

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――公式コメントで尾崎監督が話していた原作2巻から描くみたいなところも、そこに関係してくるんですね

「そうですね。原作の2巻以降の話には一連の繋がりがあって、特にブラックボックスやアミクス、ロボットの中にある未知の領域がテーマとして描かれています。このブラックボックスは、もしかしたら人間的な意思が生まれるかもしれないし、何を考えているのかわからない領域でもある。でも、これはアミクスだけに限ったことではなく、人間の中にもブラックボックスが存在するんじゃないかと思うんです。わからない部分をブラックボックスと定義するのであれば、人間なんてわからないことだらけですよね。だから、このテーマを掘り下げるなら、2巻の内容がちょうどそのブラックボックスの謎や、そこに関わるエチカとハロルドの結びつきとうまくリンクしてくるんです。さらに、<ペテルブルクの悪夢>というとある事件がその結びつきに関係していて、これをうまく繋げれば一つの流れとしてまとめられると考えました。一つのまとめ方としてはこれが自然な方法だと思っていましたし、筆安(一幸)さんにも最初にその提案をいただきました」

――今回アニメ化するにあたっての苦労はどんなものがありましたか?

「人間関係を描くといっても、最低限のSFの世界観やドラマの流れといった要素はしっかり用意しなければなりませんし、説明が必要な部分も多くありました。特に原作の膨大な情報量をどう削っていくかというところで、かなり苦労しましたね。というのも、原作のすべての要素には意味があって文字として描かれているので、それをどう取捨選択するかは本当に難しかったです。SF用語や細かいギミックの部分も、今回はいくつか外させてもらいました。まずは全体の情報量を整理してまとめるという作業が一番大変でしたね。一方で、ビジュアル表現に関しては、私たちは映像作りを仕事にしているので、むしろ楽しくて仕方がありませんでした。そこは苦労というよりも、楽しみながら取り組めた部分です。ただ、やはり原作を縮めるという意味では、楽しむというよりも苦労の方が大きかったかなと感じています」

――オリジナルの要素を加えること以上に、削っていくことのほうが大変なのでしょうか?

「原作者も、一文字一文字に思いを込めて書いているので、それを削るというのはきっと辛いことだと思うんです。だからこそ、その部分は丁寧に扱わなければいけない。なるべくセリフが長くなってしまう部分は、映像ならではの手法で説明するようにしました。文字だけだと伝わりにくい部分も、映像であれば一枚のシーンで表現できることも多いです。そうすることで、無理にセリフを詰め込むことなく、自然に物語を進められるよう工夫しました。映像ならではのアプローチを取り入れながら、原作の大切な部分を損なわないようにバランスを取りつつ進めていきましたね」

――筆安さんとはアニメ化するにあたってどう進めていきましたか?

「僕はSFを扱うのが初めてだったので、シナリオについては経験豊富な方にお願いするのが良いと考えて、まず筆安さんをお呼びしました。その中で、1巻からではなく2巻からまとめていくという方向性が決まり、筆安さんにシンプルな構成案をいただきました。そこからは現場スタッフに落とし込むための準備に入って、各所と協議しながらシナリオを進めていきましたね。もちろん、原作者の菊石(まれほ)さんにも参加していただき、ここは削ってはいけないという部分があれば、いつでも遠慮なくおっしゃってくださいという姿勢で進めました。とはいえ、菊石さんにはアニメはアニメでお任せいただいた部分が多く、比較的自由にやらせていただけました」

『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じるエチカ
『ユア・フォルマ』花澤香菜が演じるエチカ

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――今回、エチカ役の花澤香菜さんについてはどんな印象を持たれましたか?

「元々、原作販促用のPVが存在していて、そのPVでお2人の声を聞いた瞬間から、『この2人はピッタリだな』と感じました。だからこそ、このままアニメ本編でも継続してやってもらうのがベストだと思っていました。実際に本編で演じてもらった際も、思っていた通り納得のいく仕上がりで。特に花澤さんについて言うと、エチカの内面的な性格を見事に表現してくれていて、感情の出し方や抑え方、そのボリューム感や温度感が非常によく伝わってきました。彼女自身が役作りをしっかり研究しているのがわかって、逆に驚かされた部分もありますね。『こんな内気な女の子の役を演じるんだ』と。特にエチカの不器用さを表現するシーンでは、そのぶっきらぼうな態度が逆に可愛らしく見えることがあって。人の不器用さが愛らしく映る瞬間ってあるじゃないですか。花澤さんはそういった部分をとても上手に表現していたと思います」

――アフレコでは、尾崎監督から花澤さんに向けて特にやり取りみたいなものはなかったんですか?

「特に大きなやり取りはなかったですね。ほとんどの部分は、キャストの皆さんが自分の中でしっかり昇華しきっていた感じがしました。プロの方に対して優秀というのも変な話ではあるんですけど、今回のキャスト陣は本当に優秀でした。それくらい皆さん役にハマっていたと思います。ルックスというのも一つの要素ではあるんですが、それ以上にそれぞれのキャラクターとの親和性が高かったと感じました。たとえばエチカも、一見暗そうに見えて実は可愛らしい一面があったり、清楚で真面目な子だったりするんですよね。そういったキャラクターの持つ内面と、キャストの素の姿がすごく近い印象を受けました」

――ハロルド役の小野(賢章)さんについてはいかがでしょうか?

「小野さんについては、多分皆さんもご存知かと思いますが、ファンの方なら特に、普段からあの優しい雰囲気や人当たりの良さがにじみ出ているのを感じているんじゃないでしょうか。それがもう否定のしようがないほど自然で、まさに小野さん=ハロルドと言えるくらいハマっていました。お芝居の面では、ハロルドを普通の人間と同じように演じてもらいましたが、激しい怒りや負の感情の表現だけは少し抑え気味にしてもらいました。それ以外は、小野さんの持つ明るさや優しさがそのまま役にフィットしていたので、特別な調整はほとんど必要ありませんでしたね。それぞれの役にベストな人たちが集まったなと感じています」

『ユア・フォルマ』小野賢章が演じるハロルド
『ユア・フォルマ』小野賢章が演じるハロルド

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――尾崎監督のお気に入りのシーンはありますか?

「実は真面目なテーマからちょっとした細かい部分まで、たくさんあります(笑)。まず、真面目なところで言うと、やはりエチカとハロルドがコードで繋がっている瞬間ですね。あの無言のシーンでも、強い説得力があって印象的です。ティザービジュアルでもその描写が象徴的に使われていますが、人間の関係性って、言葉だけでは表現しきれない信頼や絆のようなものがあるんだなと感じさせられます。2人が向き合う姿には、そういった無言の信頼関係がよく表れていて、これは自分だけじゃなく、多くの人が心惹かれる部分なんじゃないかなと思っています。こうした関係性をシリーズを通じて継続的に描いていくことで、最終的に2人の信頼関係がどこに向かうのかを視聴者の皆さんに見守っていただけたら嬉しいですね。それとは別に、大きなテーマ以外にも小さな楽しみがたくさんあります。たとえば、背景の広告看板や新聞記事の内容など、細かい部分にもこだわりました。1巻の内容を新聞記事の中にさりげなく入れていますし、エチカが不安なときに胸に手を当てるような小さな仕草など、細かい芝居も散りばめました。視聴者の皆さんがこうしたディテールを発見して楽しんでもらえるように工夫しているので、そういった細かい部分もこの作品の魅力の一つになっていると思います」

――すでに原作を読んでいても、楽しめる工夫が凝らされていると

「そうですね、この作品はすべてを知りたくなるような作りになっているんじゃないかな。『ここに何か意味があるのかな?』と思わせるような部分や、伏線なのか謎なのかわからないような要素が随所に散りばめられているので、一度見るだけではなく、何度も繰り返し見ることでより楽しめる作品になっていると思います。リピートして見るたびに新しい発見があるような構成にしているので、『あ、ここはこういう意味だったんだ』とか、『なるほど、こう繋がっていたんだ』といった気づきを、視聴者自身で感じ取ってもらえると嬉しいです」

『ユア・フォルマ』
『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――何度でも楽しみたくなる仕掛けというのは、尾崎監督がこれまで手がけた作品にも通ずるものなのでしょうか?

「意図的に演出の中にそういった要素を取り入れたりしています。さりげなく関係性を絵で表現したり、皮肉をカットに織り交ぜて話数に入れたりと、細かい工夫をしています。昔の芸術家が絵の中に謎を隠すように、自分も作品の中にそういう仕掛けを散りばめたいと思っているんです。極端な話ですが、いつか自分がいなくなっても作品だけが残ったときに、見た人が何か新しい発見をしてくれるような仕込みをしたいんです。でも、それを僕自身が説明しすぎると面白くないので、視聴者の皆さんに自分で発見してもらいたい。こうした意図的な演出は、自分の作風の一部でもあるかもしれませんね」

――今作もきっとファンの方がSNSで盛り上がるだろうなと思います

「そうなってくれたら嬉しいですね。そういう意味では作品というのは、私たちが作った時点で完成するものではなく、視聴者の皆さんが観て、自分なりに想像したり、何かを発見したり、解釈を加えた時に初めて完成するものだと思っています。自分の作品は、どちらかというと体験してもらうことを重視していて、その中で視聴者自身に判断してもらえると嬉しいなと、いつも思っています」

――それで言うと、ここ10年くらいで視聴者自身が解釈を自由に発信できるようになりましたね

「それはそれで、ちょっと面白い話というか、笑い話のような側面もあって。実は、制作上の単純なミスを視聴者に見つけられてしまうこともあるんです(笑)。でも最近は、チェック体制がしっかりしてきたので、そういうミスもだいぶ減ってきました。それでも、たまに意図的ではなく単純に間違えたものが混ざってしまうこともあるんですよ。でも、そういうミスさえも視聴者が勝手に解釈して想像を膨らませてくれるのは、人間のイマジネーションの可能性の大きさでもある。そこも含めて、自分は受け入れたいと思っています。『本当はそういう意図ではなかったけど、あなたがそう感じたならそれがすべてだよ』というくらいの幅の広さが、作品にあってもいいんじゃないかと思うんです」

『ユア・フォルマ』
『ユア・フォルマ』

(C)2025 菊石まれほ/KADOKAWA/ユア・フォルマ製作委員会

――最後にこれから作品をご覧になる方に向けてメッセージをお願いします

「今の時代、SNSやリモートワークの普及によって、人間関係の距離感をどう保つべきかという問題が非常に複雑になっています。選択肢が多い分、どの方法が正しいのか判断するのが難しいですよね。SNSでは距離が近いように感じても、それが本当なのか嘘なのか分からなかったり、実際に会うことが良いのか悪いのかも状況によって異なります。会えないけれどリモートで繋がれるメリットもある一方で、それによるデメリットも存在する。お互いに良い面と悪い面がある中で、それをどう自分の中で判断し、昇華していくかが今の時代に問われていることだと思います。どちらが正しい、どちらが間違っているという単純な話ではなく、それぞれが自分にとっての正しい距離感やコミュニケーションの在り方を見つけていく必要があるんです。だからこそ、この作品を通じて、改めて人との距離感やコミュニケーションの大切さについて、何か一つでも感じ取ってもらえたら嬉しいです」

取材・文=川崎龍也

作品情報

『ユア・フォルマ』
2025年4月2日(水)より、毎週水曜よる11:45~ テレビ朝日系“IMAnimation W”枠にて放送開始 ※一部地域を除く
地上波放送終了後、ABEMAにて先行配信開始
4月7日(月)より、毎週月曜深夜0時15分~各種配信サービスにて順次配信開始