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岡田将生が土曜ドラマ「地震のあとで」で村上春樹作品に2度目の参加「台本を読んでも答えがなく、演じる上で役の内部にある感情がとても大切になりました」

2025.3.28(金)

岡田将生が村上春樹原作のドラマに出演
岡田将生が村上春樹原作のドラマに出演

1995年に発生した阪神淡路大震災の後、村上春樹が著した4つの連作短編を、岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市の4人で各話ドラマ化した土曜ドラマ「地震のあとで」が、4月5日(土)よりNHK総合で放送される。

脚本は映画「ドライブ・マイ・カー」(2021年)の大江崇允、演出はドラマ「その街のこども」(2010年、NHK総合)、「あまちゃん」(2013年、NHK総合)で震災を描いてきた井上剛が担当。舞台の設定を、1995年だけでなく2025年にいたるまでに置き換え、"今"に続く"地震のあと"の30年の時間を紡いだ全4話に仕上がっている。♯1「UFOが釧路に降りる」の主人公を演じるのが、村上春樹の原作は「ドライブ・マイ・カー」以来2度目となる岡田将生だ。「特別な時間だった」と語る本作への挑戦は彼にとってどんなものだったのか、撮影を振り返ってもらった。

岡田将生と橋本愛が夫婦役で再共演
岡田将生と橋本愛が夫婦役で再共演

(C)NHK

――――本作で岡田さんが演じる夫・小村は、阪神淡路大震災のニュースを見続けていた妻・未名(橋本愛)が突然姿を消してしまいます。茫然自失の中、中身の不明な"箱"を後輩から託されて北海道・釧路で女性2人と奇妙な旅をする役どころですね。

「村上春樹さんの原作は2回目で、前回演じさせていただいたときもそうだったのですが、"答え"というものがないんですよね。撮影が終わったにもかかわらず僕もまだ全てを理解できていないというか、いまだに頭の中で難解な思考の旅を続けている感覚があって...。自分の答えが出ないまま皆さんに提示するのがいいのかどうか、そんな迷いもあるのですが、人とは何か、人生とは何なのかというのを見た方にも問いかけるような作品になっていると思いますし、そういう風に見ていただけたらうれしいです」

――――"答え"のない作品に挑むというのは、改めて、ご自身にとってどういう体験でしたか?

「台本を読んでいても答えが見つからないまま日々時間が過ぎていく...。自分にとっても小村にとっても、行き着く先に何があるのか―道筋が掴めないけど前を見据えて立ち続けなければいけないというのは心身共に"くる"ものがありました。分からないまま進む楽しさももちろんありますが、明確に"切り取れた"という感覚がなく、あれは果たして正解だったのか...と悩みながらやっていると心も体もどこか不安定になるというか。信頼するスタッフさんや共演者の方々に助けてもらい、支えていただきながら撮影に臨んだ日々が懐かしいです」

――――村上春樹さんの原作ならではの特別な感覚なのでしょうね。

「はい。役の内部にある感情というのがとても大切になってくるなと、今作を経て、より感じました。試行錯誤の時間が本当に多かったですが、作品というのは一人ではできないものですし、たくさんの方々とひとつのものを作る作業が僕は大好きで。それぞれに違う考えや答えを持っていて、それを提示し合いながら、どのルートが正しいのか...と模索しながら進んでいく時間はやっぱり高揚しますし、村上春樹さんの作品を演じさせてもらうときは特にそれが多くて、振り返ると特別な時間になっている気がします。今回の小村に関しては、いろんな登場人物に"いざなわれる"側なんです。そういう設定に対しても"なんだ、この不思議な感覚は..."という感じで日々演じていたのを思い出します」

土曜ドラマ「地震のあとで」
土曜ドラマ「地震のあとで」

(C)NHK

――――小村と未名という夫婦の関係、小村が釧路へ赴いた先で出会う"奇妙"な女性2人とのやり取りはいかがでしたか?

「小村と未名の関係はちょっと不思議ですよね。震災のニュースを見続けて、自分の今いる場所と離れているけど"フルオープン"で受け止める未名と、どこか俯瞰で"閉じて"いる小村。そんな2人の差や、未名に対して何も言葉をかけない小村...という部分もいろんな解釈ができるのではないかと思います。釧路で出会うシマオさん(唐田えりか)とケイコさん(北香那)は、最初に脚本を読んだときに"この2人はそもそも実在しているのか"と思いました。片方でも会話は成立するから本当は1人なんじゃないか...とか、いろいろ考えると不思議で面白いんですよ」

――――今、ちょっとゾクッとしました(笑)。見返すといろんな点が気になってきますね。

「本当に、いろいろ見え方が変わるのがこの物語の面白さだと思います。あとドラマの1つのテーマが"箱"で、小村が実際に運ぶ箱もそうですし、家や車の中、ラブホテル...など出てくる空間は箱が多くて。そこから解放されたときに彼らが見えたものというのが非常に興味深いというか。それが果たして何なのかも、見る人によって変わってくると思います」

――――最後に、岡田さん出演の#1は1995年の設定。携帯電話もまだほとんどの人が持っていない頃で、"時代"を感じるアイテムや景色も懐かしく感じました。

「そうですね。釧路空港での待ち合わせの仕方とか"だからか~"となってもらえると思いますし、それで言うと、僕は満員電車のシーンが印象的でした。みなさん着ているスーツが当時の形だったり、車内で読んでいるものとか細かいところまですごくこだわっていて。そもそも駅のホームが今と全然違いますね。あとその電車も"箱"なんですよ。やっぱりそこから抜け出せない小村...というのが面白いなと思いながら撮影していました」

撮影=大川晋児 取材・文=川倉由起子 ヘアメーク=小林麗子

放送情報

土曜ドラマ「地震のあとで」#1「UFOが釧路に降りる」
放送日時: 4月5日(土)22:00~
チャンネル: NHK総合
※全4話。4月26日(土)まで毎週(土)22:00に放送予定