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成田凌主演の悲しくも心震わせるヒューマンサスペンス「降り積もれ孤独な死よ」

2025.3.26(水)

「降り積もれ孤独な死よ」(ファミリー劇場)
「降り積もれ孤独な死よ」(ファミリー劇場)

■降り積もる謎とDVなどの社会問題が絡み合うヒューマンサスペンス

原作・井龍一、漫画・伊藤翔太による同名漫画を元に、2024年に放送された成田凌主演のドラマ「降り積もれ孤独な死よ」。物語は7年前に起きた13人の子どもの白骨死体が見つかった"灰川邸事件"と2024年現在に起きた少女の失踪事件に、共通する項目があったことから始まる。少女の行方を追う記者の森燈子(山下美月)がそれに気付いたことから、元刑事の冴木仁(成田凌)に調査協力を要請。これをきっかけに過去と現在が混在しながら、事件の驚くべき真相が明らかになっていく。

7年前と現在の事件、社会問題が絡み合う成田凌主演のサスペンス「降り積もれ孤独な死よ」
7年前と現在の事件、社会問題が絡み合う成田凌主演のサスペンス「降り積もれ孤独な死よ」

⒞井龍一・伊藤翔太/講談社 ⒞ytv

捜査のキーマンとなるのは、"灰川邸事件"発覚時に屋敷の持ち主である灰川十三の娘だと名乗り出た上に、「父は犯人ではない」と証言した蓮水花音(吉川愛)だった。蓮水は正確には灰川の実の娘ではないが、母親に育児放棄されているところを助けられ、長年、屋敷で暮らしていた。しかもそこには蓮水と同じように家庭内暴力や性被害などから保護された子たちが、最多時には19人も身を寄せていたという。その後、捜査の結果、白骨化した13人はその子どもたちだったことが判明するが、生き残った子どもたちは蓮水同様に"灰川十三は犯人ではない"と証言する。

■つまびらかにされていく、成田凌演じる冴木仁の心の傷

蓮水の証言に警察は衝撃を受けるが、最も動揺したのは冴木だった。なんとその19人の中に腹違いの弟・瀧本蒼佑(萩原利久)がいたのだ。肉親がいたことから冴木は捜査から外されてしまうが、人一倍正義感の強い彼は事件の真相を追う蓮水と共に単独捜査に出る。その後、事件は指名手配されていた灰川十三が罪を認めた上に留置所で自死したことで捜査に幕が引かれてしまうが、警部補の五味明日香(黒木メイサ)らは誰かを庇っているのではないかと推察。そのため、蓮水にも依頼された冴木は独自に捜査を続けることを決意するのだが、それと同時に冴木の過去も見えてくる。

⒞井龍一・伊藤翔太/講談社 ⒞ytv

7年前の冴木は常に冷静で穏やかな刑事の顔をしているが、彼の過去がつまびらかにされていくと見え方が変わってくる。冴木の目はどんな時もどんよりとしているが、理由は凄惨な事件を前にしているからだけではなかった。実は冴木にも弟同様の"傷"があり、それを冴木役の成田凌の瞳が示していたのだ。冴木の表情の変化は、とても微細だ。ちょっとした変化に大きな意味があるので、細かい動きも見逃さないように注意したい。

■冴木の行動を促す、吉川愛演じる蓮水花音の魅惑

その冴木にさまざまな影響を与えていくのが、吉川愛演じる蓮水花音だ。冴木と共に謎を追っているが、時には全てを知っていて冴木にヒントを与えているようにも見え、彼女の言葉を額面通りに受け取ってもいいのか、疑わしくも感じる。最後の最後まで敵なのか味方なのかが曖昧で、そこが蓮水の大きな魅力と言えるだろう。吉川はこの難易度の高いキャラクターを最後まで見事に演じ切っており、そこも大きな見どころだ。

物語では虐待や弱者救済などの社会問題が描かれており、そういった物語の根底に流れるテーマについて、じっくりと考えさせられる良い機会になりそうだ。また、原作が未完結だったことから、原作者の井龍一から「思う存分にオリジナルの展開にしてください」とリクエストされたこともあり、ドラマならではの結末に。原作者に「このネタ、原作でも使えないかなぁ」とまで思わせたギミックもあるそうで、原作ファンも必見の展開となっており、原作とドラマの違いを見つけるのも面白そうだ。

成田、吉川らキャスト陣の深みある演技と、制作陣の工夫を感じつつ、見てほしい。

文=及川静

放送情報【スカパー!】

降り積もれ孤独な死よ
放送日時:2025年3月30日(日)11:30~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます