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乃木坂46・久保史緒里がメンバーとのコミュニケーションで大切にしていること「日頃から観察するのが好きなんです」

2025.2.6(木)

映画『誰よりもつよく抱きしめて』に出演する久保史緒里
映画『誰よりもつよく抱きしめて』に出演する久保史緒里

三山凌輝と久保史緒里(乃木坂46)のW主演を務める映画『誰よりもつよく抱きしめて』が2025年2月7日(金)に公開される。

『ミッドナイトスワン』『サイレントラブ』などの内田英治が監督を務めた同作は、強迫性障害によって、愛する人を抱きしめることができずに苦しみながらも、お互いの愛を確かめ合うラブストーリー。久保が演じるのは、恋人の良城に触れてもらえずに、繊細に揺れ動く自分の気持ちに悩む書店員の女性・桐本月菜。触れたくても触れられない恋人との関係性に久保はどうアプローチしたのか。作品を通して感じたことや主演の三山との関係、他者とのコミュニケーションで意識していることなどを聞いた。

映画『誰よりもつよく抱きしめて』を通して感じたことを語る乃木坂46・久保史緒里

――最初に台本をご覧になっていかがですか?

「強迫性障害というテーマを中心にしながらも、愛情を描いている点が、実はありそうでなかった作品だなと感じました。初めて読ませていただいた時には、登場人物である月菜の目線で読んだので、ただただ苦しいという印象が残りました。最初は、どうしても自分事として月菜の感情に共感しながら読んでいたのですが、誰の視点で読んでも苦しさが伝わってくるんです。人間のあまり表に出さないような感情のぶつかり合いが、この作品では非常に丁寧に描かれているなと感じました」

――本作には絵本もたくさん登場しますが、久保さんは元々絵本がお好きだったそうですね

「そうなんです。小さい頃に両親が絵本をたくさん買ってくれて、私自身も絵本が大好きでしたね。特に、せなけいこさんの作品が大好きで、いつも読んでいました。あとは『ともだちや』シリーズという本も全巻家に揃っていたので、何度も繰り返し読んでいました。絵本は昔からとても縁が深い存在だったので、今回月菜が働いている児童書専門店の『夢の扉』での撮影が楽しみでした」

――新たに気になった本はありましたか?

「今回お世話になったお店が仕掛け絵本を取り扱っているお店で、大人にも響くような素敵な絵本がたくさんあったんです。その中でも特に印象に残ったのが、1本の木が年月を経て風化していく姿を描いた仕掛け絵本でした。とても素敵で、その場にいたみんなからも人気があって、いろんな方が購入していました(笑)」

――良城の『空を知らないモジャ』という作品も登場します

「『空を知らないモジャ』はこの作品の中で重要なキーとなる存在でもありますし、良くんの繊細さを象徴している1冊でもあるんです。その絵本を通じて、月菜が良くんのことを『素敵だな』と感じる、その感性がとても理解できるというか、月菜の視点から見る良くんの人間像がより鮮明に伝わってきました。この絵本が、良くんの魅力や人間性を映し出す、とても素敵な役割を果たしていると感じましたね」

――今回、久保さんが演じられた月菜は、強迫性障害を抱えている良城との距離感で悩むシーンも多く描かれています。演じる上で意識されたことはありますか?

「良くん本人が一番気にしていることだからこそ、気を遣っている素振りを見せてはいけないというか、月菜もそういう部分をすごく気をつけていたんだろうなと思いました。だからこそ、1人の時と良くんと一緒にいる時の月菜では、全く違う表情や雰囲気を持たせたいという思いがあって。それを表現するのは簡単ではありませんでしたが、『触れられない』というテーマ自体がとても苦しいものだったので、そういった感情を意識しながら演じました」

――月菜自身に共感する部分はありましたか?

「私自身もあまり人に自分の気持ちを伝えられないタイプの人間なので、共感できる部分が多かったです。ただ、その中でも特に印象に残っているのが、月菜が1人で海を眺めるシーンです。演じている私自身にとっても、すごく大切なシーンで、月菜という人物を表現する上で非常に重要だったなと思っていて。私自身、考えることが好きで、それが苦ではないタイプなんですが、もしかすると月菜も同じような人間なのかな、と感じました。彼女は触れてもらえないという大きな壁を抱えながらも、良くんと一緒にいることを選んでいる。それはもちろん愛情が大きな理由だと思いますが、それだけではなく、彼の人柄が好きだからこそ、たくさん考えた上でその選択をしているんだと思います。そういった"考えるのが好き"という点が、月菜を演じる中で私自身が似ているなと感じた部分でもありました」

――良城との関係で言うと、触れたくても触れられないというある種の壁みたいなところがあると思うんですけど、久保さんは壁に当たった時にどのように対処しますか?

「私は諦めが悪い性格なので、基本的に諦めない...かな(笑)。本当に諦めが悪くて、効率が悪いなと思うこともあるんですけど、何かに直面したら、こじ開けるまで地道に壁を壊していくタイプです」

――立ち止まった時に他人に相談はされるんですか?

「あまり相談をするタイプではないですね。家族にも心配をかけたくないので、あまり悩みを打ち明けたりはしません。その代わりに、自分でひたすら問題に向き合い続けるかなり時間のかかるアナログな方法を取っているのかなと思います」

――三山さんとは初共演となります。資料で三山さんは久保さんのことを「まさに何にも染まっていない、白いレースカーテンのような人」と表現されていました

「私にはもったいないお言葉をいただいて嬉しい限りですね」

――ご自身で三山さんの言葉で思い当たることはありますか?

「どうなんですかね...。でも、良くんと対面するシーンは、この作品の中で特に重要で、かなり印象的な対峙の場面が多かったと思います。シーンごとに接し方がどんどん変わっていくので、その移り変わりをどう表現するかが大切でした。その部分を三山さんと一緒に作り上げていったのですが、彼がすごく真摯に向き合ってくださったので、月菜が発信する感情や変化に対して、しっかりと応えていただけたと感じています。月菜が発信することによって場面が動くことが多かったので、それを丁寧に受け取って返してくださる三山さんの姿勢に、私自身もとても救われました。そういう意味で、自分が発信したものがきちんと受け止められているんだなと感じることができて、とても嬉しかったです」

――そんな三山さんの印象はいかがでしたか?

「三山さんはまるっといろんなものを包み込むような寛容な方だなと感じました。この関係性についてもそうですし、月菜のことも優しく包み込んでくださる存在でしたね。三山さん自身、とてもお忙しい中での撮影だったと思いますが、その忙しさを隠すわけでもなく、ありのままの姿で現場にいてくださる方で、その自然体な姿勢が、周囲のみんなに支えたいと思わせるような魅力を持っていて、現場でも本当に愛される存在だったと思います。お芝居の面でも、引っ張っていただくことが多くて、本当に頼りになる方だと感じました」

――今回の現場では久保さんはチームを引っ張っていくことも多かったのではないでしょうか?

「自分が引っ張れていたかどうかは正直自信がないんですけど、三山さんとは本当にマインドとして常に『一緒に頑張ろうね』っていう言葉をお互いによく口にしていました。お互いを励まし合いながら進んでいく感覚がすごく強かったです。例えば、別の現場があったり、次の予定がレコーディングだったりすると、『この後こんな仕事があるんだよね』と共有し合って、『じゃあお互い頑張ろうね。また明日ね』と言葉を交わしたりして。そういう日々の積み重ねの中で、まさに支え合いながら進んでいた感じがしています」

――現場では共演者の皆さんと演技についてコミュニケーションを交わすことはありましたか?

「役柄について直接深く話し合うことはあまりありませんでしたが、チャンソンさんは撮影の合間にふとした瞬間に"悲しい"とか"寂しい"といった感情をぽつりと口にされることがあって。私もその感情を大事にしながらお芝居をしていました。チャンソンさんがそうした感情を共有してくださることで、私自身もお芝居がとても楽しく感じられましたし、監督が間に入って『今はこういう気持ちだよね』と感情を引き出してくださったおかげで、現場全体がスムーズに進んでいったように思います」

――内田監督とは今作で三度目となりますが、過去の2作とは世界観の異なる作品ですよね

「そうですね。3作目とはいえ、今作はとても繊細な内容で、これまでとは本当にガラッと変わった作品でした。なので、良い意味で初めましての気持ちが強くありましたね。信頼していただけるという安心感よりも、新しい一面をお見せしなければならないというプレッシャーが大きくて、とても緊張しました。でもまさか内田監督のもとでこうやって主演という形でやらせていただける日が来るとは思ってなかったので、そういう意味では本当に嬉しい再会でしたね」

――内田監督ならではの演出みたいなものはあるのでしょうか?

「割と率直に言葉にしてくださる方ですね。スクリーンでは嘘がすぐにバレてしまうということを、初めてご一緒した時からおっしゃっていて、途中で監督が『違うな』と思った時には、それをしっかりとストレートに伝えてくださいます。そういう時はシャキッとするというか、緊張感を持って取り組むことができますね。ただ、これまで2作でご一緒させていただいたからこそだと思うんですけど、今回の本読みの段階では、監督が思い描く月菜像と、自分の中の月菜像をすり合わせる作業を、いつも以上に丁寧にやらせていただきました。読み合わせの時に、監督が『大きな転機となるシーンは現場で見たい』という意向を伝えてくださったので、あえてそのシーンをリハーサルではやらなかったんです。こちら側のことを深く考えながら進めてくださる監督で、本当に尊敬していますし、大好きな方ですね」

――本作は改めて他人とのコミュニケーションについて考えられました。久保さんは乃木坂46として大人数のグループで活動されていますが、メンバーとのコミュニケーションで意識されていることはありますか?

「私は本当に考えることが好きなので、メンバー、とくに後輩に対しての接し方を、その子によって変えていますね。『この子にはこういう話しかけ方がいいな』とか、『この子は自分から来てくれるのを嬉しく思うタイプだな』とか、逆に『この子は話さずにそっと隣にいるほうが安心するタイプだな』とか。そういったことを日頃から観察するのが好きなんです。後輩たちの動きや様子を見て、こういう風に接したほうがいいんだなと気づくこともたくさんあって。ライブのリハーサルの期間なんかでも、一緒に練習したい子と、逆に1人で集中したい子がいるので、そういう違いもよく見ています」

――乃木坂46の活動に限らずですが、久保さんはいつも俯瞰して物事を見ているように思います

「本当ですか。でも、乃木坂46のメンバーは本当に奥ゆかしくて謙虚な子が多いんです。写真を撮りますってなると、みんな後ろに行こうとするんですよ(笑)。昔の私も、そういう時は後ろに行く側だったんですけど、最近は『誰かが前に出なきゃ』と思うようになりました。今は一番上の代ということもあって、前に出る役目を自然と担うようになったんです。逆に、バラエティ番組なんかでこの後輩はバラエティが得意そうだなと感じたら、自分は一歩引いてその子を前に出すようにしたり。そういう前に出るか引くかのバランスを、仕事するメンバーによって柔軟に変えています」

――今後、6期生も加入してまた久保さんの立ち位置も変わっていきそうですね

「そうですね。新しい子が入っても、コミュニケーションを取ることは続けていきたいと思っています。多分、すごく若い子たちが入ってくると思うんですけど、乃木坂46って本当に学校みたいな場所なんですよ。私自身、今の人間性は間違いなく乃木坂46で学んだと思っています。だから、6期生の子たちにも『この先輩みたいになりたい』と思ってもらえるような存在でありたいなって思っています」

取材・文=川崎龍也
撮影=MISUMI

映画情報

映画『誰よりもつよく抱きしめて』
2025年2月7日(金)全国公開