平野綾が語る『ベルサイユのばら』への愛と見どころ マリー・アントワネットを演じる上でのこだわりも
2025.1.31(金)
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1972年より『週刊マーガレット』(集英社)にて連載された池田理代子の代表作『ベルサイユのばら』の完全新作劇場アニメが1月31日に公開される。
同作は革命期のフランスで懸命に生きる人々の愛と人生を鮮やかに描き、その少女たちの生き様は共感を呼び、宝塚歌劇団による舞台化やテレビアニメ化もされるなど、社会現象となった。50年以上の時を経て劇場アニメ化された『ベルサイユのばら』は現代にどう響くのか。
本作でマリー・アントワネット(以下、アントワネット)を演じているのが平野綾。原作のファンだという平野が改めて感じた『ベルサイユのばら』の魅力やアントワネットの役作り、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(以下、オスカル)役の沢城みゆきとのエピソードまで語ってもらった。
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<本文>
――平野さんはもともと『ベルサイユのばら』のファンだったそうですね
「私の母親が漫画好きで、子どもの頃から母が読んでいた少女漫画を私も読んで育ちました。初めて原作を読んだのは小学生の頃で、子どもの頃は体が弱く、強い女性にすごく憧れていたんです。当時の私は自分のことを男の子だと思っていて。そんな中でオスカルの姿に惹かれて、私もオスカルみたいになりたいと思いながら読み始めたのが、この作品にハマったきっかけでした」
――原作も読まれていたんですね
「はい。その後にテレビアニメがあると知って、アニメも見るようになりました。ただ、当時は今のようにネットで簡単に見られるわけではなかったので、再放送を必死に探したり、ビデオショップで借りて見ていました」
――そんな『ベルサイユのばら』が50年以上の時を経て劇場アニメ化されます。最初に話を聞いた時はどう感じましたか?
「オーディションのお話をいただき、『この時代に"ベルサイユのばら"を新しく作るんだ!』と驚きました。もともと原作が大好きで、2022年に六本木ヒルズで『ベルサイユのばら展』が開催された時にも、いちファンとして足を運んだんです。原作の展示や宝塚歌劇団の歴代のポスターや衣装展示があったのですが、最後に劇場アニメのビジュアルが1枚だけ公開されていて。胸が熱くなりました」
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――今回演じられているアントワネットについては?
「年を重ねるにつれて、アントワネットの魅力にだんだん気づくようになりました。子どもの頃は断然オスカル派だったのですが、今ではすっかりアントワネットが大好きになりましたね」
――新たな魅力に気づいたんですね。最初はどんな印象だったのでしょうか?
「『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』という言葉の印象がすごく強くて、アントワネットといえば浪費家で悪女というイメージがあり、あまりいい印象を持っていなかったんです。でも、大人になってから、あの言葉は実はアントワネットが言ったものではないと知りました。情報は新聞や噂話など限られた手段でしか広がらなかった時代。それでも、たった1つのフレーズが何世紀も悪評として残り続けているのが不思議で、逆に『この人は本当はどんな人だったんだろう?』と気になり始めました」
――知れば知るほど気になっていったと
「そうですね。2019年にプライベートでベルサイユ宮殿を訪れた時、その華やかさに感動しつつも、特に印象に残ったのが、アントワネットが庶民の生活を知るため、そして子どもたちの教育のために作った小さな村でした。その村では農作業をしたり、家畜を育てたり、彼女が庶民を理解しようという感覚があったんだなと思って、これまでの印象がガラリと変わりました」
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――本作ではオスカルの対比として、アントワネットの生涯が描かれていますよね
「今回、特にポイントとなっているのが、オスカルとアントワネットの対比だと思います。二人がより身近に感じられるようになっていて、同じ女性としての悩みを抱えながら、それぞれの信念を貫くがゆえに袂を分かつ姿が、非常に分かりやすく描かれていると感じました。お互いがそれぞれの道を歩む流れが、より感情移入しやすくなっているのかなと。『ベルサイユのばら』のアントワネットがいかに責任感のある女性で、母親としても素晴らしい人だったのかということを、改めて強く感じることができました」
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――アントワネットを演じるにあたって、どのようなことを意識されましたか?
「原作の膨大な内容を映画1本にまとめるというのは、とても大変な作業だったと思います。やはり、泣く泣く削られた大きなエピソードもたくさんあって、それらが凝縮された形でこの映画の尺に収まっているんです。なので、シーンからシーンだけでなく、セリフとセリフの間でも何年か経過していたりして。私は沢城さんと二人で収録させていただいたのですが、年表やエピソードを確認しながら、一つ一つのシーンを作っていきました。シーンからシーンへ移る時に、声の印象がだいぶ違っているかもしれませんが、その間の空白の何年間に、歴史を揺るがすような大事件が起こったり、彼女の成長を促す大きな出来事がたくさんあったのだと感じていただけるように、説得力のある芝居になるよう心がけました」
――前半と後半で平野さんの声色もガラッと変化していますよね
「技術的な面で言うと、最初の頃は、まだ子どもで体が成熟していないので、肺活量なども子どもらしい範囲でお芝居をすることを意識しました。息が上がる時や何かに気づいて『ハッ』とする瞬間などは、子どもらしい息の吸い方や呼吸を心がけました。一方で、物語の後半になると、年齢も体も成長して、責任感を持ちながら地に足をつけて生きる女性へと変わっていく姿を表現する必要があって。声の出し方も、足の裏から木の根っこが生えていくような感覚で、どっしりとした存在感を持たせたいと考えていました。そうした成長の過程に合わせて、声のトーンや息遣い、感情の伝え方などを大きく変化させながら演じました」
――でも、どこか大人のアントワネットにも少女のような雰囲気があるように感じました
「そこが非常に絶妙で難しい部分でもありました。アントワネットにはどこか少女性を残したまま大人になっている一面があると思っていて。なので、全体的に重くしすぎるのではなく、ポイントごとに『昔のアントワネットだ』と感じられる部分を意識しました。彼女の成長過程を感じてもらえたら嬉しいです」
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――今回は沢城さんともアフレコ現場で一緒というお話もありましたが、沢城さんとのシーンで印象に残っている演技はありますか?
「『同じ女性であるあなたにも、分かってはもらえないのですね』とアントワネットが思いを伝える場面での芝居です。あの場面でオスカルは、自分の存在意義を問われる程の大きな衝撃を受け、『女としてどう生きるか?』ではなく『人としてどう生きるか?』に辿り着き、自分の人生を歴史に捧げ、戦いの道を選んでいく。あのシーンでの葛藤が2人の行く末に繋がるため、沢城さんと何度もテイクを重ねながら、細部までこだわって作り上げていきました」
――そして本作は15曲の挿入歌が随所で流れていて、歌唱シーンも楽しめる映画になっています
「まずはアフレコより先に楽曲のレコーディングが始まったため、全体の曲数を聞いて驚きました。この作品は音楽劇の作り方だなと思います。アントワネットの曲は、彼女のさまざまな年代を切り取ったものが多いので、全体を通して統一感を意識しながら、アントワネットが人生を振り返った時に『この瞬間にこんな出来事があったな』と思い出しながら歌っているような感覚で取り組みました」
――ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン役の加藤(和樹)さんとのデュエットも印象的でした
「加藤さんとは、私が帝国劇場で初めて主演を務めさせていただいたミュージカル『レディ・ベス』という作品で、相手役としてご一緒させていただいた経験があったんです。お互いの演技や歌のアプローチに関して『きっとこういう風に来るだろうな』と自然と想像がつく部分があって、安心感と信頼を感じながら臨むことができました」
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――改めて『ベルサイユのばら』が令和の時代に劇場アニメ化することへの意義を感じます
「そう思います。コロナ禍を経て、人とどう関わっていくかという感覚が大きく変わったと思うんです。恋愛だけでなく、友情であったり、社会における人間関係において、距離感が曖昧になったじゃないですか。そして今、それを再構築しようとしている最中に、こういった作品が登場することで、これまで自分たちが感じていたことや考えていたことを後押しするきっかけになるんじゃないかと思います。長年のファンの方々にとっても、初めて読んだ時の感覚と今では時代の流れも影響し、だいぶ違いがあるかもしれません。作品を通じてその当時を思い起こしながら、今を考えるきっかけにもなるかもしれませんね」
――『ベルサイユのばら』をこの映画で知る10代や20代の方がこの作品をどう受け止めるのか楽しみです
「歴史物というと、少しハードルが高いと感じる方もいるかもしれませんが、この作品は、実際に起こった出来事に華やかな登場人物たちが加わることで、親しみやすくなっていると思います。ファッションもすごく注目ポイントだと思うので、若い世代の方にも響く部分が多いはず。『ベルサイユのばら』の楽しみ方が広がったら嬉しいです!」
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劇場アニメ『ベルサイユのばら』でオスカルを演じた沢城みゆきにインタビューした記事はこちら
取材・文=川崎龍也 撮影=内田大介
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