仲野太賀と衛藤美彩が静の演技で紡ぐ、じんわりと心に響くストーリー「静かな雨」
2025.1.29(水)
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」に主人公・豊臣秀長役で出演することが決まっている俳優・仲野太賀。これまでも「この恋あたためますか」(2020年)、「コントが始まる」(2021年)、「いちばんすきな花」(2023年)など数々の話題作で確かな存在感を放ってきた仲野。2024年は7月期の「新宿野戦病院」で小池栄子とW主演を務めたり、12月に公開され現在も上映中の映画「聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメン VS 悪魔軍団〜」に出演したりと、その活躍はさらに目覚ましく、それだけに本人の目標でもあったという大河ドラマでの主演にますます期待が高まる。
そんな仲野が主演を務め、公開前年に乃木坂46を卒業したばかりだった衛藤美彩がヒロインとして共演したのが、映画「静かな雨」だ。原作は「羊と鋼の森」で知られる宮下奈都の同名デビュー小説。「四月の永い夢」、「わたしは光をにぎっている」などで知られる中川龍太郎がメガホンを取った。
本作で仲野が演じているのは大学の研究室で働き、考古学を研究している行助で、足に障がいがある男性。そして、本作が映画初主演となった衛藤は、1人でたいやき店を営むこよみを演じている。
2人が出会ってからほどなく、こよみは事故に遭い、記憶障がいが残ってしまう。新しい記憶を短時間しか留めておけなくなったこよみに対し、行助は2人で生きていくことを決意する。セリフは少なく、日常が淡々と綴(つづ)られていく本作は、それ故に"無言の演技力"が求められる作品だ。
監督は「走れ、絶望に追いつかれない速さで」(2016年)でタッグを組んでいたこともあり、親しい仲の仲野に行助役をオファーしたという。仲野は、記憶を失ってしまうヒロインの相手役を演じるにあたって、監督と話し合いを重ね、考え抜いて現場に臨んだという。そして衛藤も、作品の世界観に魅了されたと語っている。そんな仲野と衛藤が紡ぐ、静かで、やがてほんのり心が温まる演技に注目したい。
■無言で語るような仲野の佇(たたず)まいと、衛藤の謎に満ちた女性像
仕事場に行く道中にあるたいやき店を1人で切り盛りしているこよみのことが気になっている行助は、ひょんなことから、こよみと言葉を交わすようになる。しかし、勇気を出して電話番号を書いた紙を渡した日の夜に、こよみは事故に遭って意識不明の状態に。病院を訪れた行助は、こよみの母(河瀨直美)に彼女の恋人だと思われ、「こよみの面倒を見てほしい」と頼まれてしまう。
意識は戻ったものの、古い記憶しか残らず、新しい記憶が1日ごとに塗り替えられるようになってしまったこよみの生活を案じた行助は、こよみに自分の家に引っ越してくるよう提案する。襖(ふすま)を隔てた同居生活が始まるが、切ないのは、こよみが毎朝戸惑った顔で「ここ、ゆきさん家(ち)?」と尋ね、病状を把握している行助が、そのやりきれなさを押し込めながら同じ説明を繰り返すことだ。象徴的なのは行助が苦手なブロッコリー。苦手なことを伝えても、こよみは翌日には忘れており、料理に入れてしまうのだ。
こよみのバックグラウンドは多くは語られず、毎日、自分のことを行助に問いかける伏し目がちな表情が、彼女の抱えている不安を物語る。こよみの元恋人(萩原聖人)と出会ったことで心が乱れ、雨が降りしきる中で行助がベンチに座っているシーンも、無言ながらも行助のやるせない気持ちがひしひしと伝わってくる。
■現実を受け入れて生きる姿から伝わるのは、日常の何気ない幸せ
本作では、行助が足を引きずりながら懸命に歩いていく後ろ姿が何度も映し出される。そこから伝わってくるのはいわゆる悲壮感ではなく、一歩一歩、ゆっくりではあるが着実に進んでいく姿だ。
やがて、記憶障がいを受け入れたこよみも、たいやき店を再開させる。ストレスを募らせた行助がこよみについに本音をぶつける日もあり、2人で過ごす毎日は穏やかなだけではない。しかし、そんな中でも印象的なのはやはり、2人が横に並んでたいやきを食べたり、コーヒーを飲んだりと、楽しそうにしているシーンだ。不自由を感じながら生きている主人公たちだからこそ、交わすほほ笑みや会話がいかに幸せで尊いか―。そのことがより浮き彫りになり、そんな何気ない幸せを紡ぐ2人に、いつしか見る側も自身を投影し、優しい光が差すような気持ちにさせられる作品に仕上がっている。
仲野と衛藤の多くを語らない演技をじっくりと味わうことによって、この映画の深みも増していくのだと思う。
文=山本弘子
放送情報【スカパー!】
静かな雨
放送日時:2025年2月4日(火)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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