ニュース王国

芳根京子、疫病に立ち向かう町医者が主人公の映画『雪の花』に「希望の光を感じてもらえたら」

2025.1.28(火)

映画『雪の花 ―ともに在りて―』に出演する芳根京子
映画『雪の花 ―ともに在りて―』に出演する芳根京子

松坂桃李主演、巨匠・小泉堯史が監督を務める映画『雪の花 ―ともに在りて―」が、1月24日(金)に全国ロードショーされる。

人命を奪う疱瘡(天然痘)が猛威を振るっていた江戸時代末期。福井藩の町医者・笠原良策(松坂)は、どうにかして人々を救う方法はないか、と京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)に教えを請うことに。異国にあるという種痘(予防接種)の存在を知った良策は、やがて幕府を巻き込み、大きな壁へと立ち向かう。

今回、実話をもとにした本作について、良策を励まし続ける強さと明るさを持つ妻・千穂を演じる芳根京子に話を聞くことができた。

――小泉監督作品には『峠 最後のサムライ』(2022年)以来の出演となります。現場を共にしてみていかがでしたか?

「前回よりも物理的に出させてもらうシーンが多く、小泉さんと一緒に過ごせる時間も長かった分、たくさんお話させていただきました。役者ファーストで現場を動かしてくださる小泉さん、プロフェッショナルな小泉組...改めて、とても貴重な現場に参加させていただいているんだなと実感しました」

――役者さんとしても得るものがあったのではないでしょうか

「(小泉組は)フィルムでの撮影なのですが、フィルムでの撮影経験があるかないかはとても大きいとは思います。今は(デジタルのため)『もう1回お願いします』と言えばできるんですよね。そのなかで1回にかける思い、本番の重さが、言葉だけでなく体感としてあるのは、自分の強みだと思います。
今もドラマ撮影中ではあるのですが、ドラマでも『一旦やってみよう』ではなく『自分の最大のパフォーマンスを本番で出す。そのためには...』と、本番までの順序を一歩ずつしっかり踏むようになりました。もちろん小泉組にいたときも感じていたのですが、離れてより一層ありがたみを感じていますね」

――千穂の生き方については、どんなことを思いましたか?

「『自分の信じていることを信じる』という強い意志を感じました。良策さんを信じるうえに『良策さんを信じている自分を信じる』って、簡単にできることではない、と思うんです。『あなたを信じている自分を信じる』って、『あなたを信じてる』よりも、ある意味自分に向いていて難しいこと。そこまでできる『強さ』を持つ女性は美しいし、かっこいいし、魅力的だなと思いました」

映画『雪の花 ―ともに在りて―』で演じた千穂について語る芳根京子
映画『雪の花 ―ともに在りて―』で演じた千穂について語る芳根京子

――そこまで信じられた理由はどんなところにあると思いますか?

「『こうだからあなたを信じます』というよりも、これまで2人が歩んできた時間であったり、コミュニケーションであったり...相手がいることが強みで、2人がそろうから成り立つ。どちらかが欠けたら成立しない『愛の強さ』だと思うので、『こういう人だから信じられるんです』というよりも、心の底の部分を信じてるというか。フワフワしたものではなく、『もう相手のことは知っているから』ということなので、そこに理由はない気がしますね」

――そんな笠原夫妻の関係性について、客観的にどう感じられましたか?

「時代劇で言うと『女性は守られるもの』と思い込んでいたけど、今回はそうではない、というところがある意味で現代風な感じがします。ただ、現代だと成立しないシーンもあって。今だったら『どこにいますか?』、『お元気ですか?』、と連絡を取るのも簡単にできるじゃないですか。そうはできない時代だからこそ、現代の人から見ても、スッと入る部分と、『すごいな』と思う部分と、かけ離れていない感じもあるなと。そこが、作品が見やすい理由のひとつなのかなと思います。
もし、今の時代で本編で描かれているような状況になったら、自分の心を守るためにも『もう帰ってこないかもしれない』と、早めに覚悟を決める気がするんです。だからこそ、あそこまで信じて待ち続けられる強さは、なかなか現代では生まれづらいなと思います」

――本編では、千穂の和太鼓シーンも見どころです。やってみていかがでしたか?

「今までいろんな楽器をやらせてもらったのですが、和太鼓は初めてで。初めは、バチの持ち方も分からないし、どう叩けばいい音が鳴るのかも分からない。初日はよく分からないまま終わってしまいました。小泉さんから『こういうところまで持っていきたい』というのを見せていただいたんですけど、『できます!』と言えない自分も嫌だけど...かと言って、なんと言えばいいんだろう、と思って。結局、『全力を尽くします!』とお返事しました(笑)。
インの前から3ヶ月ほど週1ペースで練習をしましたが、小泉さんは、何度も練習の場に来てくださって、見てくださって、そのたびに声をかけてくださったので、最終的には小泉さんに『芳根にこの役を任せて良かった』と思っていただくことがひとつの目標となりました。本番の日に小泉さんの笑顔を見て、すごく嬉しく、ホッとした印象があります」

――松坂さんとは再共演です。今回、ご共演されてみていかがでしたか?

「前回ご一緒させていただいたときは、同じシーンはほぼないものの、心はつながっている役で、面と向き合ってもお互い悲しい顔をしていることが多かったんです。ただ、今回は夫婦として支え合うし、どちらが強いわけでもなく、お互いがお互い平等な力加減で助け合う役でした。そのなかで、千穂があることをして、松坂さん演じる良策さんが笑顔になったときに『あー。悲しい顔じゃない。笑顔にさせられた!』と嬉しかったのを覚えています。
松坂さんがどういう方か、すごく知っているわけではないのかもしれないけど、空気感であったり、人柄であったりを知っている分、すごく安心感があって心強かったですね」

――本作は、医療従事者の奮闘が描かれています。作品全体を通して、芳根さんがどんなことを感じられたのか教えてください

「この作品が(コロナ前の)6年前に公開されていたら、見方が全然違ったと思うんです。小泉さんは、前作『峠 最後のサムライ』(2022年公開)が終わってから『雪の花』に取りかかっておられたそうなので、このタイミングでの公開はご縁だし、運命ってあるんだなと思います。
時代劇というだけで『難しい話なのかな』と離れてしまう方がいると思うんですけど、本当に時代が違うだけであって、地面って続いてる、というか。どの時代でも戦ってくださる医療従事者の方々がいらっしゃるからこそ、身近に感じつつご覧いただけるのかなと思います。
過去があったから今がある。今起きてることを乗り越えるから、また未来がある...。そうして希望の光を感じてもらえたら嬉しいです」

取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI


衣装
ワンピース2万9700円/アメリ (アメリヴィンテージ)
その他/スタイリスト私物
問い合わせ先:アメリヴィンテージ(︎03-6712-7965)

映画情報

映画『雪の花 ―ともに在りて―』
公開日:1月24日(金)
監督:小泉堯史
出演者:松坂桃李、芳根京子、役所広司ほか