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当時15歳の清原果耶の存在感も眩しい!藤井聡太竜王と同じく「中学生棋士」として注目を浴びた主人公を取り巻く人間模様が楽しい「3月のライオン」

2023.3.7(火)

「3月のライオン【前編】」
「3月のライオン【前編】」

数々の最年少記録を塗り替え、常に将棋ファンの熱い視線を集めている藤井聡太竜王。昨今の将棋ブームの引き金となったのは、彼の異次元の活躍ぶりに他ならないが、エンタテイメントの世界でその人気を高めた作品の1つに、羽海野チカの漫画「3月のライオン」がある。

現役プロ棋士・先崎学監修の下、将棋界の闘いや人間模様を描いたこの漫画は、第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど高く評価され、現在も連載を続けている。そして同作の世界観を豪華なキャスティングと共に実写映画化し、大いに話題を集めたのが2017年の映画「3月のライオン」【前編】【後編】だ。

主人公の桐山零を演じた神木隆之介(「3月のライオン【前編】」)
主人公の桐山零を演じた神木隆之介(「3月のライオン【前編】」)

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

本作は、17歳の将棋のプロ棋士・桐山零と、彼を取り巻く人々の終わりなき冒険の物語。幼い頃に交通事故で家族を失った零は、父の友人であるプロ棋士・幸田に引き取られる。生きるために将棋の道に進むが、今は家を出て東京の下町に一人で暮らしている。深い孤独の中で縋りつくように将棋を指し続けていたある日、近隣の町に住む川本家の3姉妹と出会う。彼女たちとの賑やかな食卓に居場所を見出した零は、"支え合いながら生きる"温かな関係に触れ、棋士としても1人の人間としても成長を遂げていく。

「3月のライオン【前編】」
「3月のライオン【前編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

藤井聡太竜王と同じく中学生でプロ棋士としてデビューした主人公の零には、神木隆之介が起用された。天才子役から実力派俳優へと成長した神木が、零の中の孤独や怒り、秘めた闘志、その生き様を体現する。"演じる"というよりも零として生きる――そんな自然体な佇まいが印象的だ。

「3月のライオン【前編】」
「3月のライオン【前編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

零を取り巻く人々もまた、原作のイメージを損なわない"キャスティングの妙"が光る。零に大きな影響を与える、師匠かつ養父でもある幸田柾近(豊川悦司)の長女・香子を有村架純が演じている。

激情型でプライドも高く攻撃的な香子は、これまで有村が演じてきた役柄とは全く異なるキャラクター。内弟子となった零が才能を開花させていく一方で、実の父親に棋士としての才能を見限られ、彼らにも将棋にも消化することのできない複雑な感情を抱いている。

零を罵倒する低く重たい声、艶っぽい表情や憂いを帯びた瞳。気性の激しさばかりでなく、香子が抱える寂しさや不安定な心の痛みも伝わってくる。清純派のイメージを覆す熱演で女優としての演技の幅を見せた。

「3月のライオン【後編】」
「3月のライオン【後編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

そして、孤独に生きる零を優しく包みこんでくれるのが、川本3姉妹だ。両親のいない川本家で妹たちを育てる長女・あかり役は倉科カナ。穏やかで愛情深く、母のような温もりを持つあかりの強さと弱さも自然に感じさせた。

中学生の次女・ひなた役は、当時15歳の清原果耶が抜擢された。今や演技派へと成長した清原が、零の心を大きく動かす存在となるひなたを等身大で演じている。普段は元気いっぱいで明るい少女だが、多感な年頃に複雑な環境や事件が重なり、感情をぶつける場面も多い。母を亡くした悲しみを抱えきれずぽろぽろと溢れる大粒の涙や、自分の正義を貫く彼女の真っ直ぐさが、胸に響いた。末っ子・モモを演じた新津ちせの、無邪気な可愛らしさにも癒される。

「3月のライオン【後編】」
「3月のライオン【後編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

女優陣のほかにも実力派たちがずらりと並ぶ。将棋の"神の子"として一目置かれる宗谷名人に加瀬亮、努力と鍛錬を絵に描いたような島田開八段に佐々木蔵之介、強い眼力と存在感を放つ後藤正宗九段に伊藤英明と、原作に登場するプロ棋士たちの対局も、勝負の世界に生きる男たちが持つ、独特の静謐な空気感を伴ってリアルに再現されている。

「3月のライオン【後編】」
「3月のライオン【後編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

「3月のライオン【後編】」
「3月のライオン【後編】」

(C)2017映画「3月のライオン」製作委員会

零の良き理解者である高校教師の林田高志役には高橋一生が演じ、気迫溢れる将棋シーンから一転、ほっこりしたやりとりが微笑ましい。何より役者たちの熱量が詰まった人間ドラマが最大の見どころだ。

藤井聡太竜王の対局でも"勝負めし"がフォーカスされるなど、棋士たちの舞台裏のドラマは何かと気になるもの。そういった意味でも、再び将棋ブームに沸く今、棋士たちの日常とその人間模様を"羽海野チカワールド"と共に改めて味わってみたい。

文=中川菜都美

放送情報

3月のライオン 前編
放送日時:2023年2023年3月12日(日)17:30~
3月のライオン 後編
放送日時:2023年2023年3月12日(日)20:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります