当時16歳の吉永小百合の健気な美しさが際立つ映画「警察日記 ブタ箱は満員」
2025.1.19(日)
伊藤永之介の小説「警察日記」を映画化した1955年公開の「警察日記」は、森繁久彌が主演してヒットした。伊藤は労農派の作家として活躍し、本作の舞台も福島県である。同年に続編も撮られたが、派生した作品として「警察日記 ブタ箱は満員」という映画が1961年に公開された。
川崎俊祐と青山民雄が脚色し、「ガラスの中の少女」(1960年)の若杉光夫が監督した明朗編で、舞台や登場人物は全2作映画とは異なる。本作の舞台は山形県の尾花山町にある警察署。コソ泥やダイナマイト窃盗、出歯亀らが続々と出現して、警察署は大忙し。そんなドタバタ騒動とお人好しの警官たち、そして貧しさゆえに身売りを決意する純朴な少女・ヨシエのエピソードを主軸に描かれている。映画デビュー間もない当時16歳の吉永小百合がヨシエを演じたことで映画ファンには知られている。
物語は、緑の山々に囲まれた小さな町・尾花山町の警察のあわただしい日常で幕を開ける。栗橋署長(嵯峨善兵)をはじめ、若い平巡査の花川(沢本忠雄)ら総勢8人の警察官が人口数千のこの町一帯の治安を維持しているが、珍事件の連続だ。能なし亭主の山田与助(武藤章生)は、女房シゲ子(黒田郷子)に家を追い出されて絶望。鉄道自殺を試みるが、怖気づいて鉄橋から川に飛び込む。さらには春の陽気に浮かれた自称宇宙人やインチキ宗教の教祖などで留置場は満員。そんな時、集団就職したはずのヨシエ(吉永小百合)たちが帰って来た。過酷で不当な労働条件の惨状を同級生の花川巡査に訴えるヨシエ。彼女の父・勘次郎(宇野重吉)は、大酒飲みで莫大な借金を背負っており、家計は火の車。帰って来たヨシエも幼い弟のためにある決意を固めていたのだが...。
全体的に明るいタッチのユーモラスな映画ではあるが、貧困に悩むヨシエの家庭のエピソードは重くて悲しい。それにしても本作の吉永の美しさは本当に際立っている。都会的で洗練された印象の容姿ではあるが、東北弁を話す貧困家庭の長女役が似合っているのは、やはり吉永の女優としての才能だろうか。本作では家計を助けるために危ない話に応じて、危機に陥ってしまうのだが、そんな危ういヨシエの健気さが胸を打つ。吉永は本作の翌年に公開された映画「キューポラのある街」が大ヒット。同作で第13回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。一気に女優としてスターの階段を駆け上がっていく彼女の萌芽が本作でも感じ取れる。
共演陣では、父の勘次郎を演じる宇野重吉の絵に描いたようなダメ父っぷりが素晴らしい。借金のために先祖代々守ってきた農地を手放そうという家族の提案を頑なに拒むも苦悩する。そんな姿を宇野が哀愁たっぷりに演じている。巡査役で登場する米倉斉加年、騒動を起こす農夫・運三役の常田富士男、怪しげな斡旋屋女の佐々木すみ江、旅館の主人役・佐野浅夫といった昭和の名優たちが勢ぞろいしているのも嬉しい。出番こそ少ないが、ダイナマイト事件を起こす犯人役で若き日の大滝秀治が出演しているのもたまらない。
基本的には群像劇で、バタバタした印象もあるが、ストーリー自体は感動的で心温まる佳作だ。人情警察官たちが懸命に町の人を救おうと頑張っている姿も微笑ましい。クライマックスで、斡旋屋に騙されそうになるヨシエを花山巡査らが懸命に救おうとするのがなかなかの見せ場である。ヨシエの母・アサコを戦前から活躍したベテラン女優の赤木蘭子が演じているが、ダメな夫に変わって旅館の下働きをして一家を支える健気な母親をやつれきった表情で好演。その演技があまりにも真に迫っていて強烈な印象を残している。
決して有名な作品とは言えないが、若き吉永小百合をはじめ、日活映画全盛期の良作である「警察日記 ブタ箱は満員」は、古き良き昭和の香りが全開で、ハートウォーミングな見やすい作品だ。昭和を代表する名脇役たちの素晴らしい演技も堪能してほしい。
文=渡辺敏樹
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