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大竹しのぶが渾身の演技を見せる映画「あゝ野麦峠」

2024.12.19(木)

2023年に芸能生活50周年を迎えた女優の大竹しのぶ。2024年も月9ドラマ「海のはじまり」(フジテレビ)の南雲朱音役で出演。作品内において高い演技力で確かな存在感を示す大竹だが、若かりし頃には渾身の演技でチャレンジした作品がある。それが1月12日(日)に日本映画専門チャンネルで4Kデジタルリマスター版が4K化TV初放送される映画「あゝ野麦峠」(1979年公開)だ。

厳しい環境の製糸工場で働く糸取り工女たち
厳しい環境の製糸工場で働く糸取り工女たち

物語の舞台となる明治後期は、鉄道や電信、大砲、軍艦に至るまで、欧米先進国からの輸入に頼っていた時代。その中で、外貨の稼ぎ頭となっていたのが絹糸だ。明治42年には生糸生産高で世界一になるなど、生糸は日本の近代化や工業化の基盤を支えた産業だった。一方で、製糸工場で働く糸取り工女たちは早朝から夜遅くまで長時間労働を課せられるなど、劣悪な労働環境での就労を強いられていた。

そんな糸取り工女たちの実態を描いた山本茂実のノンフィクション小説を大竹主演で映画化したのが本作だ。

大竹演じるヒロインの政井みねは、岐阜県飛騨地方の寒村で暮らす13歳の少女。父母と2人の兄がいるが、まだ小さな4人の弟妹を抱え、苦しい家計を助けるために長野県岡谷市の製糸工場に新工(しんこ/初めて見習い工女となる少女)として働きに出ることになる。

■リアリティーを追求した過酷な撮影現場

見どころの1つとも言えるのが、飛騨・古川町から製糸工場のある岡谷まで約40里(約157キロ)の踏破だ。みねたちは美女峠、寺坂峠、野麦峠という3つの峠を越えなければならないが、雪深い時期の山越えは困難を極めるもの。その厳しさは、実際に吹雪の中、撮影に挑んだキャストたちの姿からもひしひしと伝わってくる。

さらにここではロープで繋がれた3人の新工が崖から滑り落ちてしまうシーンがあるが、その一部では実際に大竹が雪の中を転がっていることも、撮影の過酷さを物語っている。

また、匂いのも苦しめられたという。生糸を取り出す際に繭を煮るが、その時に独特の匂いが発生する。作品内でも新工が匂いに気を失ってしまうシーンがあるように、製糸工場内は不快な匂いが外に漏れないように締め切られて充満している。そんな過酷な環境であってもしっかりと演じきる大竹の女優魂はさすがであり、女優として大成する下地が見え隠れする。

1979年の邦画配給収入で2位を記録したヒット作「あゝ野麦峠」。45年の月日が経った今も色褪せない名作へと昇華させている理由の一つには、過酷な環境で働く糸取り工女役に体当たりの演技で挑んだ若き日の大竹の活躍があるに違いない。

文=安藤康之

放送情報【スカパー!】

あゝ野麦峠<4Kデジタルリマスター版>
放送日時:1月12日(日)21:00~ ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります