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若き日の吉永小百合が堂々とした演技をみせる貴重なドラマ「二人の縁」

2024.11.28(木)

※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。
※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。

女優・吉永小百合は、昭和期を代表する映画スターとして知られ、1957年に11歳でTVドラマ「赤胴鈴之助」でデビューを果たした。以来現在に至るまで第一線で活躍し続けている。

女性として初めてエベレスト登頂に成功した登山家・田部井淳子の生涯を描く映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」が2025年公開予定だ。吉永は1959年に松竹「朝を呼ぶ口笛」で映画に初出演を果たし、1960年には日活と専属契約。同年の「ガラスの中の少女」で主役を演じて人気が上昇。1962年の映画「キューポラのある街」のヒロイン役が評判となり、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。1988年に映画「つる -鶴-」にて映画出演が通算100作を数え、90年代以降の女優活動は映画に限定しているが、以前はテレビドラマでも活躍していた。特にTBS系の東芝日曜劇場には1969年の「24才その7」を皮切りに、1980年の「小ぬか雨」に至るまで、計18作品に出演している。

秀豊(伊志井寛)の胸倉をつかむ澄子(吉永小百合) ※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。
秀豊(伊志井寛)の胸倉をつかむ澄子(吉永小百合) ※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。

そんな時期の一作として、1970年に放送された「二人の縁」という作品を紹介したい。本作は、名プロデューサーとして名を馳せた石井ふく子が自身の父親である伊志井寛を起用。伊志井と吉永が初顔合わせを果たした作品だ。68歳の日本画家と22歳の若い女性との、不思議な縁を描いた物語である。ストーリーは、老齢に入った画家の木庭秀豊(伊志井寛)がある日、家のそばの湖のほとりで自殺しようとしていた娘を救う場面で幕を開ける。

その娘・澄子(吉永小百合)は、その日から秀豊の家で女中兼絵のモデルとして働くことになった。秀豊の娘や息子たちは世間の目を気にして、秀豊と澄子が良からぬ仲にならぬうちに、澄子の縁談をまとめようとする。しかし澄子はそれを拒み、秀豊もまた彼女を手放したくはなかった。そんな時、かつて澄子を裏切った男が彼女に会いに来る...。

※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。
※番宣写真はモノクロですが、本編はカラー作品です。

秀豊にも女に裏切られた過去があり、男に裏切られた澄子との出会いは、まさに運命的なものだった。年齢こそ離れてはいるが、男と女、ふたつの魂が静かに寄り添う姿を、橋田壽賀子の脚本は、きめ細かく濃密に紡いでいる。

このような文学的なドラマは、近年では少なくなったが、昭和後期には多く、東芝日曜劇場の初期の頃の典型的な作風であった。若き吉永のはじけるような美しさ、伊志井の醸し出す哀愁がなんとも趣深い。伊志井は文楽の出身で映画界に転身。後に新劇の俳優としておもに舞台で活躍した。テレビドラマにも精力的に出演し、東芝日曜劇場の看板シリーズだった「カミさんと私」などで知られる。ドラマでは好々爺ぶりで親しまれ、水前寺清子主演の「ありがとう」にも出演したが、本作放送2年後の1972年に肝臓がんで逝去した。
若き日の吉永小百合にとって、老齢男性を相手役とする設定が新鮮であり、大ベテランの伊志井を向こうに回して堂々たる芝居を見せる本作は貴重な一作と言える。劇中の衣装や小道具にも当時の風俗をしのぶことができて、今見ると非常に味わい深いものがある。共演者には、波多野憲、中原早苗、菅井きん、長谷川哲夫、西沢利明、大坪日出代、今村源兵といった当時に実力俳優がズラリ。吉永以外は皆鬼籍に入ってしまったが、それぞれ舞台やドラマで活躍し、昭和の芸能界を支えた名脇役ばかりである。

若き吉永小百合の堂々とした演技をはじめ、今はもう見られない伊志井ら昭和の名優たちの姿を堪能できる「二人の縁」が、橋田寿賀子ドラマ特集としてTBSチャンネル2で放送される。なかなか放送される機会が少ない貴重な作品だけに、吉永小百合の実力と昭和ドラマの魅力をあらためて再発見してほしい。

文=渡辺敏樹

放送情報【スカパー!】

日曜劇場「二人の縁」
放送日時:12月14日(土)07:00~ 
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります