山崎賢人の儚さに高い演技力を感じさせられる映画「羊と鋼の森」
2024.11.27(水)
山崎賢人(※「崎」は正しくは「立さき」)と聞くと、きっと多くの人が様々な作品を思い浮かべるだろう。
それもそのはず、彼の出演作の一覧を見てみると圧倒的な主演の数に驚きを隠せない。同年代の俳優と比較してもトップクラスといえるだろう。近年では「キングダム」シリーズで堂々たる芝居を見せつけた山崎だが、その芝居に至るまでは平坦な道のりでないことを数々の主演作が証明している。今回はそんな山崎の主演作より2018年に公開された「羊と鋼の森」を紹介する。
■山崎賢人が醸し出すと儚さと力強さ
「羊と鋼の森」は宮下奈都の小説を原作とした作品でピアノの調律師という少し珍しい職業にスポットをあてた作品だ。主人公の外村直樹(山崎)は北海道で林業を営む家に生まれたが、高校の講堂で聞いた板鳥宗一郎(三浦友和)のピアノの音に感銘を受け板鳥の楽器店で働きはじめる。修行を重ねながら様々な人の調律を行う外村は佐倉家の姉妹に出会う。2人の姉妹はどちらもコンクールに出場するほどの腕前で調律の音にも敏感であったが2人ともに悩みを抱えていた。はじめは調律師としてピアノに向き合っていただけの外村だが、2人の心にも触れながら調律師としての深い森に入っていく。
山崎の映画出演作をみてみると「羊と鋼の森」の前までは恋愛系の映画に多く出演しており、その端正なルックスを活かした芝居が多くみられた。しかし、本作では調律師として苦節する青年を演じることが必要で山崎の1つの分岐点ともいえるだろう。
そんな本作における山崎の芝居は、公開日時から考えて撮影当時は恐らく23歳だと思われるが年齢を感じさせない儚さをまとっている。それはエネルギーがないというわけではない。実際、山崎は劇中で調律師として様々な人間とエネルギッシュにぶつかり合う。つまり、山崎の纏う儚さは計算的と考えられる。
何故、儚さが必要だったのか?それは外山の調律がタイトルにあるように「森」の中で木を探す作業だからに他ならない。外山は白黒はっきりと調律する人間ではなく、森の中で彷徨いながら手探りで正解を探す人間だ。それは劇中で外山の人間性にも反映されている。山崎は外山の性格と五里霧中の森を歩く外山の調律を表現するために儚さを纏う。それは確かに吹けば消えてしまいそうな存在感なのだが、その芯には力強さを感じる相反する力をもった儚さだ。そして何故力強いのかは劇中での外村の生き様をみれば絶対にわかるはずだ。是非、俳優・山崎賢人を楽しみに観てみてはいかがだろうか。
文=田中諒
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