松本若菜が確かな演技力で物語の人間模様を彩る!映画「大綱引の恋」で放ったナチュラルな存在感
2024.11.17(日)
2022年放送のドラマ「やんごとなき一族」での怪演がきっかけとなって大ブレイクし、映画にドラマにCMと、現在引っ張りだこの松本若菜。今年に入ってからも、7月~9月放送の「西園寺さんは家事をしない」、10月スタートで現在放送中の「わたしの宝物」と、立て続けに連ドラで主演を務め、ますますの活躍が期待される女優と言えるだろう。
そんな松本が女優デビューを飾ったのは、2007年放送の「仮面ライダー電王」。以後、数多くの作品に出演しキャリアを積んできた松本の演技力には確かなものがある。その力量をしっかり味わえるのが、2024年11月18日(月)に日本映画専門チャンネルで放送される映画「大綱引の恋」(2021年)だ。
本作は420年以上の歴史を誇る鹿児島県薩摩川内市の祭り、"川内大綱引(せんだいおおつなひき)"を軸に、35歳で独身の鳶職・有馬武志(三浦貴大)と、離島の診療所で働く韓国人研修医ヨ・ジヒョン(知英・ジヨン)との恋を描いた物語。松本は自衛隊に所属する、武志の幼馴染・中園典子を演じる。典子はつい最近離婚し、また、勤務地が変わったこともあって、現在は娘と共に地元に戻っている。
■明るくてしっかり者、川内の町並みに馴染む典子を松本若菜が好演!
物語は、令和元年6月から始まり、9月に行なわれる"大綱引"の三役の候補を決める時期。三役とは一番太鼓、大将、押大将のことで、上方、下方の各陣営を指揮する中心的存在となる。かつて武志の父・寛志(西田聖志郎)が、典子の父・喜明(升毅)と共に三役を務めたことがあり、武志にも三役、特に寛志と同じ一番太鼓への期待が高まっていた。
しかし寛志は、東京に出て働いていた武志を「一度、鳶も綱も捨てた男」として、一番太鼓となることを認めない。さらに武志の母・文子(石野真子)が、突然、家事と仕事から引退すると表明し、有馬家は混乱に陥る。
そして7月、買い物帰りの寛志とばったり出会ったのが典子だった。典子はTシャツにジーンズというラフなスタイルで、買い物袋を法被で隠そうとする寛志を驚いたように見つめたり、「いやいやいやいや」と言いながら法被の裾をめくったりする。
寛志と会話しながら町内を歩く時の笑顔は親しみに溢れ、離婚の報告をする時はピシッと背筋を伸ばす。また寛志との別れ際に娘が敬礼した時は、ほのかに幸せそうな微笑みを見せる。何気ないシーンではあるが、そんな典子の様子からは、明るくて屈託がなく、周囲の人々や娘を大切に想う人物であることが伝わってくる。
また、持ち前の容姿で存在感を放ちつつも、演技はとても自然に感じられ、町内の空気に違和感なく溶け込んでいる。それも、松本がしっかり"中園典子"になりきっているからだろう。
■自然体で表情豊かな典子の存在が物語の人間模様を彩る
そんな典子には、実はある想いが胸にある。祭りの一番太鼓が武志以外の者に決まった後、典子が武志を呼び出して神社で会う。へたばる武志の手を引いて階段を登ったり、口をすすいだ柄杓を武志に渡して「間接キス」と言ってみたり、典子はイタズラっぽい姿を見せつつ、強い口調で三役になれなかった武志を励ます。
そして神主に怒られて神社を去る時、典子のほうから手を差し出して、階段を降りるのだ。そんなシーンからは、典子が武志に想いを寄せていることがうかがえるし、松本がそんな典子を表情豊かに自然に演じているため、武志とのシーンがユニークで印象深いものとなっている。
本作では武志とジヒョンの恋模様、また、有馬家の家族模様なども描かれるが、情景と物語に溶け込んでいる典子の存在によって、全体の人間模様がより豊かなものになっている。それを演じきった松本の力量はさすがだと言えるし、なればこそ、最後の"大綱引"にすべてを懸けて臨む武志の姿、それを応援する典子の姿が映えるのだ。
それぞれが想いを持って臨む"大綱引"は、どんな結末を迎えるのか。松本若菜を始め、それぞれの熱演、また勇壮な"大綱引"の熱気を味わいながら、じっくりと本作を楽しんでほしい。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
大綱引の恋
放送日時:2024年11月18日(月)20:10~、2024年11月29日(金)9:15~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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