土屋太鳳&栗山千明、映画『八犬伝』で共演の役所広司と内野聖陽の演技に感激「これぞお芝居」
2024.11.8(金)
役所広司が主演を務める映画『八犬伝』が全国劇場にて公開中だ。
作家の滝沢馬琴(役所)が、友人で浮世絵師の葛飾北斎(内野聖陽)に構想中の物語「八犬伝」を語る「創作パート」と、里見家の呪いを解くべく、八人の剣士の運命をVFXを交えて描く「八犬伝パート」の二軸で物語が展開する本作。
今回は、里見家の姫・伏姫を演じる土屋太鳳と、八犬士最大の敵となる玉梓を演じる栗山千明に本作の魅力をたっぷりと語ってもらった。
――2つの視点から「八犬伝」を楽しめる本映画ですが、この世界観に触れてみてどんなことを感じましたか?
土屋「馬琴さんたちの世界線と「八犬伝」の世界線、昔ながらの時代劇と最新の技術、大ベテランの方々と若手の役者さん...。いろんな軸が交差していて、今ならではの作品なのかなと思いました」
栗山「台本を読んだとき、『交差している2つの軸がどう映像化されるのか』と、出来上がりを楽しみにしていました。実際に見たとき、『曽利文彦監督が目指していたものってこういうことなんだ』と腑に落ちましたし、『虚』と『実』が交差していながらも美しくまとまっていて、どちらだけでも成立しない説得力を感じましたね」
――土屋さんは伏姫を演じる際、どんなことを意識されていたのでしょうか?
土屋「日本舞踊をしていたこともあって、所作に関しては気にしてはいなかったんですけど、『儚く見えるかどうか』が大事かなと思い、角度を気にしながら演じさせていただきました」
――里見家への呪いを解くため八犬士を生み出す伏姫ですが、彼女の「覚悟」については、どんなことを思われましたか?
土屋「彼女の覚悟は呼吸と一緒だったのかなと思いました。私の曽祖母は明治生まれの人なのですが、当時、私の母が泣いたら『武家の子は泣きません』と怒られたらしくて...。曽祖母の時代は、どこに嫁ぐか分からない方もいて『今をまっすぐ生きたい』と思っていた人も多いと思うんです。そうしたまっすぐさや覚悟は、時代は違えど伏姫にも通ずるものがあったのかなと感じました」
――あることをきっかけに、里見家を末代まで祟る玉梓を演じた栗山さん。演じる際に意識したことを教えてください。
栗山「ポスタービジュアルにも『正義で何が悪い』と書かれていますが、その逆説を象徴する役として、どれだけ悪く、どれだけ怖くできるかを意識しながらやりました。八犬士の敵として大きくありたいと言いますか。8人揃ってやっと倒せる敵であるために、強い怨念をうまく表現できたらなと思いつつ挑みましたね」
――玉梓は本当に恐怖で...八犬士が勝てるのかと不安になりました。
栗山「そうなればいいなと思っていました(笑)。自分だと『怖いかな?』と、なかなか客観視できなかったんですけど、そう言っていただけるとすごく励みになります」
――馬琴は失明してもなお28年の歳月をかけて「八犬伝」を完成させます。馬琴の思いについてはどんなことを感じましたか?
土屋「今の時代、やりたいことを見つけるだけでも大変なのに、あれだけの思いを込めて完成させるってとても素敵なことだと思うんです。現代を生きる人たちにとって、いい刺激を与えるものになるんじゃないかなと思います」
栗山「日記ひとつとっても三日坊主の私からすると(笑)、作り手としていろんな波があるなか、最後までやり遂げる『信念』が生き様としてカッコ良いなと思いました」
――馬琴と北斎のやりとりも本作の魅力のひとつです。役所さんと内野さんのやりとりをご覧になっていかがでしたか?
栗山「素直に面白いし、素敵ですし、『これぞお芝居』というか...。劇中劇にあたる『虚』の部分との対比という意味でも、どっしり重みを出されていらっしゃるなと感動しました」
土屋「お二人のキャリアがあるからこそ、自由にできる空気感ってあると思うんですよね。そののびのびした雰囲気が、心温まる登場人物のやりとりにプラスされ、さきほどおっしゃっていた重厚感にもつながるのかなって。『人の厚みって映像に出るんだな』と改めて感じました」
――同じ作品ではありますが、役所さんと内野さんのやりとりを見ると、同じ俳優さんとして昂るものがあるのでしょうか?
土屋「いいやりとりを見るとゾワゾワしませんか?」
栗山「うんうん!」
土屋「『うわ〜。なんで私もここにいなかったんだろう?』って(笑)」
栗山「特に今回は撮影でご一緒する機会がない役どころでもあったので、悔しさもあるというか。『その空気感も味わってみたかったな』と思いました」
――過去にご共演経験がある栗山さんと土屋さん。お互いの印象について教えてください。
土屋「(栗山が出演した)『六番目の小夜子』を拝見していましたので...」
栗山「懐かしい〜。ありがとうございます」
土屋「私としてはとても嬉しいんです。『一緒に取材を受けさせていただく機会があるなんて』と感動していますね。栗山さんの雰囲気だから楽しくさせていただけるし、とても素晴らしい方だなと思っています」
栗山「とんでもないです...。太鳳ちゃんはお会いしたときから可愛らしくて、優しい空気感を持っていて、みんながハッピーになれるお人柄です。前にご一緒したのが10年ほど前だったと思うんですけど、お変わりない一方、役柄ではカッコ良くアクションをされることもあって。本当に幅広い女優さんで素敵だなと思っています」
土屋「(感動して)う〜! ありがとうございます〜」
――(笑)。馬琴が28年続けて「八犬伝」を書き続けたように、お二人が長年続けているものがあれば教えてください。
栗山「このお仕事ですかね。5歳のときに芸能事務所に入ったので、35年ぐらいになります」
――演技の面白さは増していくものなのですか?
栗山「私は波がありますかね。10代は無邪気にさせていただいた部分もありましたが、与えていただいた役柄をまっとうするぞ、と向き合い方が変わっていくなかで、面白さも変わっていった気はします。やればやるほど自分に期待してしまうときもあるので、『そういう気持ちは捨てなきゃな』と思うときもありますね」
――土屋さんはいかがですか?
土屋「ストレッチは毎日欠かさず行っています」
――やはり続けることで変わるものですか?
土屋「全然変わります。股関節ひとつちゃんとやるだけで、上半身の動き方が変わるんです。大きい関節をしっかり動かして、まずは大きい筋肉をストレッチさせていくのが大事だなと思っています」
栗山「表現者として素晴らしいですね」
土屋「いやいや。そんなことないです」
――八犬士のなかから「推し」を探すのも本作の楽しみ方のひとつです。お二人が最近推しているものはありますか?
栗山「八房(伏姫の愛犬)ですかね。本編では一部怖い描写もありますけど、ぬいぐるみになると愛着が湧いてすごく可愛いんです。今回の宣伝をさせていただくときも、ぬいぐるみがいつも来てくれるんですよ。あの子がいるだけでも癒されます」
土屋「可愛いですよね!」
――土屋さんはいかがですか?
土屋「私は弟(土屋神葉)です。弟は声優をやっているのですが、声のお芝居、朗読劇、舞台を観ると『ヤバいぞ。自分!』と刺激をもらえます」
栗山「いいライバルになっているんですね」
土屋「そうですね。引き続き可愛がろうと思います(笑)」
取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI
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