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役所広司が、どこにでもいる"普通のおじさん"を好演し、最後まで自分事として視聴者を魅了した作品「Shall we ダンス?」

2024.10.29(火)

第20回日本アカデミー賞において、最優秀作品賞をはじめ主要部門の最優秀賞を独占した映画「Shall we ダンス?」がWOWOWにて放送される。本作でダンスにのめり込んでいく主人公を務めたのが、いまや日本映画界を背負う俳優として大活躍を見せる役所広司だ。

■"普通のおじさん"が、"普通のおじさん"のまま覚醒していく表現が圧巻

ダンスで手を取り合う杉山(役所広司)と岸川(草刈民代)
ダンスで手を取り合う杉山(役所広司)と岸川(草刈民代)

⒞1995 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販

役所が演じる杉山正平は、会社の経理として真面目に働き、妻と一人娘のために郊外に念願のマイホームを購入した男。毎朝妻よりも早く起き出社し、きちんと家に帰ってくる。そんな良き夫が、ある時から少しずつ様子が変になる。

それは帰りの電車から見えるダンススクールの窓から外を見つめているミステリアスな女性・岸川舞(草刈民代)に惹かれ、ダンススクールに通うことになったからだ。

役所と言えば、主演映画「PERFECT DAYS」で、第76回カンヌ国際映画祭・男優賞を受賞したのをはじめ、映画賞受賞歴は枚挙にいとまがないほど日本を代表する俳優だ。そんな役所が40歳のときに本作は公開された。役所にとっては4度受賞している日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を最初に受賞した作品でもある。

劇中の杉山は、まったく色のついていない"普通のおじさん"だ。言い方を変えれば、何の特徴もないサラリーマン。そんな男が、最初はダンススクールから見える"きれいな女性"が目当てという、よこしまな思いでダンスを始めるが、そのことを舞にきつく諫められてから、何の変哲もないおじさんのスイッチが入る。

ここで役所がすごいのが、その変化をドラスティックに見せないところ。杉山のダンス仲間には、田口浩正、徳井優、竹中直人、女性陣も渡辺えり子など、これでもかというほどアクの強い俳優たちが集まっており、杉山までも"色"がつき始めてしまうと、作品としてのバランスが壊れてしまう。

かといってまったく変化しなければ、視聴者の劇的欲求に応えられない。そこを何気ないダンスの練習や、目線の動かし方などで、普通のおじさんを保ちながら、熱いものを滲ませる芝居は圧巻だ。この物語が最後までハートフルで、観ている人たちに自分事感を抱かせてくれるのは、役所の"普通"という天井を抜け出さない演技のおかげだろう。

■役所の脇を固める個性派俳優たちは、現在も大活躍!

⒞1995 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 日販

役所演じる杉山に、ちょっとしたロマンスをもたらすのが草刈演じる舞だ。プロのバレリーナである草刈の背筋の伸びたバレエシーンは言うに及ばず、生徒として大会に出る、竹中や田口、渡辺、そして役所らのバレエも、非常にドタバタさ、楽しさ、ユーモアさがあり、こちらも社交ダンスという当時、そこまでメジャーではなかった題材を、自分事のように感じさせてくれる生々しさをもたらしてくれている。

映画公開時、役所は40歳だったと前述したが、役所演じる杉山の会社の同僚でダンス仲間・青木役の竹中も役所と同年齢。そこから28年、いまやどちらも日本映画界にとって、なくてはならないような俳優として活躍している。

今年40歳の俳優といえば、田中圭や森山未來、生田斗真らが思い浮かぶ。この世代の俳優が30年後、どんな役者人生を送っているのか...などと思いを馳せるのも面白い。そんなことを考えたくなるほど、役所をはじめ、本作に出演している俳優たちは、現在でも強い個性を発揮している。

文=磯部正和

放送情報【スカパー!】

Shall we ダンス?
放送日時:11月8日(金)16:30~ 
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります