堺雅人の受けの芝居から見る、千両役者としてのポテンシャル!映画「南極料理人」
2024.10.26(土)
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「リーガル・ハイ」シリーズ、「半沢直樹」シリーズ、「VIVANT」など、数々の大作で主演を務めている俳優・堺雅人。堺といえば、「リーガル・ハイ」でのアクの強い弁護士・古美門研介から、「半沢直樹」での熱く信念のある半沢、「VIVANT」で演じた二重人格の乃木憂助など、強烈なキャラクターを具現化させることのできる稀有な役者である。
強烈なキャラクターというのは複数の強い特徴があり、一見演じやすいように感じられるかもしれないが、実はその強い特徴に"現実味を帯びさせる"というワンランク上の"説得力を纏った演技力"が必要不可欠。映像である以上、物語の中でキャラクターを生かすことができなければ成立しないし、生かすためには特徴を人物の枠内に抑え込む必要がある。だが、特徴はキャラクターの個性であるため強調しなければならない...。この二律背反な条件を両立させるほどの説得力をもった演技こそが、堺の俳優としてのポテンシャルの高さだといえる。
しかも、それをストーリーの中軸となる主人公でやってのけているのだから、驚くばかりだ。ドラマのスパイス的な存在として強烈なキャラクターが脇に配されていることはよくある。それは、たまにストーリーに干渉するだけであるから違和感は持たれにくいし、インパクトだけで表現すればいい。だが、主人公で初回から最終話まで表現し続けるというのは、ダッシュでマラソンを走り切るようなものなのだ。では、なぜそんなことが可能なのか?それは、堺が"受けの芝居"も一流だからにほかならない。そんな堺の"受けの芝居"が堪能できる作品が、10月28日(月)に日本映画専門チャンネルで放送される映画「南極料理人」(2009年)だ。
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同作品は、南極観測隊に調理担当として参加した西村淳の実体験に基づくエッセイ「面白南極料理人」「面白南極料理人 笑う食卓」を映画化したもので、極寒の南極「ドームふじ基地」での8人の観測隊員たちの暮らしを描いたもの。遠く離れた日本に家族を残し、極限の環境に悪戦苦闘しながらも、次第に絆を深めていく姿を描く。
海上保安庁の巡視船厨房で勤務する西村(堺)は、南極隊員に派遣される予定だった同僚隊員・スズキ(宇梶剛士)がバイク事故でけがを負ってしまったため、急きょ第38次南極地域観測隊のメンバーとして「ドームふじ基地」に派遣されることに。妻、娘、息子を日本において単身赴任で南極にやってきた西村の任務は、冷凍野菜や缶詰などの備蓄食料を使って、共に越冬する隊員8人分の食事を用意することだった。そんな中で、時が経つにつれ、食材の枯渇や隊員のストレスが爆発するなど、さまざまなトラブルが彼らを襲う...。
堺演じる西村は、周りの強烈なキャラクターたちに振り回されながらも、毎日の食事に工夫を凝らして、隊員たちのストレスを和らげることに腐心するという役どころで、強烈キャラたちの芝居の"攻撃"を"受け"まくっている。他の隊員を演じる生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、古舘寛治、小浜正寛、黒田大輔という俳優名だけでも、演じるキャラクターが「どれほど強烈か」が想像できるだろう。そんな実力派俳優陣の強烈な芝居を、堺は時に正面から、時に透かして、時に寄り添いつつ、芝居で"料理"していく。彼らの"強烈さ"を、観る者に嫌な印象を与えないよう、例えば「うんざり」ではなく「同情してグッと飲み込む」といったふうに、"火加減"に気を配りながら。その姿は、厨房で例えるなら料理長、オーケストラで例えるならコンダクターのごとく、隊員たちのマイナスな行いを、西村の眼差しや反応をもってコントロールして、視聴者の意識を、エンタメを享受する道に導いている。
南極という極限の環境下で変わっていく人間たちと、そんな中でも変わらないものを、たくさんの笑いで教えてくれる同作。その中心で、ひたすらせわしなく"受け"続けている堺の一流の"受けの芝居"をご堪能いただきたい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
南極料理人
放送日時:2024年10月28日(月)20:15~、2024年11月9日(土)9:25~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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