雨宮天&伊藤美来&高橋李依&江口拓也が頑張る支えにしているものとは?「がんばっていきまっしょい」の魅力を語る
2024.10.25(金)
忘れてしまった青春時代の熱狂。それを思い出させてくれるのが、10月25日に全国公開された劇場アニメーション「がんばっていきまっしょい」だ。同作は1995年に「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞した敷村良子による同名の青春小説で、愛媛県松山市を舞台に、ボート部に青春を懸けた女子高校生たちの成長や等身大の姿が描かれている。
映像が公開されると早くも美麗なアニメーションが話題となった本作。今回は村上悦子役の雨宮天、佐伯姫役の伊藤美来、高橋梨衣奈役の高橋李依、二宮隼人役の江口拓也にインタビュー。等身大のキャラクターをどのように演じたのか。4人にとって頑張る糧にしているものも聞いた。
――『がんばっていきまっしょい』はボート部の高校生たちの等身大の葛藤や悩みが描かれている作品だなと感じました。実際に完成された映像をご覧になってどのように感じましたか?
雨宮「とにかく映像が綺麗だなと思いました。監督はそのままの松山市の海を表現するというよりは、思い出の中の海のような綺麗さを目指したとおっしゃっていたのですが、その通りキラキラしていて感動しました。個人的に好きだったのは、とにかくキャラクターの目が動くことですね。海を見た時に、ちゃんと海全体を見てるんだなという眼球の動きが表現されていてすごくいいなと思いました」
――CGだからこそ細かいところの表情も魅力的ですよね。
雨宮「本当にそう思います。そこに悦ネエたちがちゃんと生きている、呼吸している感じがすごくするなと思いました」
伊藤「もう本当に"美しい"の一言に尽きますね。海も空もすごくこだわりやリスペクトを感じましたし、他にもみんなが行く喫茶店のソフトタイムとか、歩いてる道路だったりとか、踏み切りとかも実際にある場所で、その街の良さを伝えようという思いがギュッと詰まっているんだなと感じました」
高橋「私が映像を見て特に素敵だなと思ったのは、キャラクターたちの歩き方とかに感情がのっていることですね。夏祭りに行った後に悦ネエがトボトボ歩いているシーンがあるんですけど、映像を見ているだけで感情が伝わってくるんですよね。全てのシーンでキャラクターたちの指の先からつま先まで、命が宿っているな、と思いました」
――雨宮さんは悦ネエ目線で夏祭りのシーンをどう見てましたか?
雨宮「複雑というか...でも大ショックなんですかね」
江口「その感情が何なのかが自分でも分かってないんでしょうね。でもせっかく着物を着てたというところと、その前のシーンでノートに花火を書いているのを見ると、すごく楽しみにしてたんだろうなって」
雨宮「あのシーン可愛いですよね。まだ自分でもその気持ちに恋という名前をつけてない段階だと思うんですけど、だからこそ、その気持ちのやりどころも分からない。ただ靴ずれして、足の痛みがより増したみたいな感じなのかなと思います」
江口「松山市に行ってみたくなりましたね。美しさも苦さもいろんなものが詰め込まれている作品で、まさに青春という言葉がぴったりで、グッとくるポイントがたくさんありました」
――雨宮さんは実際に松山市に行かれたんですよね。
雨宮「行きました。『がんばっていきまっしょい』はボート部の話なので海が描かれているシーンが多いのですが、実際は思ったよりも都会で。都会と自然のバランスがすごいいい場所ですごい居心地が良かったです。でも、私が行った時はあいにくの天気だったので、いつかリベンジを果たしたいです。劇中で出てくる場所が実在するので、きっと聖地巡礼したら楽しいと思います。みんなでしたいね」
伊藤「したい!」
高橋「観覧車に乗りたい!」
雨宮「観覧車のシーンすごくいいよね」
江口「僕、観覧車のシーンもめちゃくちゃ好きなんですよ。観覧車ってグルグル回るじゃないですか。このストーリーもうまくいったと思ったら下がってを繰り返している。でも、グルグル回っているからこそ、今まで見たことがないいろんな景色が見られる側面もあると思うんです。同じところで立ち止まっていてもいいんだと背中を押してくれるような気がしました」
雨宮「実際にある観覧車なので、みんなで行けたらいいね」
――それぞれのキャラクターを演じる上で意識されたこと、ご自身との共通点を教えてください。
雨宮「共通点ばかりでしたね。私も受験勉強して、自分にとっては勉強のできる高校に頑張って入ったのですが、高校ではそれが当たり前の環境になって、自分がどんどん特別ではなくなっていった経験をしたんです。悦ネエも挫折をした経験があるので、すごく共感しながら演じていました。役作りで言うと、悦ネエはダウナーのキャラクターとは言いつつも、リアルな女子高生っぽさもあるキャラクターではあるので、アニメらしく抑揚を強くつけるというよりは、抑揚を抑え気味にして、悦ネエの気持ちをじんわりと香らせることを意識しました」
伊藤「ヒメは悦ネエの幼馴染で、ずっと隣にいるんですけど、悦ネエのことがとっても好きで、同い年だけどちょっと成長を見守ってるお母さんみたいな雰囲気がある子なんです。だからこそ、親友で幼馴染だからといってなんでもかんでも言える関係性というよりは、お互いを尊重し合うというか、距離感をしっかり保つことを意識して演じました。見てもらえると分かるんですけど、セリフのないヒメだけの表情のカットが結構あったりするので、あ、ここでヒメはちゃんと見てるんだなとか、こういうことを考えてるのかなみたいなことを想像してもらえるんじゃないかなと思います」
高橋「リーは今回出てくる女の子たちの中だと、転校生というとこもあって、誰かとすごく深く仲がいいポジションではないんですけど、大好きなボートをフックにみんなを巻き込んでいく引力がある女の子です。私も学生時代の時に部活が大好きで、合宿をやるために先生を説得したりとかしていたので共感できるキャラクターでしたね」
江口「二宮は非常にフラットな人間ですね。その中でも好きなことに没頭する情熱的な部分もあるし、なんかいいやつだなって思います」
――江口さんから見て二宮は悦ネエの気持ちに気づいていたと思いますか?
江口「まったく気づいてないと思います(笑)。でもそういったところも含めて、すごく絶妙な関係が描かれていて、青春だなって思いました」
――「がんばっていきまっしょい」では悦ネエにとって、ボート部員がそうであったように、みなさんが頑張らなければならない時に支えにしているものはありますか?
雨宮「過去の自分です。過去の自分が頑張ってきて今があると思っていて。今はちゃんと幸せの最高潮を更新できていると思うので、今までの自分が築き上げたものを今の自分が裏切れない。そうなるとやっぱり頑張るしかないなと思います」
伊藤「犬ですね。うちの犬がとても癒しをくれるので、とにかくへこんだ時とか、もうダメかもしれないってなった時には一旦吸います(笑)」
高橋「私はいろんな作品を見ることですね。例えば、オタクになるきっかけの作品を見返して、私はこういうのが好きだったんだと再確認したり、お芝居が分からなくなったら、舞台を見に行ってお芝居の楽しさを再確認する作業をすることで、エネルギーをもらっています」
江口「僕はよく行きつけの店に行くんです。生きていると大切なのは結局人と人との関わり合いだったりするじゃないですか。そうした人との会話の中で、頑張らなければいけない時にヒントをもらえたりして。仕事に関係のない人間たちとただいるだけでも、そこにヒントが隠されているので、人とのコミュニケーションはこれからも大切にしたいですね」
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
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