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上野樹里と林遣都が細やかな演技で揺れ動く心情を体現!映画「隣人X 疑惑の彼女」

2024.10.23(水)

上野樹里が主演を務め、林遣都と初共演を果たしたのが、映画「隣人X 疑惑の彼女」だ。原作は「第14回 小説現代長編新人賞」を受賞した、パリ在住のパリュスあや子の小説「隣人X」。監督は熊澤尚人が務め、上野とは「虹の女神 Rainbow Song」(2006年)、林とは「ダイブ!!」(2008年)以来のタッグとなった。

「隣人X 疑惑の彼女」で共演した上野樹里と林遣都
「隣人X 疑惑の彼女」で共演した上野樹里と林遣都

(C)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 (C)パリュスあや子/講談社

本作で上野が演じているのは、アルバイトで生計を立てている36歳の柏木良子。そして林が演じるのは、週刊誌の記者・笹憲太郎だ。紛争によって惑星を追われた地球外生命体「惑星難民X」を受け入れることになった日本を背景に、何も繋がりがなかった2人が翻弄されることになる。人間に擬態化できるXがどこに紛れ込んでいるかは誰にもわからないという状況の中で繰り広げられていく物語は、SFのエッセンスがありながら、描かれているのは"情報社会の中で時に溺れそうになる人間の姿"だ。何が本当で何がフェイクなのか判別し難い世の中で、他人と自分を比べたりせずに穏やかな日常を過ごしている良子と、社会派の記事を書きたいという夢を抱いてメディアの世界に飛び込んだものの現実とのギャップに葛藤する記者の憲太郎。上野と林は、若き日の自分を知っている監督と時間を忘れて作品について語り合い、アイディアを重ね、役作りをしていったという。さまざまな角度から見られる本作で難役に挑んだ上野と林の演技に注目したい。

■良子の心情を体現する上野の細やかな演技が秀逸

(C)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 (C)パリュスあや子/講談社

国立大学を卒業して大手企業に就職したものの、現在は会社を辞めてコンビニと宝くじ売り場でアルバイトとして働いている良子(上野)は、読書が趣味の独身女性。自己承認欲求とは無縁な良子の日常に突然侵入してくるのが、編集部で「X」の記事を担当することになった憲太郎(林)だ。

"X候補"の人間として配られたデータの中には良子と台湾から来ている留学生の蓮(ファン・ペイチャ)の名前が。監視されていることを知らない良子は、バイト中のアクシデントがきっかけで強引に食事に誘われ、戸惑いながらも少しずつ憲太郎に心を開いていく。偏見や恐怖心を持たれているXについて聞かれ、否定はせずに心で見ることが大事だと語る良子は、余計なことは話さないミステリアスな女性。年上だからと躊躇しながら付き合うことになった憲太郎を思いやる心理、揺れる感情を上野は仕草や表情で繊細に表現している。週刊誌の記事で世間が大騒ぎになる中、視線や自分の腕を掴む仕草で激しく動揺していることを表わすシーンなど、寡黙にして豊かな演技に魅了される。

■心理的にも経済的にも追い詰められる記者を演じる林の熱演が刺さる

「Xのスクープを撮ってこないと解雇する」と言われている憲太郎は、良子とは対照的に、追い詰められた淵に立って揺らいでいる青年だ。良子や蓮を望遠カメラで追っている時も、良子をデートに誘う時も真剣そのもの。半端なく切羽詰まっている。編集長(嶋田久作)と副編集長(バカリズム)から容赦ないプレッシャーをかけられる中、良子を本気で好きになってしまい、ミッションと恋愛の狭間で心を引き裂かれ、車のハンドルにもたれかかって号泣するシーンでは、林の迫真の演技が憲太郎の心の痛みを物語る。

時代の渦の中でもがく青年を演じた林と、大切なものを胸に持つ女性を演じた上野。2人の演技のコンビネーションが、"人間を傷つけない未知なる生物X"をモチーフとした本作のメッセージに奥行きを与えている。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

隣人X 疑惑の彼女
放送日時:2024年10月25日(金)12:50~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます