サイコキラーを演じた伊藤英明の怪演に釘付け！二階堂ふみ、林遣都も生徒役で出演したサイコホラー「悪の教典」

2024.10.21(月)

第1回山田風太郎賞受賞作であり、2011年本屋大賞などにもノミネートされた貴志祐介のサイコホラー小説「悪の教典」。犯した殺人を巧みに隠蔽し、現在は高校の教師を務めているサイコキラー・蓮実聖司が、とあるほころびをきっかけに生徒たちを惨殺していくという内容で、2012年11月に映画化された。

主演は伊藤英明。伊藤の代表作と言えば「海猿」シリーズで、海難救助にあたり命を守る海上保安官・仙崎大輔役のイメージが強くある。「悪の教典」と同年の7月に劇場版第4作「BRAVE HEARTS 海猿-UMIZARU-」が公開されたため、本作で真逆の役柄・サイコキラーを演じたこと、そしてその怪演ぶりが大いに話題となった。

■爽やかさの内に危うさを漂わせる伊藤の演技と魅力

伊藤演じる蓮実は、生徒から人気の英語教師。女子生徒が蓮実のあだ名を呼びながら集まってきたり、軽快な口調で授業を進めたりと、蓮実が学校に溶け込んでいるのがよく分かる。そういったシーンでは、伊藤の優れた容姿と爽やかな雰囲気が際立ち、本当に人気のある教師に見える。

一方で、蓮実の危うさが感じられるシーンも挿入されていく。携帯を使ったカンニングが問題になった時は、違法の可能性があると知りつつ妨害電波を出す提案をしたり、万引きが見つかり体育の教師に身体を求められたという女子生徒には、脅迫じみたメールを教師に送るようアドバイスしたりもする。

"蓮実聖司"という人物の謎がさらに深まるのが、彼の自宅でのシーンだ。今にも崩れそうな廃屋で、蓮実が1人、全裸でベットに横たわっている姿が映し出されるのだが、荒れ果てた薄闇の中に浮かび上がる整った身体の美しさには、思わず息を飲むほどだ。伊藤が持つ魅力が存分に活かされたシーンだが、同時に蓮実がなぜそんなところに住んでいるのか、不可解さも増してゆく。

そしてシャワーを浴びる蓮実の鋭い眼差しが映し出されたあとに、最初の犠牲者が出る。相手は、子供がいじめられたと何度も学校に怒鳴り込んでくる父親だ。しかし、父親が亡くなったと警察が学校に知らせに来た時は、泣きそうな痛ましい表情を見せる。自らが仕掛けを施し、手を下したはずなのに。

そこから蓮実のサイコキラーぶりがエスカレートしていく。蓮実の経歴を調べ疑念を持った教師を手にかけ、その教師から話を聞いた生徒のこともガムテープで自由を奪い、授業の時のような軽快な口調でいたぶる。冒頭の爽やかな印象を変えることなく、無慈悲に人の命を奪ってゆく姿は異様であり、まさに怪演といえるだろう。

■クライマックスでも伊藤の怪演から目が離せない！

クライマックスは、文化祭の準備のため、生徒たちが学校に泊まり込むことになった夜。校内での殺人を隠蔽しきれなくなった蓮実は、散弾銃を手に、容赦なく生徒を殺戮していく。その時も、生徒を殺したことより銃声でおかしくなった自分の耳を気にしたり、その後小さく「あは」と笑ったりする。

そんな蓮実を見ていると、普通に趣味の狩りでもしているように見えてくるから不思議だ。そしてそう思ってしまうのは、サイコキラーになりきった伊藤の怪演に引き込まれているからなのだろう。

本作には、他にも注目の俳優が多数出演する。美術の教師と同性愛の関係にある生徒・前島雅彦を演じるのは林遣都。スラッとした面立ちで透明感があり、目を引く存在だ。また、ヒロインとも言うべき片桐怜花を二階堂ふみが演じる。大きな瞳で不安や焦りを伝える演技はさすがで、ラスト近辺で蓮実に向けるさまざまな眼差しは秀逸というほかない。また、万引きした女生徒に関係を迫った体育教師・柴原徹朗を、山田孝之が演じている。

ラストに向かって盛り上がっていく物語と、伊藤を始めとする豪華キャストの印象的な演技に引き込まれながら、ぜひ本作をラストまで見てほしい。最後の最後で本作における伊藤の"最高の怪演"を見ることになるだろう。

文＝堀慎二郎

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