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亀梨和也が「神は細部に宿る」を体現!映画「怪物の木こり」で見られる、演技の細部に宿らせた役の魂に刮目せよ

2024.10.8(火)

今年、ドラマ「大奥」(フジテレビ系)やドラマ「Destiny」(テレビ朝日系)、連続ドラマW「ゲームの名は誘拐」(WOWOW)と立て続けにドラマ出演するなど、アイドルながら役者としても脂が乗ってきた亀梨和也。そのルックスとは裏腹な泥臭い役もいとわず演じながらも、どこか品格を漂わせるキャラクターに見せることができる稀有な役者の一人だ。そんな亀梨がサイコパスの主人公という難役を品のある人物として演じ上げた作品が、2023年の映画「怪物の木こり」である。

同作品は、倉井眉介の同名小説を映画化したもので、サイコパスと連続殺人鬼による命を懸けた対決を描いたサスペンス。犯人を追う警察と犯人への返り討ちを狙う主人公など、追う者と追われる者がどんどん入れ替わっていく先読み不可能なストーリーが展開される。

絵本「怪物の木こり」の怪物の仮面を被り、斧で脳を奪い去る連続猟奇殺人事件が発生。次のターゲットに選ばれたのは、弁護士・二宮彰(亀梨)。しかし彼は、犯人をも凌駕するほどの冷血非情なサイコパスだった。警視庁の天才プロファイラー・戸城(菜々緒)、二宮の婚約者・映美(吉岡里帆)、二宮の協力者であるサイコパス外科医・杉谷(染谷将太)、過去の殺人事件の容疑者・剣持(中村獅童)ら、さまざまな人物の思惑が複雑に絡み合い、捜査は混迷を極めていく...。

亀梨は主人公ながらサイコパスで、目的のためには手段を選ばず、殺人すらいとわない狂気の弁護士役を熱演。クールで傍から見れば成功者である彰が、ストーリーが進むにつれて変化していく様子を、分かる人にだけ分かるような"印象的だが直接的ではない表現"で表し、ラストの伏線回収へと繋げるという高度な芝居で、ジェットコースターのようなストーリーに彩りをもたらしている。

亀梨和也が主演を務めた「怪物の木こり」、共演の菜々緒は警視庁の天才プロファイラーを好演
亀梨和也が主演を務めた「怪物の木こり」、共演の菜々緒は警視庁の天才プロファイラーを好演

(c)2023「怪物の木こり」製作委員会

劇中で、菜々緒演じる戸城が「ナルシスティックで、どんな状況でも堂々としている。目的のためには平気で嘘もつく。場合によっては傲慢で尊大」とサイコパスの特徴を述べるシーンがあるのだが、まさにこの通りの人物像を表現するだけでなく、目の奥に狂気じみた光を宿しており、普通の人間とは一線を画した存在として役を作り上げている。さらに、弁護士という職業も相まって、その狂気じみたところが優秀で頭の回転が速い人間の特徴とも重なるところであるため、上手いミスリードとしての役割も担っている。

そんな中で特筆すべきは、彼の"圧倒的な役作りによって生み出される、細部にまで行き届いている繊細な所作"だ。公開前のインタビューでの「過度に強い表現をしてしまわないよう、欲望を抑えながら演じました」というコメントのとおり、サイコパス感を基本は抑えながら、ふとした瞬間や要所要所で顔を覗かせるという、表現の繊細さには驚きを禁じ得ない。ネタバレにならないよう少しだけ例を挙げると、冒頭の車を運転しているシーンのハンドルの握り方や、自分を追ってきた邪魔な人物の首を割れたガラス片でかき切るシーンでのガラス片の持ち方など、ナルシスティックなところだけでも随所に散りばめられている。「神は細部に宿る」というが、血液のように体の隅々にまで役を浸透させていなければ、上記のように指の動かし方に至るまで表現することはできないだろう。

連続殺人鬼の正体や衝撃の結末といったサスペンス部分を楽しみつつ、亀梨の"細部に宿らせた彰の魂"にも注目してみてほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

怪物の木こり
放送日時:2024年10月26日(土)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2024年10月27日(日)23:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます