役所広司が威厳のある艦長、妻夫木聡が初々しい隊員を演じることでSF大作が人間ドラマに
2024.9.23(月)
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日本映画界を代表する俳優の役所広司と妻夫木聡が共演した映画「ローレライ」(2005年)が10月1日(火)に日本映画専門チャンネルで放送される。福井晴敏の小説「終戦のローレライ」を「シン・ゴジラ」(2016年)や「シン・ウルトラマン」(2022年)の樋口真嗣監督が手掛けたSF大作で、当時のCGを駆使した戦闘や人間ドラマが話題となり、観客動員数190万人と、大ヒットを記録した。

舞台は第二次世界大戦の敗戦が濃厚になった日本。第二、第三の原爆投下を阻止するために閑職に追いやられていた絹見少佐(役所広司)は同盟国ドイツから譲渡された潜水艦「伊五〇七」の艦長として、アメリカへの反撃作戦を決行することに。「伊五〇七」にはナチス・ドイツの開発した特殊音響兵装「ローレライ・システム」が搭載されており、そのシステムは民間人の少女・パウラ(香椎由宇)を媒介する人間兵器であることが出港後に判明。複雑な気持ちを抱く乗組員たちだったが、次第にパウラの歌声に癒やされていく。
完成披露会見で「アニメで作るべきだと言われたが、生身の役者で撮りたかったので絶対に嫌だと言い続けた」と樋口監督が語ったように、アニメ的なSF要素がふんだんに盛り込まれている本作。「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの総監督である庵野秀明が絵コンテで協力していたり、「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995年)の監督・押井守がデザイン協力していたりと、SFアニメ界のトップクリエイターが参加している。中でも、人間兵器であるパウラの存在や衣装はよりSFっぽさを引き出している。
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そんな非現実的に見える物語を人間ドラマに仕上げているのは他ならぬ主人公・絹見少佐を演じた役所広司の演技力。絹見は浅倉大佐(堤真一)の画策により、「伊五〇七」の艦長になり原爆輸送艦艇の撃沈を命じられ出撃するも、途中、第三の原爆投下を阻止するために自らの判断でテニアン島に砲撃することを決意する。その中でも「各々が自分で考え、自分で決めよ」などと語り、乗組員のことを誰よりも考えて行動する。
常に未来を考え頼りになる艦長を見事に体現している役所。話しているときの目線はブレることがなく、信頼の置ける人物であることを体全体を使って表現している。威厳がありながらも人間らしさが見えるのがさすがと言える。
絹見少佐と対照的にどこか幼さがありながらも成長していく人物として描かれるのが折笠上等工作兵。人間魚雷「回天」の特攻隊員で、「伊五〇七」には総舵手として乗り込むが、偶然パウラの存在を知り、彼女と心を通わせていく。
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当時24歳だった妻夫木聡は、絹見とパウラに出会うことで変わっていく青年を熱演。パウラに少しずつ惹かれていく姿や、がむしゃらに頑張る姿は初々しくも映る。特にパウラとつかの間の休日を過ごすシーンは青春映画さながらの爽やかさがあり、本作の清涼剤になっている。
登場人物が多いこともあり、それぞれのキャラクターに対する描写は少ない本作。そんな中でも、役所広司や妻夫木聡をはじめとした実力派俳優の演技力で、人物像がよりリアルに表現されている。特に浅倉大佐を演じた堤真一や大尉を演じた柳葉敏郎、軍医長役の國村隼、兵曹長役のピエール瀧といった俳優の演技合戦は注目したいところ。彼らの血の通った芝居を見て、実写版ならではの良さを体感してほしい。
文=玉置晴子
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