池松壮亮がアツくて不器用な男を全身全霊をかけて熱演!共演の蒼井優や井浦新にも注目の映画「宮本から君へ」
2024.9.5(木)
現在放送中の「海のはじまり」(フジテレビ系)で、好きだった人の死を整理できない男性をていねいに演じている池松壮亮。その確かな演技力から、複雑な感情が手に取るように伝わってくると注目を集めている。
池松は子役からキャリアをスタートし、12歳で出演した「ラスト サムライ」(2003年)では映画初出演ながらにトム・クルーズ演じる主人公と心を通わすキーパーソンを堂々と演じて一躍話題の人に。その後、「斬、」(2018年)や「シン・仮面ライダー」(2021年)、「愛にイナズマ」(2023年)など、映画界では引っ張りだこの俳優となっている。
そんな池松壮亮の代表作の一つが「宮本から君へ」。愚直なまでにアツくて不器用な男の生き様を描いた本作は、新井英樹の同名コミックが原作。2012年に真利子哲也監督・池松主演で映像化の話が進められていたが、原作のセンシティブな内容から何度も頓挫し、6年後の2018年に連続ドラマ化、2019年に映画化された。
都内の文房具メーカーの営業マンとして働く宮本浩(池松)は、中野靖子(蒼井優)と恋に落ちるが、彼女には何度も浮気されても離れることができない元カレ・風間裕二(井浦新)の存在が。ある日、宮本は靖子の部屋に訪れた裕二に対し、「この女はオレが守る」と宣言する。晴れて恋人同士になった2人だったが、宮本の取引先の社長の息子が宮本の寝ている前で靖子をレイプ。そして靖子の身にはある変化が見られて...。誰よりも不器用だが正義感の強い宮本は、周囲を巻き込みながら現実に立ち向かっていく。
「宮本の抱える迷いや葛藤、そこからの突破みたいなものが自分に本当にできるのかどうかを撮影中もずっと考えていましたし、公開してからもまだふと考えることがあります」と記者会見で語ったように、複雑な感情を持つ宮本を演じる上で悩んだという池松。そんな常に大きな声で叫び、傷つき、怒り、喜ぶ宮本を池松は全身で表現。その姿がリアルで、観る者を物語に巻き込んでいった。ちなみに役づくりのために歯を抜こうと考えたという池松。それほど彼が本気で宮本という役にぶつかっていたのが伝わってくる。
「あれだけの人物になろうとしても追いつかないと最終的に考えました」と語るように、最終的には宮本ではなく"池松"自身が見え隠れするキャラクターに。宮本は池松以外では考えられないほどハマり役になっている。
そんな宮本に感情をむき出しに本気でぶつかるのが靖子を演じた蒼井優。彼女の体当たり演技は、観ている者の心を引き裂き、勇気を与える。そして意外なのが裕二を演じた井浦新。近年の彼は芯の通った頼れる役を演じることが多いが、本作では女にだらしないクズ男を演じている。ボサボサ頭で頼りない男だがいざというときに懐の深さを見せる彼は、宮本のがむしゃらな熱量とはまた違ったベクトルで靖子を支えていく。どうしても池松ばかり注目されがちな本作で、いい味を出していることを確認してもらいたい。
彼ら以外にも、「サンクチュアリ-聖域-」で話題を集めた一ノ瀬ワタルが体当たり演技を見せたりと、俳優たちの確かな演技にも注目したい本作。芝居を超えて全身で役になりきる彼らが作る、壮大な人間賛歌を味わいたい。
文=玉置晴子
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