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新垣結衣と綾野剛が芝居で表現した"心の距離感"に注目!異色コンビが仕事に奮闘する成長ドラマ「空飛ぶ広報室」

2024.8.30(金)

新垣結衣と綾野剛。今やどちらも主演クラスの俳優だが、そんな2人が共演したドラマが2013年に放送された「空飛ぶ広報室」だ。数々の作品に出演し、キャリアを重ねてきた実力派俳優である2人による演技の化学反応は言わずもがななのだが、特に2人が芝居で見せる"心の距離感"の表現が素晴らしい。

同ドラマは、有川浩による同名小説をドラマ化したもので、不本意な異動で不満を抱えている元報道記者の稲葉リカ(新垣)と、不慮の事故でパイロット資格を失い広報室へ転属された空井大祐(綾野)という夢破れた2人が、仕事でさまざまな困難に見舞われながらも新たな目標を見つけて奮闘する姿を描いた成長ストーリー。

テレビディレクターと航空自衛隊の広報が成長するさまを演じた新垣結衣と綾野剛
テレビディレクターと航空自衛隊の広報が成長するさまを演じた新垣結衣と綾野剛

(C)TBS 原作:有川浩「空飛ぶ広報室」(幻冬舎)

テレビディレクターと航空自衛隊の広報というなかなか馴染みのない設定なのだが、仕事上のトラブル、上司や同僚との関係、仕事で出会った男女の恋、たまに起こるどうしようもできないこと、組織ゆえの不合理さ、働く人それぞれの思いややりがいなどが丁寧に描かれ、仕事をする人には必ず刺さるメッセージが満載となっておりとにかく面白い。

「仕事への向き合い方」というテーマと同時に、「リカと空井の恋模様」も並行して描かれていくのだが、新垣と綾野による"仕事関係という大人の距離感"の表現が絶妙で、馴染みのない設定の中で一般視聴者への親和性を高めている。

(C)TBS 原作:有川浩「空飛ぶ広報室」(幻冬舎)

リカは、勝気で上昇志向が強く、子供の頃から報道記者になるのが夢で、「帝都テレビ」に就職。報道部の記者となって誰よりも意欲的に奔走したが、強引な取材方法がトラブルを生み、情報番組のディレクターとなったという経歴のあるキャラクターで、新垣は芯のある強さを持ちながらも、実は繊細な心の持ち主というリカの人間性を描出。

一方の空井は、小さい頃からブルーインパルスのパイロットになることだけを目指し、航空自衛隊に入ってブルーインパルスの内示が出た矢先に交通事故に遭遇。パイロットの資格を失い、失意のまま空幕広報室に配属され、虚無感を拭えないまま仕事をしている役柄なのだが、リカと仕事で関わるうちに変化していくという役どころ。綾野は、実直で真面目さを保ちながら仕事に前向きになっていく空井を熱演している。

(C)TBS 原作:有川浩「空飛ぶ広報室」(幻冬舎)

2人は考え方も立場も違いながらも、「幼い頃からの夢を絶たれ、人生の壁にぶち当たっている」という共通点から、互いに理解を深め、惹かれ合い、成長していく。第1話から空井がくすぶっている夢の残骸に対する思いが噴出して泣きじゃくってしまい、その姿をリカに晒してしまったり、第2話ではリカが情報番組は報道より格下で、何でもできると思っていた自分が何も分かっておらず無力だったことに気付いて空井の前で涙をこぼしてしまうなど、互いがそれぞれの心の弱い部分を見せ合ったことがきっかけで距離が近くなったことから始まり、新しい目標を持って互いをリスペクトしながら歩み始め、次第に惹かれだすところ、勇気を出して近づこうとするも"大人ならでは"の誤解や遠慮から離れてしまうところ、誤解が解けて近付くもトラブルによってまた離れるといったところなど、素直になりづらい大人だからこそ生まれる、近付いたり離れたりする"心の距離感"を互いの感性で描き出している。

ドラマで描かれる「仕事に対する向き合い方や考え方」に共感したり首を捻ったりしながら、新垣と綾野が芝居で表現したリカと空井による絶妙な"心の距離感"を感じてみてほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

空飛ぶ広報室
放送日時:2024年9月1日(日)12:45~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます