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平岡祐太が新・浅見光彦シリーズに果敢に挑んだドラマ「後鳥羽伝説殺人事件」

2024.8.22(木)

ベストセラー作家・内田康夫の原作をドラマ化した旅情ミステリーといえば、「浅見光彦シリーズ」。テレビ朝日を除く在京民放キー局でそれぞれ放送されているが、TBS系では初代光彦役の辰巳琢朗(「琢」は正式には点の入る旧字体)に続き、沢村一樹、速水もこみちへと主人公が引き継がれていった。そして4代目光彦役として選ばれたのが、平岡祐太である。「新・浅見光彦シリーズ」として新たなスタートとなった2017年放送の「漂泊の楽人 越後〜沼津・哀しき殺人者」でお目見えした。続いて第2弾として2018年に放送されたのが、今回TBSチャンネル1でオンエアされる「後鳥羽伝説殺人事件」だ。

主演の平岡祐太と沢村一樹主演シリーズでも刑事を演じた佐藤B作
主演の平岡祐太と沢村一樹主演シリーズでも刑事を演じた佐藤B作

同作は光彦が尾道から出雲への後鳥羽伝説のルートをたどり、浅見家を襲った哀しい事件の謎に挑むストーリー。ちなみに沢村一樹主演シリーズで広島県警三次中央署の刑事・野上を演じた佐藤B作が、本作でも同役を演じている点も注目ポイントだ。物語は、ルポライターの浅見光彦(平岡祐太)が、後鳥羽上皇にまつわる伝説を取材するために広島県の尾道を訪れる場面から幕を開ける。

尾道は12年前に妹の祐子(秋月三佳)が卒業旅行中に火災事故に巻き込まれて非業の死を遂げた、光彦にとって悲しい思い出のある土地。亡き妹との思い出を懐かしんでいた矢先、光彦は祐子の友人である正法寺美也子(向里憂香)と偶然の再会を果たす。美也子は祐子の死に立ち会った人でもあり、懐かしい人物との出会いを喜ぶ光彦だったが、美也子はそっけない態度でその場を立ち去ってしまう。そして美也子は、後鳥羽院御陵で遺体となって発見されたのだ。やがて光彦は、美也子の事件を捜査する刑事の野上哲男(佐藤B作)とその娘・文香(森脇英理子)に出会う。野上からの情報によると、美也子の所持品には、彼女が大切に持っていた緑色の布表紙の本がなかったという。疑問を感じた光彦は、美也子が祐子との卒業旅行の記憶を失っていたこと、当時のコースを逆に辿っていたことを知り、事件に大きな謎が秘められていると直感。文香を連れて美也子が辿った旅程の追跡調査を開始する。一方、県警捜査一課警部の桐山道夫(黄川田将也)の指示により、野上も後追い捜査を進めるが...。

本作の原作小説はファンの間でも人気が高い作品で、計6回もドラマ化されている。2024年5月には東京の劇場で舞台上演もされた。ちなみに原作者の内田は作家に専念する前にCM制作会社を経営していたが、当時CMの仕事で広島を頻繁に訪れた際に、地元に伝わる後鳥羽伝説に触れて着想を得たという。内田の商業デビュー作でもあり、浅見光彦が初登場する作品としてもファンにはおなじみだ。

歴代の光彦役のほとんどが演じた代表作だけに、平岡の重圧は相当なものであったはず。特にTBS版では、シリーズ中最も長く、第14作から第31作まで光彦役を務めた沢村一樹の印象が強い。速水もこみちも自分なりの光彦像を作りあげて好感を持てたが、それでも、沢村版の評価は根強かったように思う。平岡演じる光彦は、育ちの良さを感じさせる端正なルックスから、過去に光彦を演じた俳優たちより、繊細で心の優しさを前面に表現しているという印象だ。本作においても、まだ2作目とは思えないほど光彦がすっかり板についている。亡き妹の死にまつわる事件だけに、事件の真相を追って懸命に犯人を追い詰める姿には力強さも感じる。共演陣では、同じ役で二度目の出演となる佐藤B作がさすがの貫禄。ストーリー上でも野上が重要な役割を果たすだけに存在感は抜群だ。ヒロイン役として、文香を演じる森脇英理子は、「後鳥羽伝説殺人事件」が原作のドラマでは2度目の出演。以前は祐子の友人役だが、今回は原作にない独自に設定されたヒロイン役で、文香の存在が本作の大きな特徴となっている。ほかに、文彦の母・雪江を竹下景子、兄・陽一郎を石丸幹二が担当。さらに高林由紀子、河合美智子、丘みつ子、大和田伸也といった演技派が脇を固めている。ただ本作は、やはり重圧をはねのけて光彦役に果敢に挑んだ、平岡祐太の繊細な演技がが何よりも光っている。そんな彼の奮闘ぶりを改めてかみしめてほしい。

文=渡辺敏樹

放送情報【スカパー!】

新・浅見光彦シリーズ「後鳥羽伝説殺人事件」(平岡祐太主演)
放送日時:9月6日(金)12:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります