昭和の大女優・吉永小百合の気品と愛らしさを併せ持つ演技に注目!
2024.8.21(水)
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昭和期を代表する映画スターとして知られる女優・吉永小百合は、1957年に11歳でラジオ東京のTVドラマ「赤胴鈴之助」でデビュー。1959年には松竹映画「朝を呼ぶ口笛」で映画に初出演を果たした。1960年に日活と専属契約し、同年の「ガラスの中の少女」で主役を演じて人気が上昇。1962年の映画「キューポラのある街」のヒロイン役が評判となり、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。人気絶頂ながらも早稲田大学第二文学に進学して無事に卒業している。28歳でテレビプロデューサーの岡田太郎氏と電撃結婚したが、その後も映画を中心に女優として精力的に活動を続け、1988年に映画「つる -鶴-」に主演し、映画出演は通算100作品に達した。90年代以降、女優活動は映画に限定し、ラジオやCM、朗読などの活動をつづけながら現在に至っている。
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80年代まではドラマにも出演しており、特にTBS系の東芝日曜劇場には1969年の「24才 その7」を皮切りに、1980年の「小ぬか雨」に至るまで、計18作品に出演している。そのひとつが、1980年に放送された「不断草」という作品である。山本周五郎の小説を原作とする時代劇で、吉永は大義のために離縁された藩士の妻を演じている。武家の生まれであった菊枝(吉永小百合)が嫁いだのは、奉行所で重い役目を勤めて将来を嘱望されていた武士・三郎兵衛(林与一)の家だった。三郎兵衛の母・康代(三益愛子)と夫との3人暮らしを楽しんでいたある日、突然三郎兵衛から離縁を言い渡される。まったく訳が分からぬまま実家へ帰された菊枝。実家や親類から責められて苦しむ菊枝だったが、その後、三郎兵衛が康代をひとり残して城下を去り、行方をくらませたと知る。康代が盲目であったこともあり、その身を案じた菊枝は「秋」と名を変えて康代の世話係として奉公に出る。やがて時が経ち、秋が菊枝だと気づいた康代は、三郎兵衛が新しい政治の犠牲となったために菊枝と離縁したのだという真実を告白した。それを聞いた菊枝は三郎兵衛の心遣いをうれしく思い、これからも康代を支えて三郎兵衛の帰りを待つ決心をするのだった...。
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愛する夫のために耐え忍んで待つ女のはかなげな美しさが胸を打つ本作。殺陣など派手な見せ場のない静かな作品だが、そんな静謐な物語でも見る者を魅了するのは、一挙手一投足が画面映えする吉永の力量に他ならない。当時の吉永は34歳で年齢こそまだ若いが、十分な芸歴を誇り、その演技には貫禄さえ感じさせる。武家の嫁としての気品を感じさせ、それでいて愛らしい笑顔の柔和さにも癒される。美しく、気高くもあり、親しみやすさも併せ持つ稀有な女優である吉永の真骨頂ともいえる作品に仕上がっている。
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共演には、林与一、三益愛子のほか、垂水五郎、三ッ木清隆、立原博、金内吉男、有島一郎らが顔を揃えている。林と三ツ木以外は鬼籍に入ってしまったが、皆当時の時代劇ではおなじみの面々だ。特に垂水は、時代劇の名わき役として長年活躍し、「太陽にほえろ」(日本テレビ系)など刑事ドラマでの出演も印象深い。歌舞伎役者でもあった林与一も美しい佇まいが印象深く、画面を引き締めている。
有名な作品ではないものの、当時の吉永の女優としての実力を大いに感じられる貴重なドラマ作品として、本作は一見の価値があると言えるだろう。60年代の日本映画全盛期には、日活の看板女優として映画界をけん引した吉永小百合は、現代のスターとは比較にならないほどのまさに雲の上の大スターだった。現代にも美しく魅力的な女優は数多いが、当時の吉永と肩を並べられる人は思い浮かばない。貴重な一作である「不断草」がTBSチャンネル2で放送されるのは僥倖である。令和の若者たちにもぜひ、その魅力を確かめてほしい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
日曜劇場「不断草」
放送日時:9月1日(日)21:30~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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