刑事ドラマのスペシャリスト・内藤剛志が人気サスペンスシリーズの系譜に名を連ねた「西村京太郎サスペンス 新・十津川警部シリーズ2『伊香保温泉殺人事件』」

2024.7.31(水)

今、刑事役の似合う俳優として多くの人が最初に思い浮かべるのが内藤剛志ではないだろうか。現在、放映中のドラマ「科捜研の女　Season24」では捜査一課の一匹狼的刑事、土門薫を演じているが、19年ぶりの出演となったNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でも期待を裏切ることなく、ベテラン刑事を演じたのは記憶に新しい。代表作としてはスペシャルドラマとして15年以上オンエアされ、2021年に連続ドラマ化された「今野敏サスペンス　警視庁強行犯係・樋口顕」や、ノンキャリアから成り上がった刑事を演じた「警視庁・捜査一課長」シリーズなど。内藤には本物の警察官にもファンが多いというから、憧れの上司的存在なのかもしれない。

そんな内藤が多くのベテラン俳優によって演じられてきた人気シリーズで主演を務めたのが、西村京太郎原作の十津川警部シリーズだ。1970年代から長年にわたって放映されてきた本シリーズで最も長く十津川警部を演じたのは渡瀬恒彦で全54作品。渡瀬から主役を引き継いだのが内藤であり、その心境を「十津川はつないでいく役」だと当時語っている。

■東京と伊香保温泉を繋ぐ事件に内藤演じる十津川が挑む

2017年からスタートした新シリーズで内藤扮する十津川警部がタッグを組む亀井刑事役は石丸謙二郎。２作目となった「西村京太郎サスペンス 新・十津川警部シリーズ2『伊香保温泉殺人事件』」は、血まみれで記憶喪失の男が都内で保護されるところから始まる。男の身元を探る手掛かりは、彼が所持していた群馬県・伊香保神社のお守りのみだった。

同じ頃に伊香保温泉近辺で女性の刺殺死体が発見され、その血液が男の服に付着していたものと一致していたことから群馬県警と十津川班が合流して本格的な捜査に乗り出していく。群馬県警の加納みずき刑事を演じているのは元宝塚の紫吹淳。真冬の伊香保や榛名山で撮影された旅情あふれる景色の中、十津川の鋭い推理により事件が解き明かされていくのも本作の見どころであり、長年に渡って愛されてきたドラマに挑んだ内藤がどんなふうに警部を演じているかに着目したい。

■実は渡瀬主演の十津川シリーズに出演していた内藤

シリーズを振り返ってみると内藤剛志は2004年に放映された渡瀬恒彦主演の第31弾「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ『四国連絡特急殺人事件』」に出演している。その役柄は刑事ではなく、お遍路の途中で殺害された巨大スーパーマーケットの会長、徳大寺の甥の南条で、十津川から疑いをかけられる役柄だ。しかも徳大寺が依頼していた探偵、岡部を演じるのも内藤でひとり２役。いかにも怪しげな重役と、社会の闇を渡り歩いてきた探偵を見事に演じ分けている。今ではすっかり刑事のイメージが強い内藤だが、悪役など、さまざまな役を演じてきたキャリアがあるからこそ、洞察力と包容力を合わせ持った刑事を演じられるのかもしれない。

文＝山本弘子

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