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阿部サダヲ、堤真一、柴崎コウがコミカルでエネルギッシュな演技を見せた映画「舞妓Haaaan!!!」

2024.7.30(火)

2024年も半分が過ぎ去り、コロナ禍が落ち着き数多くの旅行者や外国人観光客が行き来するようになった日本。その中でも特に人気な場所の一つが京都だ。古くからある建物や寺院は国内外問わず熱い視線を集める。だが、建造物の外観や景色だけではない。京都には由緒正しき日本の文化というものがある。その一つが舞妓という文化。しかし、実際にお座敷遊びに行ったことがある人は少ないだろう。そんな秘密めいた文化にコミカルにスポットライトを当てた作品、それが「舞妓Haaaan!!!」だ。

お座敷に通う鬼塚(阿部サダヲ)
お座敷に通う鬼塚(阿部サダヲ)

(C)2007「舞妓Haaaan!!!」製作委員会

宮藤官九郎がシナリオを書き下ろした本作は、非常にウィットに富んだ作品だ。物語は、阿部サダヲが演じる鬼塚公彦が学生時代に修学旅行で訪れた京都で迷子になってしまった際、道を教えてくれた舞妓さんに一目惚れをしたことからはじまる。時は流れ、会社員となった鬼塚は舞妓さんオタクとなり、撮った舞妓さんの写真を載せる自身のブログを運営していた。鬼塚の夢はお座敷で野球拳をすること。そんな折、鬼塚は京都支社への転勤が決まる。憧れのお座敷へと物理的な距離は近付いた鬼塚だったが、一見さんお断りの文化があり遊ぶことは叶わない。諦められない夢を叶えるために鬼塚は様々な事にチャレンジしていく。

物語の中で鬼塚は様々なことをする。カップラーメンを開発したかと思えば、野球選手になり俳優をし、市長選に出馬する。観客からすれば目が回るような変化で振り落とされそうになる観客もいるだろう。しかし、阿部の芝居は観客の目を掴んで離さない。何をしていても真っ直ぐに舞妓さんが好きだという気持ちが身体中から出ており、持ち前のハイテンションで観客に奇妙な職歴を歩む鬼塚を疑う隙を与えない。

加えて、見逃せないのが動作だ。阿部はコミカルな表情にマッチするように身体も非常にコメディな動きをする。例えば、市長選に敗北した後に勝者である内藤貴一郎の祝賀会にラジコンカーのような爆弾を送り込んだ際、顔は江戸時代の盗人のように風呂敷で包み、その隙間から除く目や口の表情で芝居している。だが、爆弾が失敗に終わると四つ足になって退場していく。コントのように思えるが、しっかり負けた悔しさも表情から滲み出る。映画という長いお話の中で表情と面白い動きの絶妙な塩梅を狙うかの如く演ずる姿勢は流石という他ない。

■阿部を追随する実力派俳優たちの光る芝居

(C)2007「舞妓Haaaan!!!」製作委員会

阿部がこのようなコメディ色を強く出している以上、他の俳優も負けないくらいのエネルギーが劇中では必要だろう。内藤貴一郎を演ずる堤真一と大沢富士子を演ずる柴崎コウはそれぞれの色のついた力強さで映画を支えている。

内藤は鬼塚の永遠のライバルだ。野球選手としてお座敷で自ら遊び、カップラーメン開発を除く全ての職業で鬼塚の先をいく。そんな内藤だがお座敷に通い詰めるのには理由があり、鬼塚が贔屓にする舞妓の駒子(小出早織)に関してある事情があったからだ。

物語の終盤には、この事情に関して内藤は駒子とシリアスな問答をするシーンもあるのだが、対照的に物語の中盤までは基本酔っぱらっており座敷を荒らす陽気な迷惑客として描かれる。中盤までの力強いエネルギーを纏った酒飲みとしての芝居と後半の人間味溢れる繊細な芝居のギャップは必見だ。

ギャップという面で柴咲も負けてはいない。鬼塚が京都に転勤する際に手ひどい振られ方をされ未練タラタラだった柴咲演じる大沢は鬼塚を見返す為、舞妓になりに京都へいく。

舞妓として一人前になると大沢は鬼塚への未練を面と向かって断ち切るのだが、そこに至るまでの柴咲の演技は夏の天気のようにコロコロ変わる。自信なさげな元カノから品を身につけ自信を持ち、最後には鬼塚をもはねとばす心が強い女を演ずるのだ。書くは易しだが、同じ人間が演じている以上、品を身につけ性格が少しずつ変化していくのを表現するのは難しいに違いない。是非とも劇中で注目してほしい。

日々を生きていれば、疲れる日もある。そんな時に「舞妓Haaaan!!!」はクスリと必ず笑わせてくれるだろう。舞妓という文化が気になる人もそうでない人も一見の価値がある映画だ。

文=田中諒

放送情報【スカパー!】

舞妓Haaaan!!!
放送日時:8月12日(月)15:40~
放送チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります