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若き日の沢村一樹の好演で「スマートでカッコいい浅見光彦」がハマり役に!その後12年も続いた2時間ドラマの代名詞「浅見光彦シリーズ」

2024.7.25(木)

浅見光彦シリーズ「志摩半島殺人事件」(TBSチャンネル1)
浅見光彦シリーズ「志摩半島殺人事件」(TBSチャンネル1)

内田康夫原作による浅見光彦シリーズは、2時間ドラマの定番で、テレビ朝日を除く民放キー局でそれぞれ放送されている。TBS系では1994年から2019年まで制作されたが、初代の辰巳琢郎を皮切りに、沢村一樹、速水もこみち、平岡祐太が歴代の浅見光彦役を演じている。ただ、単発ドラマとして同局で1982年に放送された「後鳥羽伝説殺人事件」で国広富之が浅見を演じており、厳密には5人が演じていることになる。このうち、最も長く浅見を演じたのが沢村一樹で、第14作から第31作に主演した。さらに同局の連続ドラマ「浅見光彦〜最終章〜」も沢村の主演で2009年に放送されており、TBS版の浅見光彦といえば、真っ先に沢村を思い浮かべる人も多いだろう。

2001年に放送された「志摩半島殺人事件」は、沢村が浅見を演じた2作目にあたる。本業ルポライターの素人探偵ながら、鮮やかな推理によって犯罪を暴く浅見は、スマートな好青年というイメージ。そんなカッコいい光彦像に、当時30代前半の沢村が見事にハマっている。ちなみに原作の光彦の設定年齢は33歳である。

本作のストーリーは、海女の取材で志摩半島を訪れた浅見光彦(沢村一樹)が殺人事件に遭遇するというもの。風光明媚な志摩半島で、光彦は素朴で美しい海女・岩崎夏美(宮本真希)、役場の職員・本橋幸雄(高橋克実)とその妻・丹那子(大島さと子)らと出会う。そんな志摩の地で、元暴力団で自らの刑務所経験を書いて人気作家となっていた袴田啓二郎(渡辺哲)が何者かに殺害された。袴田は殺された日にホテルのロビーで懐かしそうな感じで電話をしていたという。

捜査を担当する鳥羽署は、袴田の過去に着目し、暴力団関係者等の交友関係を洗う。しかし、不審人物が目撃されていないことを知った光彦は、犯人は地元の人間だと確信する。そして数日後、新たな殺人事件が発生する。東京から来たルポライター・野村(並樹史朗)が志摩半島の英虞湾で謎の死を遂げたのだ。2つの事件に関連性を感じた光彦は、袴田と野村の経歴を調べる。すると、2人が同時期に岩手県大船渡市にいたことがわかった。さっそく光彦は岩手に向かうが実は大船渡は夏美や本橋にとっても縁深い土地だったのだ。

浅見光彦シリーズ「志摩半島殺人事件」(TBSチャンネル1)
浅見光彦シリーズ「志摩半島殺人事件」(TBSチャンネル1)

本作の魅力は、まずは浅見光彦を演じる若き沢村の理知的なカッコよさ。さらに、内田ミステリーによく見られる。事件の深淵に潜む悲哀を鋭く描いたストーリーの深みにある。光彦が事件の真相に迫るほどに、やりきれない思いに捕らわれてしまう。愛する人と家族を守るための悲しい犯罪を暴くことになる光彦は、大いに苦悩するのだが、そんな切ない心情を丁寧に表現する沢村の演技に視聴者は大いに引き付けられるはずだ。トラベルミステリーだけに、映像美も圧巻。ハイビジョンによる水中撮影など美しい画面が満載で、真珠の養殖で知られる英虞湾の海中で、イルカのように華麗に泳ぐ海女の姿をファンタジックな映像で表現したシーンは必見である。

共演陣では、ヒロイン・夏美を演じる宮本真希の素朴ではかなげな美しさが印象的。宝塚歌劇団の娘役出身で、デビュー作の1999年公開の映画「おもちゃ」に舞妓役で主演。日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞するなど早期から演技力が評価されている。重要な役どころを演じる高橋克実も胸を打つ演技ぶりで、大いに存在感を発揮。大島さと子も起伏のある難しい人物像を見事に演じているし、袴田の妻・直美を演じた朝加真由美のエキセントリックな演技も一見に値するといえるだろう。

そんな脇役陣の奮闘に加えて、やはり主役である沢村一樹がしっかりと画面を引き締めてくれる。これが2本目とは思えないほど浅見光彦を自分のものにしているという印象を受ける。放送中のドラマ「南くんが恋人!?」(テレビ朝日系)、2024年冬公開予定の映画「グランメゾン・パリ」など、相変わらず活躍が目覚ましい沢村だが、若き日の凛々しさも魅力十分だ。

文=渡辺敏樹

放送情報【スカパー!】

浅見光彦シリーズ「志摩半島殺人事件」
放送日時: 8月5日(月)12:00~
チャンネル: TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※以降、「浅見光彦シリーズ」を8月6日(火)~9日(金)、12日(月)~16日(金)、26日(月)~30日(金)まで連日12:00から放送
※放送スケジュールは変更になる場合があります