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仲間由紀恵の最高の当たり役ヤンクミが輝く、映画「ごくせん THE MOVIE」

2024.6.7(金)

仲間由紀恵という名前を聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。

女優(俳優)としては「TRICK」での山田奈緒子役は、彼女にとっての出世作だった。2000年にテレビ朝日で放送されたドラマから一気にブレイク。同作品はシリーズ化され、劇場版でも4度上演されている。

あるいは司会者としてのイメージも強いかもしれない。「NHK紅白歌合戦」では第56・57・59・60回で紅組司会を務め、現在も音楽番組「MUSIC FAIR」で総合司会を任されている。

だが、まず挙げておくべき作品は「ごくせん」シリーズだろう。原作は同名漫画作品となっており、主人公は熱血高校教師・山口久美子。通称・ヤンクミは任侠一家に育った一人娘で、ケンカにはめっぽう強い。その腕っぷしの強さで不良たちを時に守り、そして心を通わせていく学園ドラマとなっている。

(C)2009「ごくせん THE MOVIE」製作委員会

不良が出てきて、悪さをして、ヤンクミが守り、トラブルを解決する――。言ってしまえば、物語はその繰り返しなのだが、ごくせんが社会現象を起こすまでの作品となったのは、やはり仲間由紀恵演じるヤンクミのキャラクターが圧倒的に"際立っている"ところにあるだろう。

一度悪党と相対すれば、教え子たちのために拳を振るう。一方的に力でねじ伏せるだけではなく、学生たち、そして時に敵対した相手にも優しい言葉で説きながら正しい道へと導いていく。
仲間の美貌をメガネで封印し、お下げ髪となっているヤンクミのビジュアルの否めない野暮ったさと、仲間が元来持つクールな声によって、ヤンクミは絶妙なバランスで魅力的なキャラクターへと昇華されている。

(C)2009「ごくせん THE MOVIE」製作委員会

■劇場版の立ち位置

そのごくせんシリーズの集大成となっているのが2009年に公開された「ごくせん THE MOVIE」だ。ドラマシリーズではこれまでに松本潤、小栗旬、亀梨和也、速水もこみち、三浦春馬、三浦翔平らそうそうたる俳優陣が若かりし頃に出演し、本作は髙木雄也や桐山照史、中間淳太らが出演したドラマ第3シリーズの最終話にあたる。

ドラマシリーズの面々は赤銅学院高校を卒業した一方、ヤンクミは再び3年D組の担任を受け持つこととなる。生徒たちとの距離がなかなか縮まらない中、黒銀学院時代の教え子、小田切竜(亀梨和也)が教育実習生としてやってくるところから物語はスタートする。

ヤンクミが3年D組の生徒の問題を解決したかと思えば、赤銅学院の卒業生も大きな事件に巻き込まれ、教え子のために奔走することに。最終的には強大な黒幕と対峙することになるのだが、劇場版で強調されたのはドラマシリーズと同様、ヤンクミと生徒たちの結びつきの強さだ。

ヤンクミは「私の大事な教え子」を口癖にどんな時でも生徒のために身体を張る。すると、生徒たちもそれに応えるように次々と助太刀しに来て、ヤンクミの窮地を救っていく。先生と生徒の師弟愛が美しく描き出されている。一方で、黒幕の手下がボスを見捨てて逃げ去る姿が対比的に描かれており、黒幕は最後に「こんな先生がいて羨ましいよ」と学生たちに漏らす。

ヤンクミは大人が観ても「こんな先生がいれば...」と感じるような先生となっている。

ラストはまるで「3年B組金八先生」さながらに、河原をヤンクミと生徒たちが走り出す。だが、金八はしっかりと教師として生徒と向き合い、正しい道を示すのに対して、ヤンクミは生徒の横で寄り添うように導いていっている印象だ。それも仲間演じる山口がいい意味で色気がなく、生徒にとって"姉御"のような存在となっていることから得ている産物なのかもしれない。

より複雑な世の中になった現代で、ごくせんを再演するとすれば、コンプライアンス的にも様々な変更を余儀なくされるだろう。それでも、新たな「ごくせん」シリーズを想像した時、仲間由紀恵以外のヤンクミはやはり考えられない。仲間由紀恵にとってごくせんは代表作で、ヤンクミは最高の当たり役であったことは間違いないだろう。

文=まっつ

放送情報【スカパー!】

ごくせん THE MOVIE
放送日時:2024年6月17日(日) 21:45~、2024年6月28日(金) 17:00~
放送チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合がございます