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連続テレビ小説「虎に翼」主演の伊藤沙莉、「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」で見せた演技の幅

2024.3.25(月)

東京・新宿の雑多な街、ゴールデン街を舞台に宇宙人捕獲を依頼された探偵とその周囲の人々の人生が複雑に絡み合う映画「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」(2023年公開)。主人公の探偵・マリコを演じるのは、4月から始まるNHKの連続テレビ小説「虎に翼」に主演することでも注目を集めている伊藤沙莉。新宿ゴールデン街という活気や欲望、怪しさ、危うさをもろとも飲み込んだ街で生きる、強くもあり、儚くもある女性を魅力的に演じている。

「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」
「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」

(C)2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会

新宿ゴールデン街にあるバー「カールモール」には、売れないバンドマンや役者、恋愛に依存する女性など夜ごと多種多様な客が集い、日々のグチを掃き出し、不毛ながらもモラトリアムな時を過ごしていた。その店のバーテンダー・マリコは客たちの良き相談役であり、その傍らで探偵業も営んでいる。客には「ホストに貢ぐのは良くない」と諭すマリコだが、自身の彼氏・MASAYA(竹野内豊)は忍術で生計を立てようとするものの生活は苦しく、事あるごとにお小遣いを渡していた。そんなマリコの元へ、ある日、FBI捜査官を名乗る3人組がやって来る。聞けば、数週間前に捕獲された地球外生命体が科学者により連れ出され、この新宿に隠れているというのだ。そしてマリコに、宇宙人と一緒に逃げている科学者を探してほしいと依頼する。にわかには信じがたい話だったが報酬は前金で2万ドル。成功報酬はその10倍と聞き、引き受けることに。早速、調査を開始したものの、掴んだのは怪しい光の目撃情報のみ。宇宙人探しは難航、さらに客から人探しの依頼も舞い込み、彼女の忙しい日々は混とんとしていく。

(C)2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会

マリコの口癖は「大丈夫、なんとかなる」。悩みを打ち明ける客たちに寄り添い、励ましている。前半は至極ポジティブで、それは伊藤沙莉のパブリックイメージそのままだ。だが後半、実は過去のトラウマと戦い続けてきた複雑な背景が明らかとなり、急展開が訪れる。これまで個性豊かなさまざまなキャラクターをキュートに演じてきた伊藤が随所に見せる泣きの芝居。シーンごとに意味の違う涙、それをしっかりと表現していた。涙に加え、作品に彩りを与えていたのが情緒ある街並みだ。汚れたコンクリートの冷たさやネオンのまぶしさ、街に漂う泥臭さが画面を通して伝わって来た。マリコをはじめとする葛藤を抱えた登場人物の、それぞれが抱える過去、人生の分岐点、そしてこれからの決断...コメディータッチに描いていくことでより切なさが感じ取れた。全体的にはパワーあふれるコメディ作品でありつつも、"マリコはこの街で何を探し続けてきたのか?"と一考した、振れ幅の広い作品である。

文=石塚ともか

放送情報【スカパー!】

探偵マリコの生涯で一番悲惨な日
放送日時:4月3日(水)00:50~
放送チャンネル:WOWOWライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります