北村匠海と中川大志が演じるリアルな若者像!対照的なキャラクターから痛みと葛藤が見え隠れする、映画「スクロール」
2024.3.21(木)

子役時代から注目を集め、多彩な活躍を続ける北村匠海と中川大志。俳優デビューした年も近く、同じ事務所で切磋琢磨してきた。「君の膵臓をたべたい」(2017年)でブレイクした北村は、2021年からの人気映画シリーズ「東京リベンジャーズ」で不良少年を熱演したかと思えば、昨年はドラマ「風間公親 -教場0-」での新人刑事、「星降る夜に」の聴覚障害を持つ年下男子など、作品ごとにまったくイメージを変える。
一方、2011年の大ヒットドラマ「家政婦のミタ」で一家の長男役を演じ、人気を高めた中川は「江~姫たちの戦国~」「平清盛」「真田丸」と大河ドラマにも何度も出演してきたが、2019年の連続テレビ小説「なつぞら」でヒロインの相手役に抜擢。昨年は第47回エランドール賞新人賞も受賞し、話題作に途切れることなく出演し続けている。
幼少期から活動を始めた若手実力派として共通点も多い2人。そんな旧知の仲である彼らがダブル主演を務めた作品が「スクロール」(2022年)だ。本作は、4人の若者がそれぞれ悩み苦しみながらも生きる姿を描く青春群像劇。YOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作「それでも、ハッピーエンド」を手掛けたことでも知られる橋爪駿輝のデビュー小説を、「CUBE 一度入ったら、最後」(2021年)の清水康彦監督が脚本と編集も兼ねて映画化した。若者たちのリアリティ溢れる青春譚がチャプター仕立てで進行し、米津玄師やKing GnuなどのMVを手掛けた撮影監督・川上智之による独創的な映像美も印象深い。

(C)橋爪駿輝/講談社 (C)2023映画「スクロール」製作委員会
学生時代に友人だった"僕"とユウスケのもとに、彼らの仲間だった森が自殺したという報せが届く。彼らはその死をきっかけに生きることや愛することを見つめ直すことに。そして"僕"に共鳴し特別な自分になりたいと願う"私"と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯。何者にもなれない4人が、一つの死をきっかけに明日への一歩を踏み出す。
北村は、就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに想いをアップすることで自分を保っている"僕"を演じた。「消えてしまいたい」と思いながらも現代社会の中で自分の居場所を探し、もがき苦しむ。何者かになりたいと願い、何者にもなれない現実を生きている。陰鬱な瞳の暗さが孤独と苦しみの深さを感じさせ、きっと今も現代に生きているであろう若者の一人をリアルに体現する。
中川が演じるのは、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。テレビ局という華やかな世界で働き、女性関係も派手な男だ。「楽しければいい」と嘯くも、本当に信頼できる人間がいないことに気がつき、生きている意味も分からないまま。軽さの裏に心の奥底に押し込んだ孤独が見え隠れする。"僕"とは対照的なキャラクターだが、その内側にはどこか通じるものがあり、一人の人間の様々な面を中川が繊細に表現した。

(C)橋爪駿輝/講談社 (C)2023映画「スクロール」製作委員会
そして、2人の物語と交差する菜穂と"私"を演じた松岡茉優と古川琴音。幸せを求め、ユウスケとの結婚で空虚な心が満たされると考える菜穂。"僕"に共感し、特別な自分になりたいと願う"私"。漠然とした不安の中に確かなものを探す菜穂の弱さも痛々しさも松岡が丁寧に演じ、いつ死ぬか分からないからと自分らしくやりたいことをやる"私"の強さを古川が真っ直ぐに見せた。4人それぞれが与えられた役を自らに落とし込み、真摯にまっとうする確かな演技力が見事だ。
理想を抱き社会に出て、現実の壁にぶつかり迷い悩む。それでも生きている中で、時に誰かに救われたり、それと知らず救っていたり...。自身に向き合う痛みと葛藤、若者たちの心の躍動がエモーショナルに映し出されるが、眩いだけでない今を生きる4人を演じる北村、中川ら若手俳優陣の演技が確かに光っていた。
文=中川菜都美
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