鈴鹿央士の愛すべきキャラクターも印象的!松山ケンイチと長澤まさみが凄まじい熱演を見せた「ロストケア」
2024.2.21(水)
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「蜜蜂と遠雷」(2019年)の天才ピアニスト役で映画デビューして以降、ドラマ「silent」(2022年)でさらに注目を集め、主演映画「PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」の公開も3月8日(金)に控えるなど、実力派若手俳優として頭角を現している鈴鹿央士。松山ケンイチと長澤まさみが緊迫感あふれる激突を披露した映画「ロストケア」(2023年)では、彼らに負けない存在感を放ち、観客の代弁者となるようなキャラクターを見事に演じ切った。
本作は、第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕の小説を「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018年)の前田哲監督が映画化した社会派ドラマ。ある民家で、老人と訪問介護センターの所長の死体が発見される。捜査線上に浮かんだのは、センターで働く斯波宗典(松山)。だが彼は、介護家族に慕われる献身的な介護士だった。
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(C) 2023「ロストケア」製作委員会
検事の大友秀美(長澤)は、斯波が務める訪問介護センターが世話をする老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの自宅での死者が40人を超えることを突き止めた。真実を明らかにするために、斯波と対峙する大友。すると斯波は、自分がしたことは"殺人"ではなく、"救い"だと主張する...。
介護士でありながら42人を殺めた殺人犯の斯波と、彼を裁こうとする検事・大友の激突が見どころとなる本作。法の名のもとに斯波を追い詰めていく大友だが、斯波の過去や信念を深く知っていくにつれ、現代社会における家族のあり方や、きれいごとでは済まされない介護の負担、人間の尊厳が浮き彫りとなり、心を大きく揺さぶられていく。観ているこちらも胸を抉られるような気持ちになるのだが、それは本作で描かれている内容が、誰にとっても他人事ではない問題であるからに他ならない。
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(C) 2023「ロストケア」製作委員会
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(C) 2023「ロストケア」製作委員会
すべてに絶望し、生気の抜けた表情を見せながら、自分の確固たる信念を語る際には目をぎらりと光らせる斯波。正義感が強く、斯波と主張を戦わせながらも動揺し、自らの心情を吐露していく大友。松山と長澤が凄まじい熱演を披露し、2人のやり取りは震えるような迫力に満ちている。
さらに、老人役を演じた柄本明の演技はさすがの一言。観客も「見て見ぬふりをしていたのではないか」「目を背けていたのではないか」と自身を省みながら、家族や未来について考え、議論をする機会にもなるような映画として完成している。
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(C) 2023「ロストケア」製作委員会
そして邦画界を代表する面々が迫真の演技を見せる中、観客の目線や心情を代弁するようなキャラクターとなっているのが、鈴鹿が演じた検察事務官の椎名だ。大友をサポートしながら事件を調査し、斯波の主張を耳にしていく役柄で、数学科出身の変わり者という設定だ。
嬉々として数字を弾き出したり、徹夜の作業も「楽しいです」とニコニコとする表情からは、椎名のユニークな特徴がよく伝わってくるし、大友と斯波の対立を間近で目撃して息を呑む様子や、斯波の言葉に思わず瞳を潤ませる場面など、鈴鹿が椎名の真摯で温かな性格までをにじませ、心を寄せられるような愛すべきキャラクターを作り上げている。
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(C) 2023「ロストケア」製作委員会
「silent」では優しすぎる彼氏を好演していた鈴鹿だが、彼自身から溢れだす誠実さは、役者としても大きな武器となるはず。その武器が最大限に発揮された作品としても、ぜひ注目してほしい一作だ。
文=成田おり枝
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