「賢い医師生活」でも発揮したユ・ヨンソクの音楽的才能が開花！叫びのような不況和音が心揺さぶる圧巻のパフォーマンス

2024.2.7(水)

1月7日に待望の来日ファンミ―ティングを開催し、日本での人気の高さを改めて証明したユ・ヨンソク。その前日には犬と人間との絆を描いた主演映画「マイ・ハート・パピー」(公開中)の舞台挨拶にも登場しファンを喜ばせたばかり。映画やドラマ、舞台、ミュージカルと多彩なキャリアで、今もファンを魅了し続けている。

近年、爆発的な支持を獲得した「賢い医師生活」(2020年)での温厚な小児科医役のイメージが強いヨンソクだが、彼のキャリアを語る上で欠かせないのが"音楽"だ。

「賢い医師生活」ではOSTに参加し甘い歌声を響かせたほか、劇中バンド(ミドとパラソル)の一員として見事なドラム演奏も披露。鬼才パク・チャヌク監督の代表作「オールド・ボーイ」(2003年)での鮮烈なデビューから20年を経た昨年には、デジタルシングル「Falling」をリリースした。そんなユンソクの豊かな音楽的才能が反映された作品が、2017年1月に日本でも劇場公開された映画「愛を歌う花」(2016年)だ。

「愛を歌う花」は、1943年の韓国・京城(現在のソウル)を舞台に、時代に翻弄されながらも歌と愛に生きた"妓生(キーセン)"たちの生き様をドラマチックな音楽と共に紡ぐ物語。

ずば抜けた美貌と歌唱力で最高の歌姫と称される妓生・ソユルを、「トンイ」(2010年)で国民的な支持を集めた女優ハン・ヒョジュが演じたほか、その幼馴染であり、天性の歌声を持つヨニ役には、「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」(2013年)で世界から脚光を浴びたチョン・ウヒが起用。そして、ユンソクが当代一の作曲家でソユルの恋人・ユヌを演じた。

ソユルとヨニは、京城唯一の妓生養成学校で芸を磨いてきた親友同士。ソユルは人気作曲家のユヌと結婚を約束した仲でもあった。ところが、ヨニの天性の美声に魅了されたユヌは、自らが作曲した「朝鮮の心」を彼女に歌ってほしいと考えるようになり、3人の関係性が悪化...。歌手としてユヌの曲を歌うことを夢見ていたソユルの心には、ヨニに対する嫉妬が芽生え始める。

"愛する人の曲を歌いたい"というソユルの純粋な思いが嫉妬へと豹変していく過程を、ヒョジュが狂気を帯びた演技で魅せる。ヒョジュの"情歌"とウヒの歌謡曲、それぞれの感情揺さぶられる歌声も必聴だ。

そんな親友2人の運命を狂わせるのが、ヨンソク演じるユヌの存在だ。流行歌の人気作曲家として活躍する彼はソユルを心から愛し、「僕の曲を君に歌ってほしい」と甘い言葉を囁いていたが、ヨニの歌の才能に惚れ込み、その態度が少しずつ変化。頭ではソユルを大切にしたいと思いながらも、才能を持つヨニにどうしようもなく惹かれてしまう――そんなユヌの戸惑いや苦悩が、ヨンソクの繊細な表情の変化によってリアルに伝わってくる。

揺れ動くユヌの胸中を表現する上で欠かせないのが、彼のピアノ演奏シーンだ。ヨンソク自身が吹き替えなしで、見事なピアノの腕前を披露。ヨニという才能ある歌い手に出会えた喜びや、時代に翻弄される自らへの無力感など、ピアノを弾く指先から感情がひしひしと伝わってくる。怒りに震えながら演奏するシーンでは、ミスタッチがまるでユヌの心の叫びのような不況和音を奏でる。ヨンソクの豊かな音楽的な素養があってこその、心揺さぶる感情表現はまさに圧巻だ。

今年3月には、「賢い医師生活」のチョ・ジョンソクと共にミュージカル「ヘドウィグ」に"カムバック"するというニュースがファンを騒がせている今、ヨンソクの音楽的才能にもぜひ再注目したいところ。美しい指先で深い感情を表現する姿に、誰もが魅了されるに違いない。

文＝酒寄美智子

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