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小泉孝太郎が主演を務めた骨太な大人のドラマ「魔性の群像 刑事・森崎慎平」

2023.2.27(月)

森村誠一の原作をドラマ化し、小泉孝太郎が主演を務めた「魔性の群像 刑事・森崎慎平」は、2013年から2019年にかけてTBS系で放送された2時間ドラマのシリーズだ。全5作が放送されたのだが、年間1作に満たないペースで長期にわたって制作されたという点でユニークな作品と言えるだろう。

小泉演じる主人公・森崎慎平は。捜査一課の刑事で階級は警部補。愛する妻を通り魔に殺されるという悲劇的な過去を持つが、正義感が強く執念深く犯人を追い詰めていく。捜査一課の同僚には、森崎とコンビを組む雨宮(和田正人)のほか、黛透子係長(柴田理恵)、小山内(石井正則)、花園(阿部亮平)、仙道(前田亜季)といった個性的な面々が登場するが、彼らが登場するのは、主に第4作以降である。

本作の見どころは、森村誠一作品らしい犯罪者を追い詰める骨太なサスペンスを主演の小泉が真摯に演じている点だ。特に和田演じる雨宮が第3作(2015年放送)に登場してからは、2人の絶妙なコンビ感が心地よくなり、安心して見られるドラマに仕上がっているという印象だ。和田は2014年に出演した「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)に出演した時期から演技力にますます磨きがかかり、俳優としての実力を開花させてきた感があるが、本作はまさに脂がのってきた和田の勢いを感じさせる作品にもなっている。

主演の小泉も第5作の制作発表時に「刑事としてコンビを組む和田正人くんとのシーンが見どころ。兄弟のような関係で、彼とのコンビは自然にしっくりくるし、何かが生まれる手ごたえのようなものを感じた」と語っている。



本作には、毎回ベテラン俳優が脇を固めて重厚な演技を見せてくれるのだが、レギュラーの1人である加藤剛の存在感はピカイチだ。本作では殺害された森崎の妻・玲子の父・朝比奈公介役で出演。元最高検察庁の検察官にして正義のジャーナリストという、まさに加藤の真骨頂ともいえる役どころを演じている。義父としても森崎を支えるが、私生活でも人一倍家族思いだったという加藤の人柄までも思わせる演技。惜しむらくは本シリーズ第4作が放送された2017年の翌年に逝去したため、第5作への出演が叶わなかったことだろうか...。

ほかにも、第1作に出演した長山藍子、第3作に登場した加藤茶、第5作でキーパーソンともいえる重要な役どころで出演した財前直見といった俳優陣が画面を引き締めてくれた。特に財前の演技は圧巻で、小泉は「今回のキーパーソンでもある財前直見さんは凛とした空気をお持ちの方なので、重要人物でありながらも多湿でジメジメした感じはなく、刑事として対峙するシーンにも清々しさがあった。作品がカラッとした仕上がりになったのは財前さんのおかげだと思う」というコメントを残している。

「魔性の群像」シリーズには毎回隠されたテーマがあり、その裏側に潜む人間ドラマの奥深さを味わうことができる。そんな大人のドラマだと言っていいだろう。刑事だった父親の遺言を守り「決して諦めるな」を信条に泥臭く正義を貫く森崎の姿は、視聴者も感情移入しやすく、いわゆる「見やすい作品」である。ただ、作品数は少ないながらも、長期にわたって続いたドラマらしく、シリーズを重ねるごとに制作チームとしての団結力が強くなって、現場のチームワークがどんどん上がっていく様子が伝わってくるようだ。

小泉の演技も後期になるほど、味わいが出てきて単純な熱血刑事ではなく、成熟した大人の男という一面も表現している。派手さこそないものの、大人の鑑賞に堪えるドラマとして、40代以降の視聴者に特に見てほしい作品だ。

文=渡辺敏樹

放送情報

森村誠一サスペンス「魔性の群像 刑事・森崎慎平」
放送日時:2023年3月5日(日)04:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
森村誠一サスペンス「魔性の群像 刑事・森崎慎平2」
放送日時:2023年3月6日(月)04:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
森村誠一サスペンス「魔性の群像 刑事・森崎慎平3」
放送日時:2023年4月25日(火)15:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
森村誠一サスペンス「魔性の群像 刑事・森崎慎平4」
放送日時:2023年4月26日(水)15:00~
チャンネル:TBSチャンネル1
森村誠一サスペンス「魔性の群像 刑事・森崎慎平5」
放送日時:2023年4月27日(木)15:00~
チャンネル:TBSチャンネル1

※放送スケジュールは変更になる場合があります