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草なぎ剛&新垣結衣が侍と姫を演じる、劇場版「クレヨンしんちゃん」を原作とした時代劇ファンタジー「BALLAD 名もなき恋のうた」

2023.12.28(木)

2009年公開の映画「BALLAD 名もなき恋のうた」は、アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」を実写映画化した作品だ。キッズ向けながら大人も感動できる傑作だと高く評価された原案作品を、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどの山崎監督が実写映画化し、戦国時代を舞台に姫と侍の恋物語を鮮やかに描き出している。

神妙な面持ちの新垣結衣
神妙な面持ちの新垣結衣

(C)2009「BALLAD 名もなき恋のうた」製作委員会

あえてジャンルとするなら「時代劇ファンタジー」とでも言おうか。戦国時代にタイムスリップした現代の小学生が、とある小国で繰り広げられる恋の架け橋となるというストーリーが軸だ。大筋は原作そのままだが、豪華キャストによる競演と山崎監督が得意とするVFXによって壮大なスケールの大作に仕上げた。

草なぎ剛(※草なぎの「なぎ」は正しくはゆみへんに「剪」)が演じる主人公・井尻又兵衛は、「鬼の井尻」の異名で呼ばれる槍の名手。戦場では強者だが女性には弱く、幼馴染の廉姫(新垣結衣)に慕情を抱くも身分の違いから口に出せないでいる。ヒロインの廉姫は、強気な性格で思ったことははっきりと発言するタイプ。しかし又兵衛への思いだけは口に出せないでいる。相思相愛ながらも、じれったい2人。そんな主人公たちの気持ちが変わっていくのは、未来からタイムスリップしてきた少年との出会いだった...。

(C)2009「BALLAD 名もなき恋のうた」製作委員会

現代に生きる小学生の川上真一(武井証)は、湖のほとりで祈る着物姿の女性を夢に見続けていた。そんなある日、彼は導かれるように戦国時代へとタイムスリップしてしまう。偶然から春日の国の侍大将・井尻又兵衛(草なぎ)の命を救った真一は城に招かれ、そこで夢で出会った女性・廉姫(新垣)と出会う。世話係となった又兵衛と心を通わす真一は、又兵衛と廉姫が互いに想い合っていることを知る。だがその矢先、廉姫には有力武将・大倉井高虎(大沢たかお)との婚儀の話が持ち上がるのだった...。

真一のモデルは、原作の「しんちゃん」こと野原しんのすけ。真一の母親・美佐子は夏川結衣、父親を筒井道隆が演じている。ほかに、吹越満、斉藤由貴、小澤征悦、中村敦夫といった俳優陣が脇を固め、味のある役者が揃った。

本作の製作の経緯は、山崎監督が「ラスト サムライ」の撮影現場を見学したことがきっかけだという。「日本でもこのような合戦中心の時代劇が作れるはず」と確信し、「アッパレ!戦国大合戦」を題材に選んだという。同作が「自分の知るストーリーで一番いい物だったから」というのがその理由だ。山崎監督が相当な自信をもって撮影に臨んだことは想像に難くないが、映像には「ALWAYS 三丁目の夕日」と同様に視覚効果が活用され、「ALWAYSの経験が生かされた」と監督自身も語っている。ちなみに、本作の合戦シーンには流血シーンがまったくない。「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」の実写化であるため、「小さな子供にも見てほしい」という監督の配慮だそうだ。

脚本も山崎監督自身が手掛けているが、オリジナルの良さをしっかり残しつつ、又兵衛と廉姫の恋模様を描き出してオリジナリティを打ち出している点が秀逸。そのシナリオを演じきった草なぎと新垣の演技も評価されるべきだろう。特に新垣は廉姫の個性をそのビジュアルを活かして十二分に表現し、まさに敵役という印象だ。草なぎも熱演しており、起伏のある芝居で又兵衛役を自分のものにしていたといえる。

原案のアニメ作品の完成度が高過ぎたために、実写化すると見劣りしてしまうリスクが高い題材にあえて挑んだ山崎監督のチャレンジ精神は称賛に値する。草なぎ剛と新垣結衣の好演にも助けられ、ひと味違う魅力を加えることに成功した映画「BALLAD 名もなき恋のうた」は原案アニメを見た人はもちろん、見ていなくても楽しめる作品であることは間違いない。

文=渡辺敏樹

放送情報【スカパー!】

BALLAD 名もなき恋のうた
放送日時:2024年1月2日(火)01:15~ほか
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります